その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は松尾和也(著)、日経アーキテクチュア、日経クロステック(編)の『 間違いだらけの省エネ住宅 』です。
【はじめに】
2017年7月に「ホントは安いエコハウス」を執筆・出版しました。本書はその内容を現在の社会状況などを踏まえて増補・改訂した書籍です。前著は家を建てる際を中心に、住宅における省エネの取り組みを分かりやすく伝えた結果、住宅業界の方を中心に、多くの方々に読んでいただくことができました。本書では住宅の建設やリフォーム、冷暖房などの家電の交換・導入などを考えている一般の方に向けて、住宅における省エネが、どれほど経済的に大きな意味を持つのかを分かりやすく指南しています。
前著は、「日経ホームビルダー」(現在は休刊)という住宅専門誌に連載していた内容をまとめて出版したのですが、当時は2025年現在に比べて、住宅業界の省エネ、断熱の取り組みが、はるかに劣っていました。前著の発行から8年が経過し、住宅業界は大きく変わっています。当時の大手住宅会社では、一条工務店だけが目立って高い省エネ性能をうたっているような状況でした。しかし、今は「G2、耐震等級3、C値1以下」といった、「健康で快適に暮らすためにはこの水準は必須ですよ」と、私が言い続けてきた基準が、まともな住宅会社の間で取り入れられ始めてきました。これは猛烈な進化です。
しかし、猛烈な進化がもたらしたのは、よい面ばかりではありません。住宅の建設や購入を考える顧客にとって、「G2、耐震等級3、C値1以下」は、住宅会社に対する一次審査となっています。住宅会社にとっては、契約率を高めるための必須3項目になっているのです。ところが、「G2、耐震等級3、C値1以下」は満たしていても、「たいして暖かくも涼しくも経済的でもない」という住宅が大量に生産されています。そんな負の側面が現れてきているのです。
2003年から当社で掲げてきた「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」というキャッチフレーズは、家を建てる「目的」にほかなりません。顧客がより幸せな暮らしを得るための目的なのです。先の3項目は、この目的をかなえる手段の一部にすぎません。
ところが、大半の住宅会社、場合によっては顧客の側で、この3項目が目的化してしまっています。繰り返しますが、本来の目的は「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」こと。そのためには、冬の日射取得、夏の日射遮蔽、適切な冷暖房計画と設備機器の選定、そして何より、適切な施工、確実なチェック体制が欠かせません。
高性能住宅の基本が常識になりつつある今こそ、適切な冷暖房計画、施工、チェック体制のような、地味であっても本質的な項目が求められるのです。住宅やエアコンといった高い買い物を考える人は、住宅会社や家電量販店が「受注獲得」「売り上げ増」を主眼に置いているのか、本当の暮らしやすさを提供しようとしているのかを見極めなければなりません。とても難しいことですが、このプロセス抜きで理想の家づくりや暮らしはできません。本書が住宅に関連した投資において、住宅会社などのプロと対等に渡り合う理論武装の一助となれば幸いです。
松尾和也
【目次】



