その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日経BP(編)の『 日経テクノロジー展望2027 未来をつくる100の技術 』です。
【はじめに】未来へのビジョンを育む
現在、AI(人工知能)は画面の中から飛び出し、現実の世界へと踏み出しています。ロボットや機械を自律的に制御するフィジカルAIは、人手不足に苦しむ工場や倉庫で導入が広がっています。人型ロボット(ヒューマノイド)が多数働く世界は、もはやSF映画の中だけの話ではありません。車両の制御を全面的にAIが担い、人の監視を必要としない無人運転も実現しつつあります。日本でも、フィジカルAI分野での勝ち筋を見据え、官民でマルチモーダル基盤モデルを開発する「FRONTia」プロジェクトがスタートを切りました。
AIの活用が急速に進む背景には、AI自身の進化があります。大手テック企業は日々、AIモデルの高性能化を目指して激しい競争を繰り広げています。ソフトウエア開発の全工程にAIを組み込むAI駆動開発、AIに与える情報を整えて狙った答えを引き出すためのコンテキストエンジニアリング、AIエージェント同士をつなぐA2A(エージェント・トゥ・エージェント)といった、AIを使いこなすための技術も出そろってきました。
この進化を支えるのが、電力と計算の基盤です。電気回路の一部を光に置き換える光電融合やサーバーを液体に浸す液浸冷却、直流800V給電は、いずれも膨れ上がるデータセンターの電力問題に応える技術です。ついには演算基盤そのものを宇宙空間に築く宇宙データセンター構想まで動き出しました。半導体ではチップレットやCFET(相補型電界効果トランジスタ)といった技術が微細化の限界を押し広げ、電力と計算力の制約を外そうとしています。桁外れの計算力を持つ量子コンピューターも、実用化に向け開発が加速しています。
革新の波は、AIに限らず幅広い分野に広がっています。本書では、AI分野をはじめ、エレクトロニクス・モビリティー、環境・エネルギー、IT・通信、建設・土木・素材、メディカル、ライフスタイルに至るまで、日経BPの各専門誌編集長や総合研究所の専門家が選び抜いた「世界を変える100の技術」を収録しました。グリーン水素や浮体式原発、走るだけで電気自動車(EV)を充電する無線給電道路など、社会の土台を組み替える技術も並びます。
注目すべきは、その多くが研究段階を抜け、社会実装の入り口に立っていることです。全固体電池は量産の日程が具体的に語られ始め、木造高層ビルや蓄電コンクリートは街の姿を変えようとしています。2025年のノーベル化学賞に輝いたMOF(金属有機構造体)のように、日本発の技術も確かな存在感を放っています。
日経クロステックとZuvaが共同で開発した「テクノロジー未来投資指数」のランキングも掲載しました。スタートアップの資金調達動向から分析した技術セクターごとの成長期待値を知ることで、注力すべき技術領域を見極める手掛かりが得られます。
本書は、未来を形づくる技術の全体像を知り、次の一手を打つための羅針盤となるよう編集しました。経営戦略の立案、研究開発の指針、事業創造のヒントとしてご活用いただけるはずです。読者の皆さまの未来へのビジョンを育む力となることを願っています。
日経BP 常務執行役員 技術メディア担当 森重和春
【目次】



