その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はトーマス・バルタ、パトリック・バーワイズ(著)、田中恵理香(訳)の『 世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」 』。「序章」の一部を抜粋してお届けします。
【序章】
マーケティングを「単に実行する」ことと「主導する」ことは全く違う
あなたはマーケターだ。
あなたは、自分が担当するブランドに情熱を注いでいる。市場の情勢を誰よりも理解し、会社やブランドが「顧客志向」を追求する上での中核というべき存在だ。
あなたの会社のCEO(最高経営責任者)は、自社がもっと市場志向で革新的になるようにと、もう何年も願ってきた。今日、新たに登場したデジタル技術を駆使することで、顧客の要望にもっと応えようとする多くの機会が生まれている。経営層にとってそれはプレッシャーになっているが、この部分もマーケターが自ら持っている知見を活用できる分野と言える。
そう考えると、あなたが組織で占める地位はもっと高くていいはずだ。今やマーケターとしての見識が強く求められているのだから、経営上層部が重要な決定を下すときは、マーケターを頼りにしなくてはならないはずだ。もっと敬意を払ってくれてもいいのではないか──。
残念ながら、そううまく事が運ぶとは限らない。
もっと顧客志向になりたいと言い続けている割に、マーケターを経営トップチームに入れていない企業は多い。CMO(最高マーケティング責任者)出身でCEOへと昇進する人は、まだ一部にとどまっている。これから見ていくとおり、CEOによるマーケターへの評価は、決して高いとは言えない。
多くのマーケターは「マーケティング施策を単に実行すること」に関しては優れている。顧客理解やブランドコミュニケーション、ソーシャルメディアのキャンペーンといった点では高い能力を発揮する。マーケターの多くは、社内でもっと注目を集められるといいのにと願っている。ビジネスの拡大に貢献しようと懸命に働いている。にもかかわらず、社内での影響力の向上や、輝かしいキャリアへと結び付かない。
それはなぜか。
我々の調査が裏付けた結果を簡単に紹介しよう。マーケターの71%は、自分たちの仕事がビジネスにもたらすインパクトが大きいと考えている。ところが、自分のキャリアパスに満足している人は44%しかいない。マーケターの上司(経営の上層部)は、さらに厳しい意見だ。直属の部下の中で、マーケターはキャリア上で成功する可能性が最も低いと見ている。
マーケティングは、会社の命運を分けると言ってよい重要な仕事である。マーケターが失敗すれば、本人のみならず自社にとっても、深刻な事態になる。短期的な売り上げを求め、顧客に目を向けなければ、長期的には利益が停滞していくだろう。マーケターは何年もかけて、顧客を理解し、新しい商品のアイデアを生み出し、成長戦略を立てていかなくてはならない。
つまり、CEOとマーケターは協調し、共に繁栄を目指さなくてはならないのだ。では、どのようにすればよいのだろうか?
その解決策はマーケターの側にある。あなたはこれまで、マーケティングスキルの習得に労力の大半を注ぎ込んできたことだろう。ブランドポジショニングや顧客を引きつけるプロモーションの方法などについては、よく分かっているはずだ。
こうした専門性を持っていることには敬意を表したい。その専門性があるから、あなたはここまでやってこられた。それは間違いない。だが、それだけではビジネスへのインパクトとキャリアの成功の両方を最大にするには十分とは言えない。
マーケティングスキルの専門性とともに、マーケティングリーダーという専門性も備えていなくてはならないのだ。実は、この2つは全く異なる領域だ。
そこには何があるのか。
まず、マーケティングを「主導する」ということは、単に顧客の役に立つことだけを考えて仕事をすることではない。自分の知識を高め活用し、マーケティング自体の影響力を社内で高め、すべての顧客体験(カスタマーエクスペリエンス:CX)を向上させていくことである。
経営層や同僚(マーケティング部門以外のチームに所属する人々)や自らが率いるチーム、そして自分自身を動かし、顧客ニーズと企業ニーズの合致する部分を最大化していく。まさにここが、本書で指南しようとしていることだ。
本書はマーケティング本ではない。マーケターのためのリーダーシップに関する書籍だ。
今、あなたは岐路に立っている。単なる技術的な意味でのマーケターとして続けていくという選択肢もあるだろう。デジタル化のおかげで退屈することはない。常に新しいことが起きている。しかし、そこにこだわるだけでは社内で意義のあるインパクトを生み出せる人材にはなり得ない。キャリア面での成功があまり見込めず、フラストレーションばかりがたまっていく。──そんな状況に陥り、抜け出せなくなっていくだろう。
本書では、かなり大胆かつ野心的な提案をしていく。ここから提案していく「12の力」を実践することで、企業にとってもあなた自身にとっても、明るい未来が開けることと信じている。リーダーとしての能力を発揮し、デジタル技術による新たな機会を活用し、これまでは一部の企業しかうまく実現できていなかった「絶えず顧客と企業のつながりを強化していく」ことに結びつけていくのだ。
(以下、略)
【目次】





