その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は服部英治さんの『 50ケースで学ぶ 医療・介護の人事労務入門 』です。
【発刊に当たって】
私は社会保険労務士として約30年、医療福祉業界の労務管理の表も裏も見てきました。この仕事を始めた30年前を振り返ると、労務管理で寄せられる相談は「パート職員に年次有給休暇を付与するか否か」といった、法令や制度に関する知識や理解の不足に起因するものがほとんどでした。2000年代に入るとインターネットが急速に普及し、こうした相談は瞬く間になくなりました。
そうなると、労務管理の課題は「退職時に年休をまとめて取得されることがないよう、対策を取れないか」など、制度の枠内でいかに運用を工夫するかという内容に変遷。ネット上にも十分な情報がないことを巡って労使が攻防を重ねるという労務管理が久しく続きました。
さらにこの数年、医療福祉業界にも大きな混乱をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を経て、医療・介護現場の労務管理は新しいフェーズに入ったと感じています。流行の期間中、直接的な対話が最小限に抑えられたことも影響して、これまでに経験をしたことがない労務管理の壁にぶつかる経営者が増えました。「職員とどのように対話をすればよいのか分からない」というコミュニケーションの悩みから、「そもそも、どのように管理すればよいのか?」という相談まで、労務管理の土台が揺らいでいることを示す声が一気に増加したように感じます。
『日経ヘルスケア』で2005年1月号から連載している「医療・介護経営者のための人事・労務入門」(2019年4月号から現タイトル)では、その時々で寄せられる相談や課題を取り上げて労務管理の注意点や考え方を解説してきました。本書は2019年7月号から2025年4月号までの掲載分から50ケースを選び、法令や制度のアップデート(2025年5月時点)などの再編集を経て構成しました。
この期間の真ん中はちょうどCOVID-19の流行期に当たり、非常事態への対応方針を解説する記事を多く掲載しました。COVID-19の経験は今後パンデミックが再び起きた時のみならず、平時でも職員の待遇を検討する際の指針になります。そうした観点から、本書では第9章を中心に当時の記事を再掲載しています。
人材確保がますます難しくなっていく中ですが、本書を参照していただき、より良い職場風土の醸成につなげていただければ幸いです。
2025年6月 服部 英治
【目次】


