その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は鈴木貴博さんの『 戦略思考トレーニング2(日経文庫) 』です。
【はじめに】
「もっとたくさん戦略の話をしてほしい」
前著『戦略思考トレーニング』を読んだ友人、知人から、異口同音に同じ要望を寄せられました。いや別に怪談の本じゃないのだから、読み終わったから次の話が聞きたいというのも変じゃないか、とも思ったのですが、よくよく話を聞けば、もっと戦略の話が必要だというのは本当のようです。
『戦略思考トレーニング』は、普段なかなか使わない戦略思考力を日常の中で鍛えていくために、クイズ形式の問題を見ながら、発想を広げて答を考えていくという構成で編集した、思考力のトレーニング本です。
この本では、日常の仕事の中で、なんらかの形で戦略を立案する必要がある仕事に就いている読者を対象に、戦略思考力を鍛えるにはどうすればよいのか、実践的なトレーニング方法を提示しました。
その方法とは、①常識を取り払う、②問題を論理的に分解する、③柔軟に発想する、④多くの事例から類推する、という4つのステップです。
優秀なビジネスパーソンの場合、日常的な仕事では、Ⓐ常識的に、Ⓑ定型的に生産性よく、Ⓒ同じ分野で専門性を高めて、仕事を極めていくことが多いものです。それはいい仕事をするためには重要なことでもあります。
しかし日常でいい仕事をしている人ほど、今度は四半期に一度、あるいは年に一度、じっくりと戦略思考をしなければならないときに急に、
「常識を取り払って考えよう」
と言われても体が、いや頭がついていかないものなのです。
ですから仕事で使える戦略思考を鍛えるためには、いい仕事をする日常の中で30分、あるいはせめて10分程度で構わないので、意識的に非日常的な思考力をトレーニングする必要があるのです。
戦略思考のトレーニングは、たとえばこのような簡単な販売戦術について考えることから始めることができます。
(発想力の訓練の問題です。答を当てにいくのではなく、できるだけたくさんの可能性〈最低でも3つ〉を思いつく訓練をしてみましょう。消費者におまけ付きの商品を『欲しい!』と思わせるための工夫とはいったい何でしょうか?)
■おまけの付いていない商品を一部残しておく
きっちりと仕事をこなすという観点で考えれば、売り場に出ている商品すべてにおま けを取り付けるべきなのでしょうけれども、それよりも棚の後ろの方の商品にあえてお まけを付けずにおく方が商品がよく売れるそうです。その方が消費者が「あと少しでお まけが終わってしまう」と思って買い急ぐのですね。実際は販売員がお店を巡回してい て、おまけ付きの商品が売れたらまた残りの商品におまけを取り付けていくのです。
さて、この問題を解けた人も解けなかった人もいることと思います。
食品メーカーや消費財メーカーの会社に勤務されている方の中には“おまけを付ける際にわざとおまけの付いていない商品を残しておく”という販売戦術は当然のこととして知っているという方もいらっしゃったかもしれませんね。
しかしそうではない仕事をされている方にとっては、違う世界で行われている変わった戦術ということで、目からうろこが落ちたという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、通常のクイズの本なら答が当たった、ないしは外れたで一喜一憂して、あとは次の問題に進んでいただいて構わないのですが、それではもったいないというのが戦略思考トレーニングのコンセプトです。
最低でも3つの可能性を考えてくださいといいましたが、皆さんはどうでした? 3つ違う答を考えつくということが、まず戦略思考のトレーニングの第一歩です。本当の答とは違っていても、
- おまけがみんな前を向くように陳列する(陳列の基本ですね)
- 歌を歌いながら陳列する(注目を集めましょう)
- 朝一番で陳列する/夕方の混雑する時間帯に陳列する(なんか効果ありそうですね)
- わざと間違えてライバル会社の商品を床に落とす(これはよくないですねえ)
といったように、ちょっとピント外れで構いませんから、たくさんの可能性を考える訓練をすることが重要なのです。
そしてそのうえで、自分にはない常識としての答を読んで、目からうろこが落ちて、その事例が自分の知識の一部になる。この繰り返しを行うことが戦略思考力を高めるトレーニングになります。
日頃の常識にはない問題に少しずつふれていくことで、日常業務の中で凝り固まった常識的な脳みそが少しずつほぐれてきて、ほどよい戦略思考の準備が整う、というのが『戦略思考トレーニング』の意図なのです。
ところで、この『戦略思考トレーニング』はコンパクトなサイズで読みやすいこともあって、発売後、毎日少しずつ戦略思考のトレーニングをし続けても、2カ月ほどで読み終わってしまうという問題が出てきました。
常識を超えた戦略発想ができるように脳を鍛え始めたところで、トレーニングが終了するのは困る。「だからもっと戦略の問題を聞かせてほしい」というのが、冒頭で紹介した、私の周囲の読者からの切実な要望だったのです。
そこでその期待に応えるべく、常識を超えた戦略の問題を新たに51問集めました。前作を発売してわずか4カ月で続編を発売するのは、本を書くという意味では結構大変な仕事なのですが、今回はそんなことは言ってはいられません。幸いにして戦略の問題のネタだけは30年近い経営コンサルタント人生を通じて、山ほど在庫が準備されています。
今回もできれば1日1問ずつのペースで、じっくりいろいろな可能性を考えながら、急いで答を見るのではなく、戦略思考の幅を広げる訓練をするつもりで問題に取り組んでいただければと思います。
さらに、ひとつひとつの問題は今回も“話題としても面白いもの”を中心に集めていますので、営業の仕事をされている方などは、読み終わった問題を営業の場面での話題のひとつとして使っていただくこともできると思います。
さあ、新しい戦略の問題をお待ちいただいていた方にはお待たせしました。戦略思考のトレーニングのパート2に、ぜひ挑戦していただきたいと思います。
【目次】




