その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はアバナード株式会社 菅原允さん、大北真之さん、山岸大輔さん、山本学さん、王兆東さん、荻原裕之さんの『 Azure OpenAIエージェント・RAG 構築実践ガイド 』。「まえがき」をお届けします。

【まえがき】

 皆さん、AIと仲良くできていますか?そして、AIと歩む未来の可能性にワクワクしていますか?
 個人レベルでは、チャットAIアシスタント(例:ChatGPT、Microsoft Copilot)で情報収集し、チームレベルでは、コーディングAIエージェント(例:GitHub Copilot、Claude Code)を活用してアプリケーション開発を行うことが、もはや特別なことではなくなりつつあります。
 人間とAIの関係は、単なる「ツールとして使用する」関係を超え、「パートナーとして共創する」関係へと進化しています。AIが私たちの仲間や友人、そして優秀なビジネスパートナーとなる世界が、すぐそこまで近づいています。この変化の背景には、人間の代わりにAIが自ら考え、自律的に行動する「AIエージェント」という技術の飛躍的な発展が大きく影響しています。
 一方で、パートナーとしてのAIには、技術力だけではなく、「信頼関係」が不可欠です。私たちは、どうしてもAIに完璧を求めてしまいがちですが、完璧な人間が存在しないように、100%完璧なAIも存在しません。AIのめまぐるしい進化に合わせ、その能力と限界を適切に評価し、何を任せ、どこに人間の判断を介在させ、最終的な責任をどう負うのかを設計し続ける必要があります。この試行錯誤を繰り返すことこそが、これからのエンジニアに求められる価値の一つになるでしょう。
 本書では、このような状況に向き合うエンジニアの皆さんへのガイドとして、Azure Open AI ServiceをはじめとするマイクロソフトのAI技術を軸に、次世代AIアプリケーションの実践的な構築方法や考え方について紹介します。特に、エンタープライズ領域でニーズが急増している、RAG(Retrieval-Augmented Generation)、AIエージェント、エッジAIについて焦点を当て、Agentic RAG、マルチエージェント、MCP(Model Context Protocol)といった最新技術動向も踏まえながら、実際の開発現場で培った知見やノウハウを惜しみなく提供します。
 AIが私たちのパートナーとなり、新たな価値を共に創出していく「Agentic World」は、すでに始まっています。皆さんがその未来を担うための力強い一歩を、本書と共に踏み出せることを心から願っています。

対象読者

 本書は、AIアプリケーション開発の基礎を理解し、次のステージへ進もうとしているAIエンジニアを対象としています。特に、次のような方を想定しています。

• 中級レベルを目指すエンジニア
 ◦ AIアプリケーション開発の基礎を理解し、RAG、AIエージェント、エッジAIといった、より実践的なエンタープライズ開発にチャレンジしたい方
• マイクロソフトの最新AI技術を活用して開発したいエンジニア
 ◦ Azure OpenAI ServiceやAzure AI Foundryなど、マイクロソフトのAI技術を活用し、最新技術情報をキャッチアップしながら、開発スキルを磨きたい方
•「Agentic World」の実現に貢献したいエンジニア
 ◦ AIを単なるツールとしてではなく、自律的に協働するパートナーとして捉え、共創できる未来を創り出したいと考えている方

 なお、本書では、プログラミング言語としてPython、クラウドサービスとしてMicrosoft Azureを主に使用します。これらの基本的な知識があることを前提として進めますので、あらかじめご了承ください。

本書の構成

 本書は、2023年12月に出版された『Azure OpenAI Service実践ガイド』(日経BP)の姉妹書です。特に、「Microsoft Ignite 2024」(2024年11月開催)や「Microsoft Build 2025」(2025年5月開催)でマイクロソフトにより発表された最新技術動向を可能な限り反映しています。
 本書の構成は次のとおりです。

 • 第1章 Agentic Worldに備えろ!:人間とAIがパートナーとして協働する「Agentic World」へのパラダイムシフトを概観したうえで、この変化を支える主要なAI技術要素とマイクロソフトのAzure AIサービスの概要を紹介します。
 • 第2章 AI Foundryおよび環境構築:マイクロソフトの統合AI開発プラットフォームである「Azure AI Foundry」について、全体像、豊富な機能、そして、実際に開発を始めるための環境構築手順を詳しく解説します。
 • 第3章 RAG:外部データ(ナレッジ)と連携し、AIの回答精度を向上させる重要な技術である「RAG」を深く掘り下げます。基本的なRAGの仕組みから、Advanced RAGやAgentic RAGといった応用まで、さまざまなアプローチと実装ポイントを学びます。
 • 第4章 AIエージェント:Agentic Worldの中核となる「AIエージェント」について、概念から実装まで詳しく解説します。Azure AI Foundry Agent Serviceを使用したAIエージェント、AutoGenを使用したマルチエージェント、AIエージェントからのツール呼び出しを標準化するMCP(Model Context Protocol)を中心に実践的な開発手法を紹介します。
 • 第5章 エッジAI:SLM(Small Language Model)を使用して、エッジデバイス上でAIモデルを実行する方法やアーキテクチャを紹介します。特に、Foundry LocalやMicrosoft Oliveを使用した実装例を取り上げます。
 • 第6章 責任あるAI:AIエンジニアとして押さえておくべき、責任あるAIの考え方について紹介します。実現するAIサービスの一例として、Azure AI Content Safetyを取り上げます。

ソースコードについて

 本書で紹介するPythonなどのソースコードは、GitHub上のサポートサイトで公開しています。本書籍およびサポートサイトで提供するソースコードは、アバナード株式会社の著作物です。

『Azure OpenAIエージェント・RAG構築実践ガイド』サポートサイト
https://github.com/AvanadeJapanPublishingQuery/AzureOpenAIAgent-RAG-PracticalGuide-book/

改善事項がある場合は、Issueやプルリクエストでフィードバックいただけると幸いです。

謝辞

 本書の執筆は、AI技術が数日後には陳腐化してしまうほど目まぐるしく進化する中での挑戦でした。執筆中に発表される新しい技術に、何度も原稿の見直しを迫られましたが、多くの方々の温かいご支援のおかげで、こうして皆さんに本書をお届けできることを心から嬉しく思います。
 特に、日経BPの安東一真さん、田部井久さんには、企画から完成に至るまで、技術トレンドの激しい進化に伴う度重なる執筆内容の変更に、柔軟かつ粘り強くご対応いただきました。そのご尽力に、深く感謝申し上げます。
 また、本書の技術的な正確性と品質を確保するため、厳格なレビューと貴重なフィードバックをくださった荻原裕之さん、崔志評さん、森田将司さんにも深く感謝いたします。皆さんの専門的な知見がなければ、本書のクオリティをここまで高めることはできませんでした。
 そして、私たちの挑戦を温かく見守り、支えてくれたご家族の皆さんにも、感謝を伝えます。
 最後に、本書を手に取ってくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。本書が皆様のAIエンジニアとしての新たな一歩を後押しすることを心より願っています。

2025年8月 執筆者一同
アバナード株式会社
菅原允/大北真之/山岸大輔/山本学/王兆東/荻原裕之


【目次】

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