その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は内田大輔さんの『 経営戦略がわかる(日経文庫) 』です。
【まえがき】
この本は、経営戦略(以下、戦略)についてこれから学びはじめる人に向けて書かれた経営戦略論の入門テキストです。経営戦略論の全体像を体系立てて紹介していきます。
戦略は企業経営において欠かせないものであり、その必要性はかねてより指摘されてきました。たとえば、次の文章をご覧ください。
今日ほど経営戦略が必要とされる時はありません。多くの企業がリストラクチャリング、新規事業開発、技術革新、グローバル化といった、これまで経験しなかった大規模な「企業革新」に挑戦しています。…経営戦略なしに企業革新に向かうのは、ちょうど何ら見通しもなく、舵もない船で航海するようなものです。今日の激動する不確定な環境下では、企業を導く新たな羅針盤・海図を備えた経営戦略がまさに必要なのです。
こちらは一見、いまの時代に書かれたようにも思えますが、実は、バブル経済が崩壊する前の平成元年に出版された、奥村昭博・慶應義塾大学名誉教授の著書『経営戦略(日経文庫)』(日本経済新聞出版、1989年)のまえがきに書かれていたものです。
こうした戦略の必要性はいまでも変わりません。たとえば、コーポレートガバナンス・コード(2015年に策定、18年と21年に改訂)では、企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、取締役会において戦略を建設的に議論し(原則4―1)、その内容を主体的に開示していくこと(原則3―1)が必要であるとされています。
このことから、企業経営において、戦略を社内でつくるだけでなく、その戦略を社外のステークホルダーに積極的に発信していくことも求められるようになってきたことがわかります。その結果、私たちが企業の戦略について見聞きする機会は増え、より多くの人に戦略への理解が求められる時代になってきたといえるでしょう。
この本では、これまであまりなじみがなかった人でも、戦略への理解を深められるように、次のように章ごとに順を追って、戦略の基本をお伝えしていきます。
第1章では、戦略とはいったい何なのか、また、その良し悪しはどのように判断されるのかを説明し、戦略の考え方を示します。
第2章では、戦略の根底に流れる基本コンセプトである3つのC(顧客・競合相手・自社)と6つのE(規模の経済性・密度の経済性・ネットワークの経済性・深さの経済性・組織の経済性・範囲の経済性)を紹介します。これらの基本コンセプトを正しく理解することが、戦略を理解するための第一歩となります。
第3章では、戦略の4つの分析枠組み(STEEP、ファイブフォース、バリューチェーン、VRIO)を紹介します。これらを用いて分析することで把握される企業の現状は、戦略を策定するうえでの土台となります。
第4章では、戦略の3つの領域(事業戦略・全社戦略・国際戦略)における基本方針を紹介します。それぞれの領域ごとに企業が取りうる基本方針があり、その基本方針をベースに、企業は戦略を策定していくことになります。
この本を通じて、経営戦略の基本がわかるようになります。ただし、この本はあくまで入門テキストであり、「門」に「入」った後にも道は続いています。そこで、その先の道を進むための道しるべとなるように、最後にブックガイドをつけています。また、この本で取り上げたコンセプトやフレームワークについては、その原書や近年の研究成果を本文中の該当箇所に注を付して、巻末に文献リストとしてまとめています。さらなる学びのきっかけにご活用ください。
【目次】


