その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は片岡裕司さん、山中健司さんの『 なぜ部下は不安で不満で無関心なのか メンバーの「育つ力」を育てるマネジメント 』です。
【はじめに】 ◎“上司であることが難しい時代”の新しいマネジメント
皆さん、こんにちは。株式会社ジェイフィールの片岡裕司です。組織開発、人財育成のコンサルタントとして20年近く、職場のさまざまな課題に向き合ってきました。
そんな私がここ数年、強く実感するのが、働く人の意識、職場の空気の変化です。
以前は職場にいろいろな“感情”がありました。ギスギスした不満の感情もあれば、イキイキとした活力のある感情もありました。不満の多い職場はいい場ではありませんが、その奥底にはよい職場に変えたいという活力があるともいえます。
しかし今、急増しているのは、「安心をつくるため、本音を隠す職場」です。
そうした職場は、関係性は悪くないけれど、どこか距離があります。見えない壁があって、働く人は気軽に真面目な話ができない、1on1を重ねても真の対話ができない孤独な状態に置かれています。
第一線の管理職(課長、マネジャー)にとっては、受難の時代でもあります。
価値観や考え方の異なる部下(メンバー)に丁寧に寄り添い、エンゲージメントを高め、キャリア自律を促し、離職率を下げ、業績目標を達成する。会社からは、まるでジャグリングのような複雑なマネジメントを求められます。働き手不足が顕著になり、会社主導での考え方が通用しなくなっている中、部下指導がハラスメントととられたり、メンタルヘルスの問題に発展する可能性も高まっています。
こうした時代背景にプラスして、昨今ブームとなった「心理的安全性」が本質と異なる形で広がったことも、「本音を隠す」職場の増加に影響しているでしょう。
不満の背景にあるのは不安。それが高じて無関心
これは、私たちジェイフィールが2024年5月に実施した「『人・組織・コミュニティ』に関する調査(「職場の分断調査」)」でも実証されました。
上司に本音を話せる人は全世代平均でわずか18%。逆に部下に対して本音で話せている上司は17%と、さらにそれを下回る数字となっています。8割以上の人が、本音を隠して職場で過ごしているのです。これがどれほど不健全でストレスフルなことであるか。当事者である皆さんならよくおわかりのはずです。
そんな厳しい環境の中で「それでもなんとかしたい」と思っている自分をほめてあげてください。それほどマネジメントという仕事の難易度が上がっているのです。
本書のタイトル『なぜ部下は不安で不満で無関心なのか』には、職場でお互いの感情が見えなくなっているリアルを伝える意図があります。
誰も本音を話してくれない。だからどんな感情を持っているかもわからない。だけど問題になるのが怖くて一歩踏み出せない。そんな負の連鎖があちこちで起き始めています。
コンサルティングの現場でメンバーの方々の声を聴いていくと、以前は会社、職場、仕事の「愚痴」や「不満」がすぐに聞こえてきました。しかし今は最初、多くの人が「無関心」「無反応」を装います。「別に……」というやつです。そこから丁寧に深掘りすると多くの人が「不満」を口にし始め、さらに深掘りするとその奥底に「不安」という曲者が見えてきます。多くの人が「不安」に耐えられなくなり、「無関心」を装っているのです。
この「不安」という化け物を退治することが、さまざまに横たわるマネジメントの問題を一気に解決するカギとなります。
メンバーが自走するために必要な5要素
「不安」なメンバーに、リスキリングやキャリア自律の話をしても、もっと不安になるだけです。危機を煽(あお)るようなメッセージは、この時代には逆効果しかありません。
人生100年時代、技術進化が速い中で、多くの人が猛烈にキャリアに不安を覚えています。だからこそ、目の前の仕事で成長している。そして今後どのような環境になっても自分自身の成長を通じて乗り越えていける。シンプルですが、こんな実感をつくり出せるとメンバーは自走し始めます。
新しい環境には新しいマネジメントの方法論が必要です。
本書では、まず序章、第1章で時代の変化とメンバーの心のうちを解説、第2章~第6章で新しいマネジメントの方法論を次の5つのステップで紹介していきます。
<ステップ1> 「目標のすり合わせ」ではなく「目的を育む」
<ステップ2> 「強み」ではなく「持ち味」を活かす
<ステップ3> 「内発的動機」ではなく「内面化動機」を引き出す
<ステップ4> 「成功思考」ではなく「成長思考」を育む
<ステップ5> 「明確に目標を絞る」のではなく、多様な視点から「可能性」を広げる
この方法論は、多くの企業で採用いただいている私たちの人財育成プログラムをベースに、ここ数年の職場、働き方、キャリア意識の変化を取り入れてパワーアップしたものです。
これを取り入れることで、本音で話ができる関係性が生まれ、メンバーの自己肯定感が育まれ、モチベーションが上がり、壁を乗り越える力、自分を成長させ続けたいという気持ちが生まれます。困難を極めていたマネジメントがとても楽しくなってきます。
また、第7章では、関わり方が難しいメンバーへの接し方を、コーチングと臨床心理学の視点を交えケーススタディとしてまとめました。目の前に〝困ったメンバー〟がいて頭を抱えている方は、まずここから読んでいただくと突破口が見えるかもしれません。
私たちジェイフィールの仕事は、働く人と組織を「元気」にすることです。
「元気」にするというと少し軽く聞こえるかもしれませんが、実はとても難しいことです。「業績をよくする」とか「組織を強くする」というフレーズを掲げる同業者もいますが、私たちは、一人ひとりの社員を元気にし、そこから職場の関係性をよくし、結果、強い組織をつくり上げ、最後に業績につなげていくということにこだわっています。
さあ、一緒に取り組んでいきましょう。必ず大きな成果につながるはずです。
2024年10月
片岡裕司
【目次】






