その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は髙木裕仁さんの『 その仕事、AIには無理です。 』です。「まえがき」をお届けします。

【まえがき】

 「メルマガ配信を自動化したい」「社内資料をもとに提案書を作成させたい」「お客様からの問い合わせに24時間対応できる仕組みが欲しい」……といったリクエストを耳にすることが増えてきました。AI(人工知能)はすでに私たちの生活に入り込み、日常生活や業務などのあらゆることを効率化してくれています。しかし、実際に導入してみると、「思ったほどの精度が出ない」「期待したようには使えない」と戸惑う場面も少なくありません。

 そういった背景には、AIに対する過度な期待と誤解があることがほとんどです。「AIを使えば需要なんて簡単に予測できるんだろう」「提案書くらいAIに任せればいいじゃないか」……そんな言葉を、上層部や管理職の何気ない一言として耳にすることもあるでしょう。こうした発言は、AIという言葉が急速に浸透するなかで、その万能感だけが独り歩きしてしまった結果といえます。

 AI導入の第一歩は、実は地道な作業の積み重ねです。データの整理、プロンプト設計、業務フローの見直しなど、人の手で環境を整えなければなりません。その実態を知らないまま「AIを使えば一瞬でできるはずだ」と期待しても、現実はそう簡単ではないのです。

 私は、こうしたギャップ、つまり、AIの「できること」と「できないこと」の境界を曖昧にしたまま現場で活用しようとしていることこそが、混乱の原因だと考えています。

 近年、「AI」という言葉は、私たちの生活にすっかり馴染みのあるものになりました。スマートフォンの音声アシスタントやネットショッピングのおすすめ機能、さらには医師の診察のサポートや、自動車を運転する際の安全支援システムなど、AIは幅広く活用されています。しかし「AIとは何か」と問われると、明確に答えるのは容易ではありません。それは、AIには厳密な定義がなく、時代とともに進化してきたからでしょう。

 初期のAIは人間が与えたルールに従って動作する仕組みでしたが、未知の状況には対応できませんでした。その限界を超えるべく登場したのが「学習するAI」です。膨大なデータからパターンを見つけ出し、自ら判断できるようになったことで、画像認識や音声理解などが飛躍的に進歩しました。

 さらに最近では、AIが「理解」だけでなく「創造」に踏み出しています。文章や画像、音声を新たに生み出す「生成AI」です。ChatGPTに代表される大規模言語モデルや、DALL·E、Stable Diffusionといった画像生成AIがその典型で、人とAIが共に表現を創り出す時代が始まっています。生成AIは創造の主体を奪うものではなく、人間のアイデアを形にする「共創の相棒」として力を発揮します。本書では、この生成AI、特に文章生成を担う大規模言語モデルを中心に取り上げ、その可能性と限界を探っていきます。

 第1章では、「AIで何ができるのか」という原点に立ち返り、生成AIがビジネスシーンで活躍する理由と、実際の活用例を見ていきます。

 第2章では、ChatGPTなどの大規模言語モデルを基に、プロンプトエンジニアリング、RAG、AIエージェント、ファインチューニングといった、生成AIを活用するうえで欠かせないキーワードを取り上げます。

 第3章では、本書のタイトルでもある「その仕事、AIには無理です。」を主題に据え、生成AIを利用する際に直面する壁を、具体的な事例を交えて掘り下げます。

 そして第4章では、AI時代における成功の鍵を明確にし、現場での生成AIの動向を踏まえながら、「生成AIに任せてよい仕事」と「任せてはならない仕事」という二つの視点から整理し、その境界線を明らかにします。

 本書が、生成AIを活用するうえでの道しるべとなり、読者の皆さまの業務や意思決定を支える一助となれば幸いです。

 2025年10月

髙木裕仁


【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示