その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は浅野祐一、鬼ノ仁(著)、日経クロステック(編)の『 一級建築士矩子と考える危ないデザイン 』。「はじめに」に代わり、浅野さんの「あとがき」と鬼ノさんのイラスト版「日経クロステックさんの思い出」をお届けします。

【あとがき】

 建物を巡る事故がなかなかなくなりません。デジタル技術メディアの「日経クロステック」や建築雑誌「日経アーキテクチュア」で取材・執筆を行っていた頃、何度も同じような内容の事故やトラブルを目にしてきました。どうすれば建物で起こる悲劇を減らせるのか。考えた末にたどり着いたのは、その時々に発生する事故やトラブルの情報だけでなく、過去の事故やトラブルの知見も繰り返し伝え続けるというシンプルな結論でした。

 ただ、情報を伝える際には、相手に関心を持ってもらわなければなりません。過去の事故をそのまま報じても、振り向く人はわずかです。「何か工夫を」と悩んでいるときに出会ったのが、日本文芸社が発行する建築マンガ「一級建築士矩子の設計思考」でした。「日経アーキテクチュア」の小山航記者が担当した書評で、人気ぶりを知ったのです。

 過去のコンテンツであっても、人気マンガのキャラクターと考察を加えて提供できれば、新しいコンテンツとして訴求力を持たせられます。しかも、マンガであれば若手からベテランまで広い世代に受け入れられます。早速、日本文芸社の編集担当である中阪康一氏と早坂比呂氏に連絡を取り、「一級建築士矩子の設計思考」の著者である鬼ノ仁氏を含めた面会の場を設けてもらいました。

 建物での事故の深刻さとその情報を伝える意義をまくし立てたように記憶していますが、皆さんは耳を傾けてくださり、「日経クロステック」で「一級建築士矩子の設計思考」の主人公を使ったコラムを作成しても構わないと快諾してくれました。これが、本書のベースとなる連載企画の始まりです。連載中の人気マンガのキャラクターを他社のコンテンツにも使ってよいという英断には、ただただ、感謝の言葉しか浮かびません。

 建物を巡る事故を扱った裁判では、建築関連の書籍などが発信した情報を建築の世界における1つの常識として判断する例があります。ところが、建物の安全性を高めるために役立つ事故やトラブルを丁寧に紹介した書籍は、あまり存在しません。本書が建物の安全に関する常識を少しでも普及させる役割を担えれば幸いです。

 その意味では、本書の情報はまずは建築の実務者に見てもらいたいと思いますが、建物を利用する消費者の方にも知っておいてほしいと考えます。自分自身だけでなく、大切な家族や知人を危険にさらさないよう、建物との付き合い方を知る材料にしてほしいのです。

 最後に本書の執筆・制作にご協力いただいた方々に深く謝意を表したいと思います。

日経BP技術プロダクツユニット長 浅野 祐一

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【目次】

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