その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は前真之さんの エコハウスのウソ2030 です。
【はじめに】
本シリーズの第1弾『エコハウスのウソ』が出た2012年当時、通風最優先の「夏を旨とする家」こそがエコハウスであるという主張が幅を利かせ、「家が暖かいと人は怠け者になる」「断熱・気密をすると家が腐る」と声を大にする住宅関係者が大勢いた。そうしたエコハウスを巡って住宅業界にはびこる「ウソ」を暴き、つくり手や住まい手が家づくりの「ホント」を考える機会とすることが、本シリーズの一貫した目標である。
日本各地にいる素晴らしいつくり手の努力の結果、この10年余りの間に日本の住宅性能は劇的に向上。一方で、情報の氾濫に押し流され、答えを見失う「住宅迷子」に陥る人が増え、住宅価格の高騰も重なって、家選びはますます難しくなっているのも事実である。
本書はシリーズ4作目として、家に求められる「十分な性能」を整理する。国土交通省は2025年に省エネ基準をようやく義務化し、30年までにZEH水準の義務化を予定しているが、それらは全くもって力不足である。本書では、日本中の熱心なつくり手が実現してきた、「2100年にも通用するファイナルアンサー」をまとめている。
そして本書の最大のテーマは、十分な性能の住まいを「全ての人に届ける」ことである。本書が求めるのは「究極」「至高」では決してない。全てに過剰な仕様を求めれば、住宅価格が高くなり過ぎ、みんなに届かなくなってしまう。あくまで全ての家に備わってほしい「十分」に絞って論じることにする。そして、みんなが十分な性能の家に住めるためには、つくり手と住まい手が協力することとともに、社会全体のサポートが不可欠なことは特に強調しておきたい。
住宅業界にはびこるウソが暮らしを貧しくする
昔も今も、住宅の周りにはたくさんのウソがはびこっている。とりわけ特大のウソが、「高額な住宅を買える富裕層だけが健康・快適・安心に暮らせる」という考えそのものだ。本書では、「日本のどこでも、誰もが健康・快適で電気代も安心に暮らせる」ことをホントのエコハウスと定義し、その実現方法を考える。
住まいのウソを知り、ホントをつくる努力が社会を変える
健康・快適・安心な暮らしは断じて富裕層の特権ではない。国民みんなが享受すべき「ナショナル・ミニマム」のはず。みんなが住宅にまつわるウソを知り、ホントのエコハウスについて考えれば、家を買ったり借りたりする時に、より良い選択ができるはずだ。買い手・借り手が変われば、住宅業界は変わらざるを得ず、社会全体も変わっていく。
家を買うこと・借りることは、多くの人にとって人生最大の出費である。裏を返せば、社会に対する人生最大の意思表示でもある。ホントのエコハウスをつくる努力が広がり、日本で誰もが幸せに暮らせる社会が実現することを、心より祈念する。
【目次】



