その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は裴英洙(著)、日経ヘルスケア(編)の『 新・医療職が部下を持ったら読む本 』です。

【はじめに】

 「あ~、ついに管理職になってしまった!」

 嘆く医療職の声をこれまで多く聞いてきました。医療職は、臨床現場の最前線でバリバリ活躍するためにこの世界に入った方が多いと思います。なのに、「来期からは○○長、よろしく」と言われた時の戸惑いは想像に難くありません。

 医療経営コンサルタントの仕事に携わる前、私は10年近く勤務医として病院で働きました。忙しい毎日でしたが、やりがいのある日々でした。ただ、勤務した多くの病院では、現場の医療職は多忙で疲労困憊の毎日、患者からのクレームは増加、どんどん辞めていく職員たち、毎年かなりの額の赤字垂れ流し――。患者さんのために頑張っている職員の笑顔がどんどん少なくなってくることに問題意識を持ち始めました。なぜこんなに病院経営がうまくいかないのだろう……。当時の経営層の院長や副院長、看護部長、リーダークラスの診療科長、看護師長の誰もが一途に仕事をしていたかもしれませんが、系統的に経営やマネジメントを学んでおらず、病院という巨大な組織を手探りで動かしていたのかもしれません。医療者は真面目で優秀な人が多いので、経営やマネジメントをきちんと勉強する機会さえあれば、医療機関はずっと良くなるのに……と、当時の思いが今の仕事に私を向かわせ、そして本書を書くきっかけにもなりました。

 「経営」や「マネジメント」と聞くと、難しそうだと身構えてしまう方も多いでしょう。実はそんなことはありません。世の中にあふれる難解な経営書をイメージして、「敷居が高い」と感じているだけなのです。本書は、臨床現場を知る筆者が、できるだけ平易に、かつ日常業務に密接に関係する具体例をふんだんに用いながら基礎から学べるように構成しました。しかも、病院・診療所で起こるたくさんの“悩み”を新人管理職の医師や看護師が奮闘しながら解決していく小説風です。本格的な経営の勉強を始める前に、入り口として本書を楽しんでいただけたらうれしいです。

慶應義塾大学大学院 特任教授/ハイズ(株) 代表取締役社長 裴 英洙(はい えいしゅ)

【目次】

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