その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は山川龍雄さんの『 「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう 』です。
【はじめに】
まず読者のみなさんにいくつか質問です。
外を歩いていて、突然知らない人に道順を聞かれたとします。その際、どう説明しますか。「3つめの角を右に曲がって、それから2つめの角を左に曲がって…」と話を始めますか。もしそうだとしたら、あなたは親切な人かもしれませんが、話が上手な人とは言えません。
2つめの質問です。海外旅行から帰ってきたあなたが、友人に「現地の物価はどうだった?」と感想を聞かれた時、どう答えますか。「いやあ、ものすごく高かったよ」と返答しますか。そうだとしたら、あなたは真面目な人かもしれませんが、退屈な人と思われている可能性があります。
そして最後。あなたが自己紹介を求められたとします。「周囲からはどのような人だと言われますか?」と質問されたら、どう答えますか。「3つあります」と言って、一つずつ話していきますか。そうだとしたら、あなたはとても頭が整理されている人かもしれませんが、空気を読めない人かもしれません。
いずれも答えは本編で述べていますが、ここではヒントだけ言います。1つめは「話を各論から始めてしまう人」。2つめは「話を丸めてしまう人」。3つめは「話の長い人」の典型です。そして、こうした話し方をしがちな人は、テレビや雑誌、ネットなどのメディアでは、敬遠されます。
メディアに限らず、人は話を最後まで聞いてくれないものです。だから、自分が思っていることの半分にするくらいでちょうどいい。ただし、その場合、どこを残しどこを切るか、の工夫は必要になります。
私は経済誌「日経ビジネス」の編集長を務めるなど、雑誌、新聞の編集を経験した後、10年前からテレビの仕事に軸足を移しました。現在はテレビ東京「ワールドビジネスサテライト(WBS)の解説者や、BSテレ東「日経ニュースプラス9」、「日経プラス9サタデー ニュースの疑問」のキャスターを務めています。
その間、日経ビジネス・デジタル版の立ち上げやテレ東の報道コンテンツを配信する「テレ東BIZ」の編集長を務めるなど、電子媒体にも携わってきました。最近はラジオ番組でもニュース解説を務めるようになりました。かれこれ30年あまり、様々なメディアに所属しながら、少しでも多くの読者や視聴者に見てもらうには、どんな発信の仕方が効果的なのか、研究を続けてきました。
「話す」「聞く」「書く」というコミュニケーション力が、視聴率、実売率、ユニークユーザー数、といった数字でシビアに示されるのがメディアの世界です。特にテレビでは、「短く」「印象的に」「分かりやすく」伝える技術が究極的に求められており、それは商談や打ち合わせ、プレゼンテーションなど、ビジネス現場でも必要とされるスキルと言っていいでしょう。
それに、長年、数字とにらめっこしていると、視聴者や読者が求める伝え方の理想形が変化していることも分かります。特にSNSや生成AI(人工知能)の広がりによって、コミュニケーションの在り方は大きく変わろうとしています。本書では私がメディアに携わる中で発見した伝え方のシン・常識をお伝えします。あえてカタカナの「シン」を使わせていただいたのは、「新」「真」「芯」など様々な意味を込めたからです。
先にお断りしておきますが、私は伝え方の達人と呼べるような存在ではありません。特にテレビについてはいまだ素人同然で、日々、新しい課題に直面しています。そんな私が失敗と反省を重ねながら得た教訓を紹介するというのが、本書の趣旨です。それがみなさんのコミュニケーションに関する悩みを解消する一助になれば幸いです。
本書は、担当編集者とメディアにおける「伝え方」について議論した内容をQ&A形式にまとめたものです。伝え方に関連した書籍と言えば、「お勉強」という体裁のものが多いですが、本書はもっと気楽に、メディアの舞台裏を覗き見るような気持ちで、読み進めていただきたいと思っています。一読すれば、自然とコミュニケーション力が向上する、そんな効用のある本を目指して編集しました。
「話す」「聞く」「書く」という行為は、公私いずれの場面でも求められるスキルです。最新の伝え方の常識を知っておくことが、就活、恋愛、昇進、結婚、転職など、人生の節目を成功に導き、幸運をつかむための大きな武器となるでしょう。始まりから長くなってしまいました。本書の中でも、「前置きは短く」と言っておきながら、自分が守れないようではいけませんね。では本編をスタートしましょう。
【目次】





