その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小谷賢さんの『 教養としてのインテリジェンス エピソードで学ぶ諜報の世界史 』です。

【はじめに】

 本書は古今東西のインテリジェンス、つまりスパイなどの秘密情報活動について記したものだ。インテリジェンスの定義は本書の最初でも説明しているが、基本的には国家が収集する秘密情報とそのための活動のことであり、現在も世界各国が行っている。本書内では世界中で行われているスパイ活動や通信傍受、偵察衛星による情報収集、さらにはウクライナにおけるインテリジェンスの現状等について概観している。

 インテリジェンスは、古くはスパイによる活動がメインであった。スパイは人類の歴史の中で最も古い職業の一つに数えられるが、人類が社会生活を営むようになれば、対立する集団の情報を得ようとするのは自然なことであろう。記録に残る最古のスパイは、紀元前1274年の古代エジプトとヒッタイト間の戦争に登場している。旧約聖書にもかのモーセが斥候を送り、情報を収集していた様子が描かれているし、現代でも広く読まれている『孫子』にもスパイの役割について詳細な記述が残っている。

 時代が下ると、スパイだけに頼るのではなく、暗号解読や写真、偵察衛星からサイバー空間における情報収集まで、その手段は多岐にわたる。この世界では情報を取ったものが勝者となるので、各国各組織はあらゆる手段を使い、相手の秘密を知ろうとし、他方で自分たちの秘密を守ろうとする。時には相手に偽情報を摑(つか)ませ、誤った判断を導かせる、といったことも行われる。現在、サイバー空間における偽情報拡散について問題視されているが、インテリジェンスの歴史を見れば、手段は多少違えど、過去から延々と行われてきたことの延長に過ぎない。言ってしまえばインテリジェンスとは智慧の戦いであり、この世界では騙(だま)されるほうが悪いのだ。

 本書はそのような人類史におけるインテリジェンスの営みについて、国別、時代別にまとめたものである。各国篇は日英米露中イスラエルといった、インテリジェンスの世界ではよく知られている国々を取り上げた。歴史篇では、古代ギリシャや『孫子』から東西冷戦期を経て、現在進行中のロシアのウクライナ侵攻までのインテリジェンス活動について記した。これら国やトピックの選別は、筆者の主観的判断によるものだが、それぞれの項目は独立しているのでどこから読んでいただいても構わない。

 もちろん本書では、日本の過去、現代、そして将来のインテリジェンスはどうあるべきかについても論じている。古今東西のインテリジェンスの営みから、我が国が模範とすべき事例は多々存在しており、本書はそのような問題意識からも執筆されている(文中敬称略)。

【目次】

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