その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は横山浩実さんの『 まやかしDXとの決別! 生成AI時代を勝ち抜く真のデジタル事業変革 』です。

【はじめに】

 経営革新のキーワードとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)が頻繁に取り上げられるようになって5年ほどが経過したが、現在も日本企業の最重要課題である。「2025年の崖」を意識して、老朽化したインフラの入れ替えに精力を費やす企業も多い。このような取り組みはこれまで一定の成果を上げているが、日本全体としてはDXに対する疲労感が高まり、システム刷新に伴うトラブルも多発し、デジタル活用に対して積極的になれない企業も少なくない。

 ERP(統合基幹業務システム)の刷新プロジェクトでトラブルが生じ、商品流通が途絶する事件が発生したことをご記憶の読者も多いだろう。サイバー攻撃により「身代金」を要求され、サービス停止に追い込まれた事件は、多くの企業に恐怖を植え付けた。クラウド移行を進めたが費用やセキュリティなどの問題により、オンプレミス(自社運用)回帰を余儀なくされた事例もある。

 生成AIに対しても、この驚くべき技術を使ってどのようにビジネスを革新すべきか、その解を見出せず、事業での本来業務とはほど遠い領域での試行的な利用にとどまっている企業も少なくない。このような背景から、DXに対する懸念は高まり、リスク過敏とも言える対応が増え、本来あるべき業務プロセス改革には手を付けず、真のDXを回避して、単純なインフラの入れ替えなどを「DXの成功」と見なす向きもあるようだ。

 しかし、今こそ、そうした「まやかしDX」と決別する!と宣言し、真のDXを再始動すべきときである。企業全体がビジネスを進化させるための手段としてDXを推進することが求められている。デジタルをビジネス革新の手段にしない時代は終わりを迎え、現場リーダーが中心となって真の事業変革を遂げる時代になっているのだ。

 これからのDXの主役になる現場リーダーは、改革の痛みに直面しながらも、切り捨てる勇気を持つことが求められる。DXの推進には、従来の業務プロセスや組織構造を大胆に見直し、これまでの慣習や前例踏襲の判断で生き残っているプロセス、アナログ処理のために確保していたリソースなどの不要な部分を切り捨てる活動を伴うからだ。業務の効率化・筋肉質化を図り、経営資源を本当に重要な部分に集中させることこそが、ビジネス進化の基盤となる。

 DXに近道はない。愚直かもしれないが、失敗リスクをコントロールし、正しい手法で取り組み、外部リソースを適切に利用し、生成AIなどの先進技術を適切に活用することが王道であり、それにより、必ずや成果を出すことができる。そしてその際には、従業員全体のマインドセットの変革も同時にすべきだ。DXは単なる技術の導入ではなく、企業文化を変革させることでビジネス革新を図るものである。従業員が新しい技術を積極的に受け入れ、創造的に活用する環境整備をあわせて行う必要があるのである。

 本書は、デジタル化による経営革新、事業変革を取り巻く厳しい状況を直視し、真のDXを成功させて競争優位を獲得するための具体的な方法論を提供するものである。本書を通じて、現場リーダーがDXの戦略および戦術を学び、現場の抵抗やリソース不足など多くの企業に共通する障害を乗り越え、自らの手で成功に導くための道筋を見出すことを期待している。


【目次】

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