その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は神田昌典さんの『 存在起点のマーケティング 旗を掲げよ――AI時代の分野No.1戦略 』です。

【はじめに】●人が足りないのではない。旗が足りないのだ

 人が足りない。
 その言葉を聞くたびに、私は思う。
 また、その話か、と。

 営業が足りない。幹部が育たない。
 新しい拠点を出したいのに、任せられる人がいない。
 技術には自信がある。全国に広げたい。だが、そのための人がいない。

 もちろん、その悩みが切実であることはわかる。
 だが、その話に入った瞬間、次はこうなる。
 人を増やすのか。育てるのか。
 そりゃ金もかかるし、時間もかかる。

 だけど、本当に問題は、そこだろうか?

 人が足りないんじゃない。
 旗がないのだ。

 今、私たちが体験しているAI(人工知能)社会の本質は、単なる効率化ではない。
 一部の優秀な人に集中していた力を、組織の中に広げられることにある。
 だから、ひとりあたりの生産性は10倍、場合によっては100倍単位で変わりうる。

 だとしたら、先に決めるべきは、人を何人増やすかではない。
 自社は、どこで勝つのか。その一点である。
 そこで必要なのが、旗だ。

 ここでいう旗とは、気合いの入った標語ではない。

 きれいな理念でもない。
 既存業界の中で、順位をひとつ上げることでもない。

 そうじゃない。新しい分野のNo.1をつくることだ。

 この分野なら、この会社だ。
 そう誇らしげに語られる新しい場所をつくる。
 それが、旗を掲げるということである。

 そして、旗を掲げた瞬間、会社の景色は変わる。

 誰に何を届けるのかが定まる。
 どんな仲間を集めるべきかが見えてくるし、会議で何を議論し、何をやめるべきかも変わる。
 すると、これまで想像もしなかったような大きな可能性が、現実の選択肢として立ち上がってくる。

 本書では、その道筋をひとつずつたどっていく。

 すでに会社の中にある強みを見抜き、それを分野No.1の旗へ変え、市場に届く形へ整え、言葉にし、最後は組織の動きにまでつなげていく。

 読み終える頃には、自社の見え方は、もう変わっているはずだ。
 なぜ、今まで気づかなかったのか。
 うちの未来は、ここにあったのか、と。

 ではその眠っていた可能性を、ここから解き放っていこう。

 2026年8月

神田昌典


【目次】

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