その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日本住宅保証検査機構 住宅品質研究室(著)、日経アーキテクチュア(編)の『 図解 木造住宅トラブルワースト20+3 「雨漏り事故」「構造事故」の事例から学ぶ原因と対策 』です。

【はじめに】

施工者任せでは取合い部分の正しい施工を確保できない

 建築物を建てるには、様々な手続きと併せて多くの書類が必要です。とりわけ、建築物の寸法・仕様・構造・設備や正しく施工するための納まりなどを明示した設計図をはじめ、構造の安全性、省エネルギー性能などを確認するための各種計算書類は欠かせないものとなります。これらをまとめて「設計図書」といいます。

 ところが、木造住宅の多くは、基本的な設計図書(配置図、仕上げ表、平面図、立面図、標準化された矩計図、簡易な構造計算、基礎伏図、プレカット図など)のみで施工されるケースが大半を占めています。木造住宅の売り主や請負者は、設計段階のコストを抑えようとする傾向があるためです。法改正や基準の強化に合わせて部の標準的な仕様は検討するものの、部位ごとの詳細な仕様や納まり、施工手順などを各工事工種の施工者任せとするケースが少なくありません。そのため施工者は元請け会社からの大まかな注文に基づき資材を調達し、それぞれの施工範囲を資材メーカーのマニュアル通りに施工することとなります。

 マニュアル通りに施工するのであれば問題ないと思われるかもしれませんが、その認識こそが住宅の不具合を繰り返す原因のひとつだと当社は考えています。例えば、屋根と外壁の取合い部分は防水の連続性を確保する必要があります。屋根と外壁といった各部位の施工者がマニュアル通りに施工していても、設計図書に明記されていない取合い部分については、施工範囲や責任の所在が不明確なまま工事が進んでしまいます。結果として防水の連続性が確保できず、雨漏りにつながるケースが後を絶たない状況です。

 このような不具合を予防するには、設計者が設計段階でリスクの低い仕様を選定した上で、取合い部分を正しく施工するための詳細な設計図書を整備することが重要だと考えています。

 本書は、当社が住宅瑕疵担保責任保険契約に基づく保険金の支払いを通じて入手した様々な不具合(トラブル)について、原因の分析や設計・施工上の問題点、不具合発生のリスクを抑えることができる標準仕様などをまとめたものです。住宅の基本性能を損なう不具合を繰り返さないために、できるだけ多くの方々に失敗の本質をお伝えすることが当社の責務であると考え、本書を出版することとしました。

 住宅の設計・施工・販売に携わる方々には是非本書をご活用いただき、これから住宅を建設・購入される消費者の皆様に安心感を提供し、信頼確保につなげていただきたいと考えております。

日本住宅保証検査機構(JIO)常務取締役 技術本部長
黒澤 英雄(一級建築士)

当社では「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(平成19年法律第66号)第19条にのっとり、住宅の瑕疵を防ぐ情報・資料を提供しています。

【目次】

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