その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は岡崎淳一さんの『 労働法制度ガイドブック 』。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
雇用・労働に関して、憲法をはじめとして、多くの法令によって、ルールが定められ、制度が作られている。また、厚生労働省は、指針やガイドラインで望ましい姿を示し、様々な支援措置を講じている。
事業者が労働者を雇用して働かせる場合には、これらの法制度や施策を十分に理解して、適切に雇用管理を行い、労働者が安心して働き、最大限に能力を発揮できるようにすることが必要である。
労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの労働基準関係法は賃金、労働時間、安全衛生などの労働条件の最低基準を定めているが、罰則を伴う刑罰法規であるので、これらの法令に違反をすると、刑罰を科される可能性がある。そして、司法警察権限を有する労働基準監督官が適時事業場を臨検監督し、法令が遵守されているかチェックをしている。また、労働者が法令に違反があると思った場合には労働基準監督官に違反の申告をすることができる。労働基準監督官による臨検監督件数は毎年十数万件に及んでいる。
労働施策総合推進法、労働契約法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、職業安定法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、パート・有期雇用労働法、職業能力開発促進法などの雇用関係法は労働者の募集、採用、配置、教育訓練、福利厚生、均等待遇、ハラスメント防止、定年、解雇などに関して、ルールや事業者が講ずべき措置について定めている。これらのルールには罰則はないが、ルールに反する状況がある場合、労働者は行政機関に是正指導を求め、あるいは労働審判や裁判で争うことができる。
また、労働組合法等は労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権の労働基本権を擁護するため不当労働行為制度を設け、事業者に不当労働行為があった場合のために労働委員会による救済制度が用意されている。
雇用・労働関係の法令は多岐にわたり、労働法制度全体を理解することは容易ではない。本書は、企業の経営者、人事労務担当者、そして管理職の方に労働法制度の基本を理解していただくことを目指して執筆をした。また、働いている方々にとっても、自分の権利を守り、良い職場で働くためには、労働法制度の基本を知っておくことは意味があると思う。
労働法制度は労働条件の最低基準や基本的なルールを定めているので、これは当然遵守すべきであるが、あくまで最低基準あるいは基本的ルールを定めたものであり、各企業は法制度の許容するギリギリのラインを模索するのではなく、それぞれの業種・職種、企業理念、慣行、労使協議などを踏まえて、労働者が満足して働くことができ、企業として最高のパフォーマンスを発揮できる制度を構築することが重要と考える。
その際には、経営者や雇用関係の制度を構築・運用する人事労務担当者の労働法制度に関する十分な理解が必要であるが、それとともに実際に日々の指揮命令をする管理職が制度の趣旨に沿って部下に接することが求められる。例えば、忙しいからといって36協定で定める上限を超えて働かせたり、サービス残業をさせたりすれば、企業とともに当該管理職も責任を問われることになる。
ところで、平成29年に働き方改革実行計画が取りまとめられ、これを受けて、働き方改革関連法によって労働基準法等が改正され、また、新たに兼業・副業やテレワークに関するガイドラインが策定されるなど労働法制度が大きく見直された。その後も、労働施策総合推進法の改正によるパワーハラスメント防止対策の義務付け、高齢者雇用対策法の改正による60代後半の就業確保措置の努力義務化など、雇用労働を取り巻く状況の変化に応じて制度改正が行われている。
本書は、基本的に令和7年4月時点の制度を前提に執筆しているが、厚生労働省は時代の変化に応じて多くの制度改正の検討を行っている。令和7年4月以降の制度改正の動きには留意していただきたい。
本書が、企業経営者、労務担当者、管理職の方々をはじめ、雇用・労働に関わる多くの方々の労働法制度の理解に役立ち、企業における働き方の見直し、適切な労働環境の確保に資することができれば幸いである。
令和7年初春
著者
【目次】

























