その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は志賀琢也(著)、川西里佳、上山俊佑(監修)の『 AIエージェント導入を任されたら読む本 AI基盤・設計パターン・運用の必須知識 』です。「本書が目指すこと」をお届けします。

【本書が目指すこと】

 ChatGPTのような生成AIは、多くの人にとって日常の道具になりました。次に企業が向き合うのは「AIエージェントを業務にどう導入するか」というテーマです。

 AIエージェントに関する情報収集をすると、RAG、ベクターDB、MCP、Multi-Agent、評価ツールといった言葉が並びます。一つひとつは聞いたことがあっても、「この構成で足りているのか」「自社にとって何を取捨選択すべきか」を判断するのは、容易ではありません。

 「自社の業務に適したAIエージェントの構成は、一般的にどのようなものが望ましいのか」「その構成を実現するためには、誰に何を依頼すべきなのか」。これまでのシステム構築であれば判断できていたこうした事項についても、AIエージェントに関しては、判断に必要な基本的な知識や理解がまだ十分に整理されていないことに気づきます。

 本書が目指すのは、AIエージェントの仕組みを体系的に理解することです。

 仕組みが腑(ふ)に落ちれば、自社の業務に対してどのようなAIエージェントの構成が望ましいのか、一定の見立てを持てるようになります。そのうえで提案書を読めば、書かれている内容の意味や妥当性も、自然と読み解けるようになるはずです。本書では、その順序を大切にしています。

 そのため本書は、今まさにAIに関する提案を受けてその評価を迫られている方や、これからAIエージェントの検討を始めるにあたって全体像をつかみたい方にも、最初に手に取る一冊としておすすめできます。

 なお、システム開発に携わってきた方が具体的な実装をイメージできるように、各所で少し踏み込んで記述している箇所がありますが、これまでに実装経験がない読者の方は読み飛ばしても全体像の把握には問題ありません。時間があるときに本書内のハンズオンを試しながら読解すると、より深く動作原理を理解できます。

本書が扱うこと

 本書は、AIエージェントの仕組みの理解を次の4段階で積み上げていきます。

1. AI基盤を体系的に理解する(第Ⅰ部):まずエージェントとワークフローの違い(制御の所在)を整理し、そのうえでエージェントを組み立てる要素(LLMインフラ、RAGとベクターDB、ツール連携、MCP)を全体像として押さえます。
2. 中身を手触りでつかむ(第Ⅱ部):最小のエージェントを実際に組み、手書きとフレームワークの実装を読み比べて、「中で何が起きているか」を体感します。
3. 典型構成を解剖する(第Ⅲ部):実務的な3つのエージェント構成を「解剖図」として読み解きます。
4. 運用要件を判断する(第Ⅳ部):評価、ガードレール、コスト、知識ベース運用を学び、本番運用の論点を自分の言葉で挙げられるようにします。

 第Ⅰ部から順に読むと、AI基盤の全体像から運用判断までを、段階的に積み上げられる構成です。

本書が扱わないこと

 すべてを自社で作り切るフルハンズオンや、特定製品の操作マニュアルは、本書の主眼ではありません。手を動かす場面は最小限に絞って構造の理解に充て、バージョンで変わる細かな手順や技術書の範囲を超える論点は、文脈として必要なところに触れるにとどめました。

 本書で大切にしていることは、「自分で全部作る」ことでも「提案の隅々までわかる」ことでもなく、仕組みを理解したうえで、自社に必要な構成と論点を判断できるようになるという姿勢です。

本書の読み方

 各章の冒頭には「この章の読み方」として、次の3つを示しています。どこに力点を置いて読めばよいかの道しるべにしてください。

■理解すること:その章で理解したい中心テーマ。
■手を動かすこと:実際に組んで確かめる範囲(手を動かすことがない章もあります)。
■この章では深入り不要:他章で扱うので、ここでは位置づけが分かれば十分なこと。

 また、各部の章リードには、その部の全体像を1枚にした「地図」を掲げ、「この章は地図のどこを扱うのか」を示します。迷ったら、この地図に立ち返ってください。

 読み進める順序は、第Ⅰ部から順にを基本としますが、急いで特定のテーマだけ押さえたい場合は、「読む順序ガイド」を使ってください。

 最後に、本書を通じて使う2つの言葉遣いだけ、先にお伝えしておきます。1つは「LLM(大規模言語モデル)」で、以降は単に「モデル」とも呼びます。もう1つは「エージェント」で、市場で広く使われる広義(ワークフロー型まで含む。本書のタイトルもこの意味です)と、モデル自身が段取りを握る狭義の2つの意味があります。本書で単に「エージェント」と書くときは、原則として狭義を指します。この区別は第1章で詳しく解説します。

 それでは、AIエージェントを動かす全体像を1枚の地図で見渡すところから始めましょう。


【目次】

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