その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は杜師康佑さんの『 超凡人の私がイノベーションを起こすには ストーリーで読み解く「理論×実践」 』です。

【はじめに】

 本書はあらゆる個人や組織がイノベーションを起こせるようになるための方法をまとめた書籍です。イノベーションとは「革新」や「刷新」「新機軸」などと言い換えることができます。この言葉を真正面から受け止めようとすると少し構えてしまうかもしれません。何か新しいことにチャレンジしてみたいという気持ちが心のどこかにあったとしても「本当に自分や自分の会社がイノベーションを起こせるのだろうか」と踏みとどまって考えてしまう人は少なくないのではないかと思います。

 ですが心配は無用です。本書では様々なイノベーション活動の事例をストーリー形式で取り上げていますが、どれ一つとして誰もが認める大天才の所業は出てきません。むしろ挑戦と失敗を繰り返してきた人々のリアルな姿を取材を通じて描いています。言葉を選ばずに言えば、ごく普通の人(と自分で思い込んでしまっている人)が新しい何かを創造できるようになるためのヒントやアイデアをたくさん詰め込んでいます。

 筆者の職業は記者で、15年間ビジネスの取材をしてきました。執筆するテーマはイノベーション活動が多いです。取材を通じて多くの方の声に耳を傾け、聞いた情報を世の中に発信する職業にはやりがいを感じています。一方、心のどこかで「他の人の頑張りを横目に見ているだけで、自分自身が何かを成し遂げているわけではない」というコンプレックスを感じていたのも事実です。記者という職業は観察者の立場になることが多いので、実際に第一線で創造的な製品やサービスを生み出そうと努力する人の話を聞きながら、どこか羨ましく思う気持ちが強くなりました。

 そうした思いから2023年に横浜市にある慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、通称SDM研究科に入学しました。在学期間中に様々なバックグラウンドを持つ同級生や素晴らしい先生方と出会いました。異なる考え方を持つ人々が同じ場に集まって対話することで思いもしないアイデアが生まれる瞬間を幾度となく経験し、「イノベーションとは何か」について自分なりに考え続ける充実した2年を送ることができました。

 SDM研究科ではシステム思考、デザイン思考、システムズエンジニアリング、プロジェクトマネジメントなど様々な学問領域を頭と手を動かしながら体系的に学びます。これらのテーマはどれも本質的で、もちろんイノベーションにも有効です。一方で一度聞いただけではなかなか理解が難しく、具体的な実践事例も世の中に分かりやすい形で提示されてはいないのではないかとも思いました。誰もが創造的になれるように理論と実践の双方を分かりやすい文体で書くことができないだろうか――。これまで現場主義に基づき様々な人に取材させていただいた記者経験を生かし、自分なりに価値を提供したいと考えたことが本書執筆のきっかけです。

 本書は5つの章で構成されています。第1章はイノベーションに必要な4つの思考法について取り上げています。第2章はたとえ自分には何もできないと感じている人でも、一歩前に踏み出せる自分の変え方を紹介します。第3章はエースがいなくても革新的なビジネスを生み出し続けるための組織づくりについて考察します。第4章は個人や組織の枠の中にとどまらず、社会そのものを大きく変えるために活動している実践例を集めています。そして第5章は生成AIなどの先端技術、行動変容などユニークな考え方を基盤にイノベーション活動に取り組む企業を取材しました。

 各章にある個別のセクションは独立しており、どのページから読み進めても内容が分かるようなデザインにしています。本書を通じて多くの方が一歩前に踏み出せる気持ちになる、そんなお手伝いができればと願っています。

 2025年7月

杜師 康佑

【目次】

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