その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は三木博幸さんの 『良い製品開発 実践的ものづくり現場学』 です。
【まえがき】
これまで3冊の本を書きました。『コストを下げれば、品質は上がる』『部品半減』『コストは、必ず半減できる。』、いずれもタイトルでおわかりのとおり、わたしの若き日の製品開発経験から編み出した「DTC(Design to Cost)開発」を、「部品半減・コスト半減」という側面から解説したものです。
今回、屋上屋を架することを厭わず、あえてまた本書を上梓したのは、製品開発というものに対するわたしの考え方、取り組み方を、「DTC開発」の全体像を通して、特に経営者の方々にぜひ理解していただきたいと思ったためです。
というのも、わたしが現在、コンサルタントとして全国各地を飛び回り、お付き合いさせていただいている企業の中にも、どうも開発現場のことをあまりよく理解していらっしゃらないのではないかと思われる方々がかなり見受けられるからです。
本書の中でも再三強調しましたが、製品開発というのは、実は企業の命運を決めるほどの極めて重要な業務なのです。それを企業経営に携わる方々すべてに理解していただきたいというのが、わたしの願いです。
「自国ファースト」「貿易戦争」「資源争奪戦」「労働力不足」……、現在の企業経営を取り巻く環境は、どれをとっても日々厳しさを増してきています。
AIをめぐる議論が喧かまびすしいですが、AIにはこうした問題を解決するために何が必要かを探る提案力はありません。開発現場の権限を強化し、もっと広い視野で行動できるように企業組織を変えていけば、必ずや様々な難題を乗り越えていく知恵がそこから生まれてくるはずです。
お忙しい中、本書の原稿を読んでいただいた東京大学大学院経済学研究科教授の藤本隆宏先生には、解説を書いていただきました。深く感謝いたします。
また、読者の皆様には、わたしの意のあるところをぜひお汲み取りいただけますよう、お願いいたします。
2020年2月 三木 博幸
【目次】