その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は中寛之さんの 『ITIL(R)4の基本 図解と実践』 です。

【はじめに】

 2007年にITIL®v3が発表され、長らく同バージョンがサービスマネジメントのデファクトスタンダードとして用いられてきた。多くの組織はプロセス単位で業務を設計し、理想と現実の間でうまく落としどころを見つけて業務を成立させていた。

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 それから12年がたち、2019年にITIL4が発表された。ITIL4を見たとき、私の周囲では「プロセスはどこにいったのか?」「ITライフサイクルの考え方はどうなったのか?」と衝撃を受けた人が多くいた。私自身も同じ感想を持ち、前バージョンで構築したサービスマネジメント業務との整合性に悩む部分もあった。

 コンセプトとしてITIL4は素晴らしい。サービスを企画する段階からそれを管理する組織をコントロールする業務までが考慮され、必要となる実用的な手法が34個のプラクティスとして定義されている。プロセス単位の個別最適化が業務のサイロ化を招いたITILv3の反省から、ITIL4はSVC(サービスバリュー・チェーン)を用いて自分たちの組織に合わせた業務設計が重要であることを述べている。しかし、プラクティスとSVCをサービス開発のどのフェーズでどのように用いればよいのか、一目でわかる目安がない。

 その悩みを解決するため、本書ではITIL4の中には示されていない「ITオペレーティングモデル for ITIL4」という独自のモデル図を示している。従来のITILv3ベースで設計されたサービスマネジメント業務は「計画→設計→移行→運用」というITライフサイクルの流れに沿っていた。ITオペレーティングモデル for ITIL4では、これをサービスライフサイクルという形に昇華し、現状からの高度化アプローチが取りやすい構造になっている。既存サービスの運用、新サービスの開発のいずれにもこのモデル図は有効に機能する。
 ITIL4のプラクティスにはそれぞれ1つ以上のプロセスがあり、各プロセスには複数のアクティビティがフロー形式で定義されている。本書はすべてのプロセスとアクティビティを明記しているが、課題と解決策を手厚く扱うため、各アクティビティの解説までは含んでいないので、その点はご容赦いただきたい。必要に応じて、各プラクティスガイドを直接参照するとよい。

 本書は、近年取り組みが広がっている「DevOps」「SRE」「AIOps」を解説しているほか、ITILがあなたの組織でどれだけ有効に用いられているかを評価する「ITIL成熟度診断」を掲載している。特に「ITIL成熟度診断」は本書が初めての公開であり、サービスマネジメントを計画・実践するためのすべての要素が詰まっているといっても過言ではない。

 だからこそ、次のような方々には特に読んでもらいたい。

 これまでITILを業務で用いていた人
 組織のIT運用に携わっている人
 組織のIT開発に携わっている人
 組織のIT企画に携わっている人
 IT部門を管理している人
 DX案件に直接的・間接的に携わっている人

 DX時代のサービスマネジメントを牽引する読者の皆様にとって、明日の業務を少しでも良くすることに本書が寄与するならば、これに勝る喜びはない。

アクセンチュア株式会社
中 寛之

ITオペレーティングモデル for ITIL4

ITIL4で定義する34プラクティスにサービスライフサイクルを当てはめ、5領域15カテゴリーに分類したものを「オペレーティングモデル forITIL4」と呼ぶ。
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【本書の読み方】

 この書籍は、ITIL4の基本を理解すること、現場での実践的な用い方を知ることを目的としている。1章と2章を読んでITIL4の概要を把握したら、あとは読みたいところから読んでもらっても構わない。

 ITILそのものを大まかに理解したい人は、1章・2章を読んで全体像を把握し、8章・9章・10章から過去のバージョン、関連する他の技術フレームワークとの関係性を知ることができる。1章ではITILが世の中に求められる理由、2章ではITILの最新版であるITIL4でできることは何かを解説する。8章では過去バージョンからの変遷、9章ではサービスマネジメントと隣接する開発フレームワーク・ガバナンスフレームワークを解説している。10章では目的別の習熟に有用な資格の体系を解説する。

 すでにITILv3をよく理解している人は、6章・7章を読んで自分たちに足りていない業務を識別し、該当するプラクティスを3章・4章・5章からチェックすると効率的にITIL4を活用できる。3章ではサービス提供に係る日常的な業務、4章では中長期で取り組む業務、5章ではソフトウェアとプラットフォーム技術に関する業務に対する管理手法を解説する。6章はITIL4に基づく業務成熟度診断、7章はサービスマネジメントの高度化に必須となるSREを解説する。

 ITIL4を正確に詳しく理解したい人は、1章から10章まで順番に読み進めることで、最先端のサービスマネジメントの基本と応用を体系的に学ぶことができる。

 本書を手元に置いて、議論対象のプラクティスを確認したりするなど、サービスマネジメントの辞典のように使うとよいだろう。

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【目次】

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