その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は藤野英人さんの『 「日経平均10万円」時代に備えろ(日経ビジネス人文庫) 』です。
【文庫化にあたってのはじめに】
本書の底本となった『「日経平均10万円」時代が来る!』を上梓したのは、2024年1月のことでした。
2023年12月末の日経平均株価の終値は、3万3464円。当時、私が「10年後には日経平均は10万円を超えている」と言うと、「藤野さんはどうかしてしまったのではないか」などと心配されたものです。
しかしその後、日本の株式市場は、多くの人の想像を超える上昇を見せました。2024年2月には1989年12月に付けたバブル期の最高値3万8915円を約34年ぶりに更新し、3月には初めて4万円を突破。そして2025年10月に5万円、2026年4月に6万円を超え、本書執筆も最終盤にさしかかった6月には7万円も超えました。
もちろん、この間には大きな下落に見舞われる局面もありました。
2024年7月には米ハイテク株安や日銀の利上げ観測、円高進行をきっかけに株価が急落し、8月には日経平均が過去最大の下げ幅を記録しました。2025年前半は米国の関税政策をめぐる不透明感から値動きが荒くなり、4月には日経平均が3万1000円台まで下落する場面もありましたし、2026年に入ってからも春先には中東情勢の悪化や原油高、米ハイテク株安を受けて大きく下げる局面がありました。
それでも今、「日経平均10万円」時代が来るという私の予測に対し、2年半ほど前のように強く否定する声はほとんどありません。
多くの人が「遠からず日経平均が10万円を超える日が来るのだろう」と感じているのだと思いますし、私自身、今では「当初の予想より早く、2033年を待たずに日経平均10万円時代は訪れる」と考えています。
2年半前に「日経平均10万円」時代を予測した根拠については、今でも基本的な考え方に大きな変化はありません。一方で、今後の日本株市場の成長を確信させる要因は増えています。また、皆さんもご存じのように、この間には生成AI(人工知能)の急速な進化があり、企業や私たちをとりまく環境は激変しつつあります。
これらの変化を踏まえ、本書は『「日経平均10万円」時代が来る!』をベースとしながら、内容を大幅にアップデートしました。
インフレの進展、大企業の変化と新興企業の台頭といった背景に加え、AI革命の進展が日本の株式市場にどのような影響を与えるのか、さらに高市政権による日本の成長戦略がもたらす影響についても考察しています。加えて、「軽い経済から重い経済へ」という本質的かつ不可逆な経済の前提の変化についても、私の考えを詳しく述べました。
本書は、今、株式市場で何が起きているのか、そしてこれから何が起きそうなのか、皆さんが考えていく上で重要な視点を提供する1冊になっているのではないかと思います。
もっとも、私が本書で伝えたいのは、「日経平均が10万円になって世の中が明るくなる」という話ではありません。「日経平均10万円」時代は、決して薔薇色ではないのです。
詳しくは本編で述べますが、これから格差が拡大することは避けられず、未来については「私たち一人ひとりがどのような選択をするかによって、明るくもなれば厳しいものにもなりうる」というのが正しい状況認識だと思います。
ですから本書では「日経平均10万円」時代が遠からず到来することを前提として、その背景を分析した上で、「私たちはどのように備えるべきなのか」について考えていきます。投資に対してどのような姿勢で臨むべきなのか、「日経平均10万円」時代に向けて私が注目しているのはどのような銘柄なのかといった話はもちろんのこと、「インフレ×AI」という先を見通しにくい時代を生き抜くための指針も示しています。
ある面では、本書は同じ日経ビジネス人文庫から2025年12月に上梓した『投資家みたいに生きろ[増補版]』と対になる1冊だといえます。
本書の執筆は、『投資家みたいに生きろ[増補版]』で示した人生戦略を、この激変する時代の中でどう遂行すべきなのかを示すことが1つの目的であったと言ってもいいでしょう。
本書が、「インフレ×AI時代を投資家的に生き抜く」とはどのようなことなのかを考えるきっかけとなり、あなたが未来を選択する際の一助になることを願っています。
2026年6月
藤野英人
【目次】







