その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は富永朋信さんの『 人がモノを買うしくみを言語化する “知ったかマーケター”からの脱却 』です。
【はじめに】
この本を手に取っていただいた、ということは、読者は何かしらの形でマーケティングに関連したお仕事をしておられるのではないか、と思われる。筆者は大学を卒業して以来35年間、一貫してマーケティングの仕事に携わってきているので、そんなまだ見ぬ読者に大いにシンパシーを感じるところである。
ので、一つ伺いたいのだが、「マーケティングが仕事です」という形で自己紹介すると、ちょっとうさん臭いものに対するような目で見られた、という経験はないだろうか。筆者は時折ある。
なぜ、マーケティングがそのように思われるのか理由を考えるに、その一つに横文字フレームワークや横文字略語の乱発があるのではないだろうか。
ポジショニング、ブランディング、コンセプト……
STP、3C、4P……
といった次第で、ちょっと考えただけでも枚挙にいとまがない。
一方で、これらのフレームワークはとても説明力が高く、筆者も若い頃、覚えるたびに自分の能力が拡張したような感覚を抱き、やたらと活用しようとしたものだった。
ところで、マーケティング関連のフレームワークの説明力は、上の図表のようなマーケティングの構造に由来するものである、と筆者は考える(図表A)。
マーケティングは、このようにいろいろな学問を横断的に結びつけるような形をしている。大きくは、人の心や組織の機序に迫る心理学や社会学、意思決定の機序に迫る経済学や行動経済学、本質の希求という性質がコンセプトやアイデア開発と共通する哲学、などなどといった具合である。
そして、マーケティングやそのフレームワークに触れると、このように非常に広範な分野のエッセンスに触れることができるので、前述のように自己拡張感が感じられる、というわけだ。
しかし、フレームワークとは、基本的に成功事例に共通する要素を、後づけで抽出・メタ化したものである。最大公約数的には役に立つが、個々の事例に完全フィットすることはそんなにはない。従ってフレームワークから出発するにせよ、自社および自社が属するカテゴリーとユーザーの関係性に合わせて、それを修正していく必要がある。
そのためには、フレームワークの本質は何か、それがなぜ機能するのか、といったレベルで腹落ちしている必要がある。いわば「ぐうの音も出ない」くらいにマーケティングを理解している必要があるのだ。
筆者は、そのための指南書を記さんと意気込み、本書を書き始めることにした。読者各位が面白くお読みいただければ、そして少しでも仕事の参考にしていただくことができたなら、望外の喜びである。
2025年9月 富永朋信
【目次】






