その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は赤石雅典さんの『 ChatGPTで儲かるデータ分析 』。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
本書のねらい
本書を手に取っていただいたあなたが「データ分析を活用して業務で今まで以上の成果を出したい。しかし、前提知識であるPythonのハードルが高くて、なかなか最初の一歩を踏み出せない」とお考えだとします1。そのような方に対する筆者のアドバイスは次の通りです。
「今こそデータ分析を学ぶべきです。生成AIの助けがあれば、今までより、はるかに早く成果を出せる分析が可能なので」
本書は、このような方に向けた道しるべとなることを目標に執筆しました。筆者は、現在プロジェクトの中でAI・データ分析を自ら実施すること、および、AI・データ分析人材を育成することを仕事としています。仕事柄、生成AIに接している時間は長いのですが、日々、生成AIに触れて一番感じるのは、「生成AI前と生成AI後でデータ分析の学習法が根底から変わった」ということです。一番大きな変化点は、今までデータ分析学習の出発点だった「Pythonとデータ分析に関連するいくつかのライブラリ2を、自分でプログラムを一から組めるレベルで深く理解すること」が必ずしも必須でなくなった点です。
これからの分析者は、やりたい分析に向けた処理の概要が頭にあり、「プロンプト」と呼ばれる生成AIへの日本語の指示さえステップごとに的確にできれば、細かいPythonコーディングに関しては、生成AIにお任せで分析を進められるのです。データ分析で必須の「軸に関する考え方」を理解し、「目的に応じた可視化手法を使い分ける」ことさえできれば、今日からでもデータ分析の成果を、自分の持っている業務課題に対して出せるといって過言ではありません。
1 厳密にいうと、Excelだけでできるデータ分析もあります。しかし、例えば「クラスタリング」のような分析をExcelだけで実施するのは無理なため、「そのようなレベルのデータ分析をする場合」という文脈だと考えてください。
2 特定の機能を実装したソフトウェア群を指します。
筆者は、このようなパラダイムシフトのまっただ中に立ちながら、「どういうスキルがこの状況下で本質的に重要なのか、そのスキルを最短時間で身に付けるにはどうしたらいいか」をずっと考えてきました。ようやく自分の考えがまとまったので、生成AIブームもやや落ち着きかけてきているこのタイミングで本書の執筆に至った次第です。
実習の前提となる生成AIについては、AI内部にPython環境を持っていて初級者に使いやすいことを一番の理由に、有償ではありますがChatGPT Plusを選定しました。このサービスを選定したことにより、「分析対象のデータを生成AIにアップロードし、日本語で順番に指示(プロンプト)を与えるだけで目指す分析結果が得られる」という、筆者が長年夢に思い描いていたシナリオを実現できたかと思っています。
各章の説明の中では、データ分析を進めるための本質的なポイントを随所に織り込みました。「データ分析をなんとか業務に活用したい」とお考えの読者は、大船に乗った気持ちで本書を読み進めていただければと思います。
本書の想定読者
本書の第1の想定読者は、冒頭で示したような方です。もう少し具体的にブレークダウンすると、普段の業務で課題感を持っているが、それをどう解決したらいいかわからない、あるいはやるべきことはわかっているが、データ分析の技術的なハードルが高くて先に進めないという方になるかと思います。そのような方は、まず序章から3章までをお読みください。特に重要なのが2章です。本書の本質的な部分は4章から8章までの例題にあるのですが、それぞれの例題が、どのような課題に活用できて、どんなビジネス上の効果があるのかを要約しています。4章から8章の内容は独立しているので、3章までの内容を理解した読者は、自分が特に関心のある章に飛んでもらって、困ることはないはずです。
第2の想定読者は、「これを機会にPythonのデータ分析プログラミングも学びたい」という方です。本書の各例題では、必ずChatGPTの生成コードサンプルと、その中でポイントになる実装コードを解説しています。しかし、プログラミングを深く理解するためには、どうしても体系的な理解が必要です。そのため、本書では巻末(第4部)に「講座」を用意しました。ここでは、データ分析に必須のプログラミング知識をコンパクトにまとめています。「講座」については、実習の中で出てくる疑問点を解決するため都度辞書的に使う方法も、頭から読んで体系的に理解する方法もあると思います。読者の皆様のお好みに応じて使い分けてください。
第3の想定読者もあります。あるある事例ですが、「自分が会社の中でデータ分析・AIプロジェクト立ち上げのリーダーに指名されてしまった。しかし、勝手がわからず、どこから手を付けたらいいかわからない」という方です。このような方には、序章から2章まで読んだ後で、9章を読んでいただくことをお勧めします。9章には、筆者の今までの実プロジェクトの経験に基づき、データ分析・AIプロジェクト固有の落とし穴や、解決のポイントをまとめています。今後のデータ分析・AIプロジェクトの推進を考える際に、参考にできるところが多いはずです。
本書の構成
本書は「序章」「第1部 基礎編(1章から3章)」「第2部 応用編(4章から8章)」「第3部 プロジェクト編(9章)」「第4部 リファレンス編(講座1と講座2)」という構成になっています。それぞれの概要を簡単に説明します。
▶序章
序章ではいきなり、データ分析の練習によく用いられる「タイタニック・データセット」を使って実習を始めます。元データと簡単な数個のプロンプトで、グラフが描画できたり、あるいはそのグラフの「解釈」まで生成AIにやってもらったりすることが可能です。読者も「今の生成AI(具体的にはChatGPT)でここまでできるのか」ということに驚くはずです。
▶1章
データ分析にはどんなタスクがあるのか、そのためにはどんなスキルが必要なのかを整理しました。さらに「生成AI後」に、それぞれのタスクで生成AIがどの程度活用できるのかについても言及しています。
▶2章
データ分析を「分析手法」と「業務利用パターン」の二つの観点で分類・整理しています。「分析手法」では、前提知識なしに始めることができ、最も活用範囲の広い「可視化」について力を入れて説明しました。「業務利用パターン」では、どのような業務のどのような課題に対してどういう分析手法が活用でき、どういう成果が得られるのかをまとめています。2章の内容を理解いただければ、「データ分析の活用イメージ」を持つことが可能です。
▶3章
データ分析の処理プロセスを実習を通じて解説します。この章はデータ分析の上流工程にあたる3.3節までと、具体的な分析工程にあたる3.4節以降にわかれていて、後者では例題データセットも入れ替えています。後者で取り上げる分析手法に関しては、「教師あり学習」を選定しました。「教師あり学習」と呼ばれる分析手法では、「学習データ」を用いて関数のような働きをする「モデル」を作り、この「モデル」を使って、新しいデータに対する「予測」をします。概念として理解しにくいところのある「教師あり学習モデル」がどういう振る舞いをするものなのか、実習を通じて理解します。
▶4~8章
それぞれが独立した分析テーマです。業務面での問題設定と、分析対象データの解説、そして、それに対してどのような分析シナリオを適用するのかを冒頭で説明します。各分析タスクの説明の後で、データ分析で必須の、「分析結果の業務への活用」に関してもChatGPTにヒントをもらうシナリオを含めています。具体的なシナリオを、実習を通じて体験してもらうことで、読者の皆様には、具体的な業務活用イメージを持っていただけます。
▶9章
8章までが「データ分析の中身」についての解説であるのに対して、9章はより俯瞰的に「データ分析の外側」を解説します。具体的には「ソリューショニングの進め方」「データの収集方法」「AIプロジェクト推進のコツ」そして「データ分析人材の集め方」などです。
データ分析・AI プロジェクトのリーダーになる方にとって有益な情報が数多く含まれています。
▶講座1
要点をシンプルにまとめたPythonの入門です。具体的な内容としてはGoogle Colab、Python、NumPy、pandas、Matplotlibを一通り説明しています。Pythonを深く理解するためには、ChatGPTの生成コードを別環境で改めて実行し、パラメータなどを変更して試行錯誤するのが一番です。その具体的な実現方法も講座1で理解できます。
▶講座2
業務オリジナルのデータに対してデータ分析を行う場合、最低限の統計知識とpandasやscikit-learnというデータ分析用のライブラリを使ったデータ加工方法、そして評価方法の理解が必要です。講座2では、データ分析固有の必須知識をシンプルにまとめました。必要に応じて活用してください。
最後に、前著「Pythonで儲かるAIをつくる」(2020年8月、日経BP)の読者向けのおまけ情報です。筆者が5年前に出版した前著の読者は、表紙のデザインが似ているので、この本と関係がありそうと想像されたのではないでしょうか。この想像は合っていて、本書は前著の改訂版という位置づけで企画しています。4~8章の例題のほとんどは、前著と同じデータ、同じ分析手法を用いて分析しています3。チューニングのところは落としましたが、メインの分析シナリオは、プロンプトだけで前著の通りの分析結果を出すことに成功しています。細かい記載内容に関しても微妙に取捨選択しています。具体的な方向性として、業務観点であった方が望ましいトピックを追記し、逆に技術よりのトピックで初級者に必須でないと考えた項目は意図的に落としています。前著を購入いただいた読者は、どこがどう変わったのか、読み比べていただけると面白いかと思います。
3 4章だけが例外で、この章のテーマは筆者の別の書籍から取り上げています。
冒頭のメッセージの繰り返しですが、筆者は「今こそデータ分析を学ぶとき」と強く思っています。本書を道しるべに、その道を進んでもらう読者が1人でも多くなることを切に願って、まえがきのしめくくりとさせていただきます。
謝辞
本書の編集を担当いただいた日経BPの安東一真氏とは、本書を含めてこれで5冊目のお付き合いです。よく言われる話ですが、「本は編集者との共同作業」であることを今回も改めて認識しました。全体構成を考えるにあたっては、筆者が気付かない観点で、書籍に含むべき項目の指摘をいただき、それを反映した結果、バランスの取れた全体構成になったと考えています。また、今回はChatGPTの解説書という本書固有の特性から、4種類の異なる入力、出力をどう区別するか、書籍上のレイアウトに注力しました。安東氏には筆者のわがままを何度も聞き入れていただき、おかげで大変わかりやすいレイアウトになったと考えています。これ以外の点も含めて、安東氏には改めて感謝の意を表します。
筆者は、2021年3月にアクセンチュアに転職し、本書執筆時点である2025年2月現在もアクセンチュアに勤務しています。
本書は、アクセンチュア入社前に執筆した書籍「Pythonで儲かるAIをつくる」の続編の位置づけであるため、個人の資格での執筆となっています。アクセンチュアでAIグループを統括している保科学世氏には、入社時から今に至るまでお世話になった上、今回の書籍に関しても業務外であるにもかかわらず細かくチェックをしていただきました。アクセンチュアの越中谷俊樹氏と竹前健太氏、熊川貴之氏には、読者目線での有益なコメントを数多くいただいています。また、前職であるIBM入社当時からの友人である清水照久氏には、企業におけるAIプロジェクト立ち上げに関する議論をさせていただき、その知見が9章に生かされました。それ以外にもアクセンチュア入社後の4年間で、仕事上接点を持ったクライアントの皆様や、社員の方々との議論を通じて、自分の考えがブラッシュアップされ、その成果が今回の本に数多く生かされていると感じています。これらの方々に対しても、改めて厚く御礼申し上げます。
サポートサイトについて
過去の筆者の書籍同様に、今回も本書専用のサポートサイトをオープンしています。このサイトでは、実習で必要なコンテンツ(CSVファイルやプロンプト、Notebookなど)を公開しているのみならず、本書に関連する情報を一括して集約する予定です。本書をご購入いただいた読者はぜひ、サポートサイトにアクセスいただくよう、お願いいたします。サイトは一般公開していますので、本書購入をご検討中の方にもぜひ、アクセスしていただきたいです。
リンク先は以下のURLになります。
https://github.com/makaishi2/profitable_data_analysis#readme
【目次】









