その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は赤井誠さん、田口和裕さんの『 “いつもの仕事”はAIで自動化する Claude Cowork × Microsoft 365 Copilot Cowork 実践ガイド 』です。

【はじめに】──その作業、まだ自分でやっていますか?

 筆者はこの3年間、年間100回を超えるセミナーや研修の壇上に立ち、延べ数万人のビジネスパーソンにAI活用の仕方をお伝えしてきました。

 チャットAI(AIアシスタント)が登場した当初、多くの方から聞いたのは、「思ったほど作業が速くならない」「便利ではあるが、面白いツールの域を出ない」という声でした。そして利用が広がり、日常業務の中にチャットAIが定着し始めると、今度は「AIを使っているのに業務があまり楽にならない」という声を耳にするようになりました。なぜでしょうか。

 もちろん、チャットAIによって文章作成や情報収集の効率は向上します。しかし、多くの人が1日の時間を使っているのは、それだけではありません。生産性を制約している本当の要因は、個人の作業スピードだけではなく、本来は任せられるかもしれない業務まで、私たち自身が抱え込み続けていることにあるのではないか──。そう考えるようになったことが、本書の出発点です。

 朝、出社してから退社するまでの1日を思い返してみてください。出社後のメールやチャットの確認と返信、今日の予定や進捗、連絡事項の共有、ToDoリストの作成・更新、スケジュールの再確認、CRMツールへの入力、競合調査や業界ニュースのチェック。そして業務終了後の日報作成、交通費の入力、経費精算や勤怠管理など、毎日のように繰り返されるルーティン業務だけでも相当な分量があります。

 私たちの労働時間の多くは、このような「誰かがやらなければならないが、必ずしも自分の手で行う必要はないかもしれない仕事」に費やされています。さらにチーム内での情報共有や調整、会議の準備やフォローアップなど、「一緒に働くこと」そのものにも多くの時間が使われています。

 チャットAIは個人の作業を支援するツールでした。しかし、今登場し始めている新しいAIは、その一歩先を目指しています。単なる相談相手ではなく、業務そのものを任せ、共に成果物を作り上げる存在です。

 その代表例が「Cowork」です。

 Coworkは、個人の作業だけでなく、チームや部署が協力して働くプロセスそのものを効率化します。AIを単なるツールではなく、共に働く仲間として迎え入れ、人とAIが役割を分担しながら成果を生み出していく。本書が目指すのは、その新しい働き方です。

 本書で取り上げるのは、米Anthropicの「Claude Cowork(クロード・コワーク)」と、米Microsoftの「Copilot Cowork(コパイロット・コワーク)」という2つの新しいAIサービスです。名前の通り、どちらも「一緒に働く」ことを目的に設計された、いわば「AIの同僚」と呼べる存在です。

 この「はじめに」では、なぜ今、AIとの関わり方を見直す必要があるのか解説するのに加え、チャットAIからCoworkへと進化する新しい働き方について、本書の方針と共にご紹介します。

チャットAIから「仕事を任せるAI」へ

AIに「相談する」時代

 2022年末に「ChatGPT(チャットジーピーティー)」が登場して以来、多くのビジネスパーソンにとってAIは「相談相手」でした。

 質問をすれば答えが返ってくる。文章の下書きを頼めば案を出してくれる。アイデアを投げかければ提案を返してくれる。こうした対話型の使い方は、この数年ですっかり定着しました。

 AIは非常に便利なツールでした。しかし、その一方で明確な限界もありました。

 AIが行うのは、基本的に「問いに対して答えを返す」ことまでだったのです。複数の作業を進めたい場合でも、その都度指示を出さなければなりませんでした。また、たとえ良い回答が得られても、その後の実務は人間が担当する必要がありました。AIの回答を文書に貼り付ける。内容を確認する。社内資料と照合する。体裁を整える。ファイルとして保存し、関係者へ共有する。こうした一連の作業は、すべて人間が行っていました。つまり、AIは優秀な相談相手ではあっても、一緒に働く存在ではありませんでした。仕事の主役はあくまで人間であり、AIはその隣で助言をする存在だったのです。

「相談する」から「任せる」段階へ

 ところが2025年後半ごろから、この関係が大きく変わり始めました。

 AIが「相談相手」から「仕事を任せる存在」へ進化し始めたのです。その中心にあるのが、AIエージェントと呼ばれる新しい仕組みです(第1章で詳説)。AIエージェントは従来のチャットAIとは異なり、複数の作業を計画しながら実行し、成果物の完成までを支援します。

 その代表例として注目されているのが、「Claude Cowork」と「Copilot Cowork」です。

 Claude Coworkは、指定したフォルダ内のファイルを読み取り、編集し、新しいファイルを作成しながら作業を進めます。人間は目的を伝えるだけで、AIが作業計画を立て、必要な情報を集めながら成果物を仕上げていきます。一方のCopilot Coworkは、「Microsoft 365」の環境で動作し、文書作成、メール整理、会議準備、Teamsへの情報共有といった業務を横断的に実行します。複数のアプリや手順にまたがる仕事を、AIが計画的に進められる点が特徴です。

 両者に共通しているのは、「質問に答えるAI」ではなく、「業務を引き受けるAI」であることです。

 人間は、「何をしてほしいか」と「どのような成果を求めるか」を伝えます。するとAIは、自ら段取りを組み、必要な情報を調べ、関連するファイルを開き、作業を進めながら成果物を作り上げていきます。

 これまでのAI活用は、人間が作業の中心となり、その都度AIに相談する形でした。しかしCoworkでは、人間は目的や方向性を示し、AIが実務の一部を担当します。「答えをもらって終わり」ではなく、「気がついたら依頼した仕事が形になっている」。

 今私たちは、そのような新しいAIとの働き方の入り口に立っているのです。

「相談」と「委任」は何が違うのか

両者の違いを表にまとめると、次のようになります。

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 この違いによって、AIを活用した仕事の進め方は大きく変わります。チャットAIでは、どれだけAIを活用しても、その後の作業の多くは人間が行わなければなりません。一方、Cowork型AIでは、実務の大部分をAIに任せることができるため、人間は「何を依頼するかを考えること」と「結果を確認して判断すること」により多くの時間を使えるようになります。

 本書でこれから繰り返し登場する「任せる」という言葉は、まさにこのCowork型AIへの委任を意味しています。

既に利用の9割以上は「普通の業務」

 AnthropicのClaude Coworkの利用実態分析によれば、既に利用の9割以上はソフトウェア開発以外の用途であり、一般的なビジネス業務が中心とされています。例えば、四半期の経費データの照合作業、商談記録をもとにした顧客向け資料の作成、蓄積されたファイルの整理といった、日常的な業務が利用の中心を占めています。

 これは重要な変化です。従来、AIはエンジニアや専門職のための道具というイメージを持たれがちでした。しかしCowork型AIは、むしろプログラミングの知識を持たないビジネスパーソンにこそ大きな価値をもたらします。

 ただし、成果を出すためには「任せ方」を知る必要があります。何をどのように伝えれば意図通りに動いてくれるのか。どこまで任せてよく、どこからは人間が責任を持つべきなのか。出てきた結果をどのように確認すればよいのか──。

 本書は、そうした「任せ方」を基礎から体系的に身につけるための一冊です。

この本を手に取る人へ

本書が想定する読者

 本書は、プログラミングの知識を持たない一般のビジネスパーソンに向けて書かれています。具体的には、次のような方を想定しています。

  • AIで業務効率化を実現したいが、プログラミングは学びたくない方
  • ChatGPTを試してみたものの、「もっと活用できるはずだ」と感じている方
  • 勤務先でMicrosoft 365 Copilotが導入されている、あるいは導入が予定されており、その活用を求められている方
  • 個人または部門単位でClaudeの業務利用を検討している方
  • 企業や組織でAI活用を推進する立場の方

 前提となる知識は、パソコンの基本操作とWordやExcelなどの一般的なオフィスソフトの利用経験だけです。プログラミングやITシステムに関する専門知識は必要ありません。本文中で専門用語が登場する場合は、その都度できるだけわかりやすく解説していきます。

なぜ2つのCoworkを1冊で扱うのか

 本書の大きな特徴は、Claude CoworkとCopilot Coworkの両方を1冊で扱っていることです。これには2つの理由があります。

 第1の理由は、多くの場合、利用するCoworkは「好み」ではなく「環境」によって決まるからです。勤務先の標準環境がMicrosoft 365であれば、最初に利用するのはCopilot Coworkでしょう。一方で、個人利用や部門単位での導入、あるいはMicrosoft 365に依存しない環境では、Claude Coworkが有力な選択肢になります。本書は、読者がどちらの環境にいても活用できるよう、両方のCoworkを取り上げています。

 第2の理由は、より本質的なものです。Claude CoworkとCopilot Coworkは製品こそ異なりますが、「AIに仕事を任せるための考え方」が非常によく似ています(似ている理由は後述)。業務を作業単位に分解すること、適切な指示を設計すること、成果物を確認すること、どこまでをAIに任せ、どこからを人間が担うかを判断すること……。こうしたスキルは、どちらのツールでも共通して求められます。

 片方で身につけた「任せ方」は、もう片方でも十分に応用できます。ツールの画面や操作方法は数年で変わるかもしれません。しかし、人とAIが協力して成果を生み出すための考え方は、長く使い続けられる資産になるはずです。

本書の構成と読み方

 こうした共通点と違いの両方を理解できるよう、本書の多くの章内は「共通パート」と「固有パート」の2つで構成されています。

 共通パートでは、Claude CoworkとCopilot Coworkに共通する考え方や活用方法を解説します。一方、固有パートでは、それぞれのツール特有の機能や操作方法を扱います。

 読み方は自由ですが、おすすめはまず共通章から読むことです。

 最初にCowork型AIの考え方や仕事の任せ方を理解したうえで、ご自身の環境に対応する固有パートへ進めば、最短距離で実務に活用できます。

 また、両方の環境に関わる方やツール選定に関与する方は、違いを読み比べることで、それぞれの特徴や違いをより立体的に理解できるでしょう。

本書で扱う範囲

2系統のCoworkの位置づけ

 ここで、本書が扱う2つのCoworkの位置づけを整理しておきます。

 Claude Coworkは、AnthropicのAIアシスタント「Claude」に用意された機能の一つです。主にデスクトップアプリで提供され、指定したフォルダ内のファイルを読み込んだり編集したりしながら業務を進めます。さらに、2026年にはウェブ版やモバイル版への展開も進み、パソコンを閉じた後もクラウド上で作業を継続できる仕組みへと発展しています。また、スキル(Skill)、プラグイン(Plugin)、コネクタ(Connector)といった拡張機能を備え、Microsoft 365、Google Workspace、Slackなどのさまざまなサービスと連携できます。

 一方のCopilot Coworkは、Microsoft 365 Copilotの機能として提供されています。

 Word、Excel、Outlook、Teams、SharePointなどのMicrosoft 365アプリと連携しながら動作し、企業のテナント(組織ごとのMicrosoft 365環境)の中で、既存のアクセス権限やセキュリティー設定を引き継いだまま業務を実行します。

 文書作成、情報収集、会議準備、社内コミュニケーションなど、複数の業務を横断して支援できる点が特徴です。

 ここで注目したいのは、両者の関係です。Microsoftは、Anthropicとの提携により、Copilot Coworkを提供しています。つまり2つのCoworkは、まったくの別物が偶然同じ名前を名乗っているのではなく、共通の発想と技術の系譜を持つ、いわばきょうだいのような関係にあります。Claude CoworkとCopilot Coworkは、どちらも単なるチャットAIではなく、人と協力しながら仕事を進める「AIの同僚」を目指したサービスです。本書がまず共通する考え方を学び、そのうえで各ツール固有の使い方を解説する構成を採っているのは、このためです。

比較の方針──優劣ではなく「違い」を整理する

 本書は、Claude CoworkとCopilot Coworkの優劣をつけることを目的としていません。

 というのも、多くの場合、どちらを利用するかは機能の好みではなく、勤務先や利用環境によって決まるからです。そのため重要なのは、「どちらが優れているか」を議論することではなく、「何が違うのか」を理解することです。本書では、次の4つの観点から両者の特徴を整理し、読者の皆さんが自分の環境に合った使い方を考えられるようにします。

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 それぞれの観点については、第1章、そして第5章以降で詳しく解説します。この段階では、「比較するときはこの4つの観点を見るのだな」程度に覚えておいていただければ十分です。

本書で扱わないこと

 本書の対象範囲を明確にするため、扱わない内容についても最初にお伝えしておきます。

 第1に、プログラミングやAPIを利用したシステム開発は扱いません。

 第2に、AIモデルの内部構造や機械学習アルゴリズムといった理論的な解説には深入りしません。

 第3に、できる限り多くの画面操作を紹介しますが、すべてを網羅したマニュアル本を目指しているわけでもありません。AIサービスの画面や機能名は頻繁に変わります。細かな操作手順を覚えても、数カ月後には古くなってしまうことがあります。本書が重視するのは、変わりやすい操作方法ではなく、変わりにくい「AIへの仕事の任せ方」です。

 なお、本書の内容は2026年7月時点の情報に基づいています。サービスの仕様や提供条件、料金体系は変更される可能性がありますので、最新情報は各社の公式サイトをご確認ください。

人間がやる仕事とAIに渡せる作業を分ける

「仕事」と「作業」を区別する

 本書で最も重要な考え方を紹介します。

 それは、「仕事」と「作業」を区別することです。

 私たちは普段、この2つを同じ意味で使いがちです。しかし、Cowork型AIを使いこなすうえでは、この違いを理解することが欠かせません。

 本書では、目的を決め、判断を行い、結果に責任を持つ活動全体を「仕事」と呼びます。一方で、その仕事の中に含まれる、手順として説明できる個々のステップを「作業」と呼びます。

 例えば、「週報を提出する」は仕事です。

 その中には、

  • 今週の活動記録を集める
  • 成果と課題を整理する
  • 所定の書式にまとめる
  • 内容を確認する
  • 提出する

 といった複数の作業が含まれています。Coworkが得意なのは、この「作業」の部分です。

 情報を集めること。整理すること。文書を作ること。決められた形式にまとめること。こうした手順化できる作業は、AIに任せられる可能性があります。対して、「何を報告すべきか」「内容が適切か」「最終的に提出してよいか」といった判断や責任までを完全にAIへ委ねることはできません。つまり、人間が担うべきなのは仕事であり、AIに任せるのは作業なのです。AI活用がうまくいかない人の多くは、この区別をしていません。自分が普段どのような作業を行っているかを整理しないまま、「週報を作っておいて」と仕事ごとAIに任せ、期待した結果が得られずに失望してしまいます。

 一方で、AI活用が上手な人は違います。まず仕事を細かな作業に分解し、その中からAIに任せられる部分を見つけ出します。そして、必要な情報や条件を伝えながら、適切に委任します。Coworkを使いこなすとは、難しいプロンプトを書くことではありません。「自分の仕事の中にある作業を見つけ、それを上手に任せること」です。

 本書では、この考え方を軸に、具体的な活用方法を学んでいきます。

AIに渡せる作業の3つの条件

 では、どのような作業ならAIに任せられるのでしょうか。

 Claude CoworkとCopilot Coworkのどちらにも共通する目安として、本書では次の3つの条件で考えます。

  • 手順を言葉で説明できること
     何を、どの順番で、どのように行うのかを、人に引き継げる程度に説明できる
  • 材料と成果物が明確であること
     入力する情報(例:読ませる資料)と、期待する成果物(例:Excelファイル)を具体的に示せる
  • 結果を人間が評価できること
     出来上がった成果物の良し悪しを、自分で判断できる

 この3つの条件を満たす作業は、Coworkに任せやすい仕事だと考えてください。もちろん、条件を細かく整理しなくても、AIが期待通りの成果を返してくれることはあります。しかし、安定して良い結果を得たり、継続的な業務改善につなげたりするためには、この3つの条件を意識することが重要です。

 中でも特に重要なのが、3つ目の「結果を人間が評価できること」です。どれほど見栄えの良い成果物ができても、その内容が適切かどうかを判断できなければ、安心して活用することはできません。

最終的に決定するのは人である

 一方で、AIが進化しても、人間が担い続けるべき役割があります。第1に、最終判断です。この資料を顧客に提出してよいか、このメールを送信してよいか、どの成果物を採用するかという意思決定は、人間が行う必要があります。第2に、責任です。AIが作成した下書きであっても、提出や送信を行った瞬間に、その内容の責任は利用者にあります。第3に、人との調整です。関係者の事情や感情をくみ取りながら合意形成を進めること、根回しや交渉を行うことは、依然として人間の重要な役割です。

 AIは作業を代行できます。しかし、判断や責任まで引き受けるわけではありません。

例:週報の作成を「任せる/行う」に分けてみる

 イメージをつかんでいただくために、週報作成を例に考えてみましょう。

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 このように分解してみると、多くの作業はAIに任せられる一方で、仕事の要となる判断は人間に残ることがわかります。

 AIにより作業時間は大きく減らせます。それにより、その分だけ人間は「何が重要か」「何を伝えるべきか」を考えることに時間を使えるようになります。

 これが、Cowork型AIによる仕事の基本的な考え方です。

 単純作業やルーティンワークはAIに任せ、人間は判断や調整、意思決定に集中する。本書が目指すのは、そのような新しい分業の形です。

任せ方は、活用しながら調整する

 ただし、「どこまで任せるか」は最初から決まっているものではありません。まずは小さな作業から任せ、結果を確認し、信頼できると判断したら少しずつ範囲を広げていく。この進め方は、新しく配属された同僚に仕事を任せるときとよく似ています。

 重要なのは、一度にすべてを任せようとしないことです。小さく試しながら経験を積み重ねることで、自分なりの「任せ方」が見えてきます。

 本書では、この境界線を安全に広げていくための方法を、準備、指示の出し方、自動化、そして拡張機能の活用という順で解説していきます。

 まずは第1章で、Coworkとは何か、そして従来のチャットAIと何が違うのかを、もう少し詳しく見ていきましょう。


【目次】

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