その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はクレア・ヒューズ・ジョンソン(著)、二木夢子(訳)の『 スケーリング・ピープル 人に寄り添い、チームを強くするマネジメント戦略 』。「イントロダクション」の一部をお届けします。

【イントロダクション】

■本書の読み方

 本書では、会社の構造をしっかりと築き、マネジメントにまつわるさまざまな状況を乗り越えるためのツールを提供している。長年にわたるハイペースなマネジメントの実践、他の実務家とのやりとり、そして同僚、直属の部下・上司、リーダーシップコーチからの学びに基づいている。この本は、マネジメントの難しい状況に直面したときに、当てはまる項目を探して、実務家のアドバイスやリアルなエピソードを見つけられるように構成している。最初から最後まで一度だけ通して読むような本にはなっていない。何度も手に取っていただき、その時点で頭に浮かんだ問題を扱ったページを読むように使ってほしい。皆さんのメトロノームを少し速いテンポにセットして、勤務先での成長と、皆さんが与えられるインパクトの両方を加速できることを願っている。

 本文は6章で構成されている。第1章では、優れたマネジメントに欠かせないとわたしが考える4つの原則を扱う。第2章から第5章では、4つのコア・オペレーティング・フレームワークを、1章にひとつずつ詳しく扱う。これには、チームに属する人々と、彼らがもたらす人間ならではの状況に総合的なアプローチを採用する方法が含まれる。そして、第6章では、これらすべてのキーパーソンである“あなた”を取り上げる。

 各章末にあるQRコードの参照先で、章のトピックに関連する実用的な演習とテンプレートを公開している。資料のほとんどすべてはStripe社内で作成している。一部の資料については著者を紹介しているが、社内で協力して制作した資料や、Stripe採用チームなど部門の従業員一同で制作した資料も盛り込んだ。全体として、会社づくりとマネジメントに最も欠かせないとわたしが考えている諸要素を網羅した構成になっている。

第1章
事業運営の基本原則

 仕事でも私生活でも、人は一般的に意思決定の指針となるメンタルモデルを備えている。これを、わたしは“事業運営の基本原則”と呼んでいる。この章では、一人ひとりの核をつくるための指針となる、4つの包括的な原則を紹介する。わたしがマネジメントのキャリアを進みながら何度も振り返ってきた基準であり、マネジメントに関するアドバイスでも繰り返し取り上げるテーマとなっている。

 1.自己認識力を高め、相互認識力を築く
 2.言いにくいことを伝える
 3.マネジメントとリーダーシップを区別する
 4.オペレーティング・システムに立ち返る

 これらの原則が、この本全体を貫いている。

第2章
コア・フレームワーク1:ゴールとリソースの確立と計画

 この章では、会社のオペレーティング・システムのつくりかたを総合的に扱う。バリューや長期目標を含む、会社としての最高の志を起点にして、ゴールを目指すためのフレームワークを確立する方法について説明する。また、より短期的なゴールや、進捗状況を測るための指標も取り上げる。その後、会社レベルとチームレベルの両方でゴール達成を支援する、リソースを配分するコツと説明責任を明確化するしくみについて考える。

第3章
コア・フレームワーク2:総合的な採用アプローチ

 人材が会社にとって最も価値のある資源なのは言うまでもない。この章では、あらゆるレベルの求人と採用のプロセスで持ち上がる問題を取り上げる。経営陣の役割と従業員の役割を扱う節に分け、ニーズの評価、面接、候補者の選定、オンボーディング、内部の昇進か外部からの採用かの判断、新しく入社した人材との協力といったテーマを説明する。

第4章
コア・フレームワーク3:意識的なチーム育成

 この章では、グループを個々の合計よりも優れたチームにする方法を扱う。新しいチームの設立と構成から説明を始め、それから毎日のチームワークに移る。扱うトピックは、コミュニケーションから、意思決定、会議運営、社外行事、組織再編の取り扱い、分散チームのマネジメントなど多岐にわたる。また、機能性の高いチームに欠かせない多様性、公平性、インクルージョンについても取り上げる。最後に、たとえあなたが退職しても成功し続けるチームを築くためのアドバイスで締めくくる。

第5章
コア・フレームワーク4:フィードバックとパフォーマンスのしくみづくり

 あらゆる企業は、その段階や規模にかかわらず、自社の文化の方向性を決め、成長を育むフィードバックができるようなしくみをつくる必要がある。複雑なしくみでなくても構わない。設立当初ならなおさらだ。白紙の状態で会社を運営するのに比べれば、基本的な構造をたたき台にして、その上に築いていくほうがはるかに優れている。この章では、そうした構造を築く方法について説明する。相手に驚かれるようなフィードバックをしないようにすることの大切さ、成績の良い人と悪い人のマネジメント、他のマネジャーのマネジメント、パフォーマンス・レビューの進め方、コーチング、報酬、そして従業員に悪いことが起こったときの対処方法といった点について考えていく。

第6章
結論:働くあなたへ

 本書の最後には、マネジメントの旅路で最も重要な人物について取り上げる──そう、あなただ。自らのキャリアをマネジメントし、幸せで満たされた気持ちになってもらうために、この章にはマネジャーの皆さんに伝えてきたアドバイスを盛り込んでいる。職業上の成長と個人的な成長の両方を育む縁を築くなどの内容が含まれる。飛行機のフライトで非常事態が発生したときには、他人の救助を始める前に、まず自分の酸素マスクを着ける。マネジャーも同じで、部下に手を差し伸べる前にセルフケアが必要になってくる。また、時間とエネルギーのマネジメント、上司や同僚のマネジメント、ポテンシャルの評価などについても触れる。

 この本で紹介している内容は、わたし自身や、わたしのコーチングやメンタリングを受けた方々が実証している(ただし、本書で紹介する見解や助言はわたし個人のものであり、StripeやGoogleの公的な立場を示すものではないことをお断りしておきたい)。もちろん、これは会社の構造づくりとマネジメントへのアプローチのひとつにすぎず、政治、コンサルティング、テクノロジーの各業界で培ってきたわたしの経験に大きく偏っている。それでもわたしは、人間の行動はユニバーサルで、したがってマネジメントもユニバーサルだと確信している。この点を念頭に置き、各界の専門家の方々に依頼して経験や学びを共有してもらった。そのエッセンスを本文の随所に引用している。The Economist誌の編集長であるザニー・ミントン・ベドーズ、投資家でLinkedIn創業者のリード・ホフマン、Zoomの創業者兼CEOであるエリック・ユアン、その他多くの方に行ったインタビューの全編は、press.stripe.com/scaling-people/interviews に載せている。得られた助言の数々が、いかに共通点が多く、幅広く応用が利くことか、皆さんも驚かれるだろう。しかも、これらの素晴らしい人々はキャリアや会社に関する魅力的なエピソードを公開してくれている。

 Stripeでもよく引用している、パブロ・ピカソの言葉がある。「芸術評論家が集まると、形と構図と意味について話す。芸術家が集まると、安いテレピン油を買える場所について話す」。皆さんも、ピカソの人生についてじっくり本を読みたいときもあれば、一番安いテレピン油をどこで買えるかについて知りたいだけというときもあるだろう。本書は後者と考えてほしい。内部関係者による、マネジメント界のテレピン油ガイドというわけだ。


【目次】

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