その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はジェフ・ハヤシダさん、松本和佳さんの 『OBSESSION(オブセッション) こだわり抜く力』 です。

【はじめに】 この本で伝えたいこと

 僕はこれまでの人生の大半をアメリカで過ごし、現地資本の企業や日系の企業で、様々な人種やバックグラウンドを持つ人たちと働いてきた。そして、こうした人々の間に文化の違いや表現の仕方の違い、仕事の進め方の違いはあっても、組織を動かす際には、人種や言葉の違いが障壁となることはない、と確信した。
 たとえどんな職場であっても、そこで真面目に働いている人たちはみな一様に、自分のため、家族のためにいい仕事がしたい、誰かから認められたい、との思いを抱いていることもわかった。
 多様な環境で生活をし、仕事の経験を積んだ僕は30代になると、どんな場所でも生きられる、どんな職場でも働ける、と思えるようになった。
 やがて40代半ばになってアマゾンジャパンに職を得て、初めて日本で仕事に就いた。この会社が定めた役職に見合う責任と業務遂行の期待を背負ったわけだけれど、同時に僕は、個人的なモチベーションを胸に秘めていた。それはある種の社会実験のようなものだった。

 自分が20代から40代前半にかけてアメリカで積み上げた経験がどれだけ通用するのか、日本で試してみたい―。

 日本人に自律的なキャリア形成の大切さを教えられるだろうか。
 仕事と会社に依存しきることもなく、自分自身の将来を見つめて仕事の経験を積んでいく環境を整えてあげられるだろうか。
 それぞれの従業員が自分らしく振る舞い、成長を遂げるための最適な支援のあり方を見いだせないか。

 僕がアマゾンジャパンで試みたのは、アメリカでの実践そのままに、仕事をする環境を公平にして、共通言語を作って、それをみんなが理解できるようにすること。そして自分を、仕事の中身を、客観的に見る目を養うことだった。
 はたして日本でしか働いたことがない社員たちも、日を重ねるにつれて僕の流儀に順応し、自分という「個」を中心に据えて仕事に臨む方向へと意識が変わり始めていった。
 これは僕が特別な知識を持っていたからではなく、“気づき”のきっかけを示すことができたからだと思う。

 人は、自分でも気づかないような長所を自覚させて、それを共有して、共に伸ばすことができれば、必ず固有の能力を開花させる。僕はアマゾンジャパンで過ごした16年間のうちに、このような定理を確信した。そして会社を離れるにあたり、僕自身が試みてきたことや考え方を整理し、改めて世に問うてみたいと思い、この本を書いた。

 読者に伝えたいことは2つある。

 ・仕事をちゃんとしたいのなら、自分の目標と目的を明確にしようよ。
 ・自分の力で答えを導き出す努力を続けた方が、かえって楽に生きられるよ。人にアドバイスを求めるのはいいけど、解決策は自分で決めよう。

 意識を変えよう、なんてことは言わない。自分の個性をもっと豊かに伸ばして、内に秘めた能力を信じて、素直に生きることを考えようぜ。日々の生活や仕事の中に、楽しさや喜び、自分のためになることなんて山ほどある。それを見つける努力をしようよ。
 この本を読んで、こうしたことに気づいてほしい。

 自分を変えるチャンスなんていくらでもあるってこと。
 その一歩を踏み出すのは、40代だって、50代だって、全然遅くない。
 有名企業に勤めているから、なんていうラベルに頼るのはやめよう。
 親ではなくて、恋人や社会に認められるスキルを身につけよう。
 そのためにも、会社を、仕事を、道具として使って、自分を磨こう。


【目次】

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