その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は増岡宏紀さんの『 コミュニティマーケティングは「巨人の肩」に乗れ UGCと指名検索が増え続けるSNS活用の新常識 』です。

【はじめに】

「企業発コミュニティ」の限界

 日本国内は少子高齢化が加速し、様々な産業で市場が縮小に向かっています。新規顧客を獲得するためのコストが高騰する中、「コミュニティマーケティング」という言葉が、マーケティング業界でも注目を浴びるキーワードの一つとなっています。コミュニティ運営やファン化施策によって既存顧客のロイヤルティを高め、顧客1人当たりの売り上げを伸ばしていくことが、ますます重視されています。

 この背景には、従来の広告手法の限界もあります。日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が2025年2月に実施した「2025年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」によると、「インターネット広告が信頼できる」と回答した人はわずか21.6%にとどまりました。

 一方で、多くの消費者が信用しているのは「友人・知人からの推奨」です。24年12月にホットリンクが行った「クチコミ投稿の経験や購買への影響に関する調査」でも、商品やサービスを購入(利用)する際に、最も参考にする情報として「家族や友人など、知り合いによるクチコミ」が35.8%でトップとなり、身近な人からの情報が強い影響力を持つ実態がうかがえました。

 こうした状況を受けて、多くの企業が「顧客との深い関係性構築」「ファン同士のつながり強化」「エンゲージメント向上」を掲げ、自社独自のコミュニティづくりに乗り出しています。

 しかし、このアプローチには大きな落とし穴があります。

 私たちがSNSマーケティング支援を行う中で目にするのは、多額の予算を投じてコミュニティサイトを立ち上げたものの、成果につながらず、苦戦している企業の姿です。結果として、注力度合いの低下とともにアクティブユーザーが減少し、1年後には事実上の休眠状態に陥ってしまうケースが少なくありません。

 なぜ、これほど多くの企業が失敗に終わるのでしょうか。その答えは、ゼロから自社専用のコミュニティを立ち上げ、熱狂的ファンを育てるという発想そのものにあります。この方法は、あらゆる商材で通用する魔法の杖ではありません。むしろ相性の良い商材は限られています

 限られた可処分時間の中で消費者を新規コミュニティに招き入れ、継続的に参加させるハードルは想像以上に高いのです。加えて、少数の顧客のロイヤルティ向上に成功しても、事業全体への影響は軽微にとどまることが少なくありません。

 もちろん、ファンコミュニティの運営で成果を上げている事例が存在するのも事実です。ただし、それらの多くは体力のある企業がコミュニティ内で大規模なイベントやキャンペーンを継続的に実施することで成り立っており、自走する施策というよりも、プロモーション施策の延長線上にあります。予算に余裕がない企業が同じことを実行するのは、現実的には難しいでしょう。

 では、コミュニティマーケティングやファンマーケティングは、わざわざ自社でコミュニティをゼロからつくり、継続的に資金を投下しなければ実施できないのでしょうか。そんなことはありません。本書で提案するのは、ゼロから立ち上げるのではなく、すでに存在し活性化しているSNS上のコミュニティに「お邪魔する」という考え方です。

 本書では、高い熱量を保ちながら自律的に活動している大規模なコミュニティを「巨人」と呼び、その“肩”に乗ることで成果を得る方法を解説します。ご存じの通り先人たちによる成果や発見を土台とし、その上に立つことで新たな成果や視座を獲得し、積み重ねていくことを「巨人の肩に乗る」といいます。その考え方をコミュニティマーケティングに取り入れようというのが狙いです。

 ホットリンクが取り組んできた10年以上に及ぶソーシャルメディアマーケティングでの知見と、数百社の支援で蓄積した実証データを基に、その具体的な実践方法について全7章にわたって紹介します。

 第1章「コミュニティとは何か?」では、企業が誤解しがちな「ファンサイトづくり」や「囲い込み型」の限界を明らかにし、コミュニティの本質を掘り下げます。参加者同士の関係性と時間の積み重ねで成り立つ構造を示し、プライベートグラフ/ソーシャルグラフ/インタレストグラフという3つの軸で整理します。

 第2章「なぜ『既存のコミュニティ』に入り込む方が圧倒的に合理的なのか」では、ゼロから人を集める難しさと既存のコミュニティに入り込む合理性を解説します。消費者の限られた可処分時間や関心の分散を前提に、第一想起・アテンション・UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の重要性を説いていきます。

 第3章「コミュニティで発話を増やす思考法」では、UGCを起点に自然な会話が購買や拡散につながるプロセスを整理します。ホットリンクが提唱する購買行動モデル「ULSSAS(ウルサス)」を軸に、商材特性ごとの向き不向きや投資判断の基準を示します。

 第4章「狙うコミュニティを考える前に──ポジショニングの重要性」では、コミュニティ選定の前提となる自社のポジショニングを明確にするための視点を解説します。3C(市場・顧客、競合、自社)分析やCEP(カテゴリーエントリーポイント)を使って、市場での立ち位置と戦略の方向性を明確にします。

 第5章「狙うコミュニティを特定する方法」では、実際にコミュニティを特定する具体的な手法を取り上げます。SNSでのエゴサーチから無料ツールによる仮説立て、有料ツールを用いた高度な分析までを段階的に整理します。

 第6章「コミュニティに『お邪魔』して売り上げアップを実現する方法」では、特定したコミュニティに対して、売り上げアップを実現するための実践的な手法を解説します。狙うべきコミュニティと訴求内容を明確にするフレームワーク、インフルエンサー選定の基準、自社ブランドのUGCを増やす具体的な施策など、成果につなげるポイントを掘り下げます。

 第7章「コミュニティマーケティングの成功を阻む、SNS活用の落とし穴」では、SNSを活用してコミュニティにアプローチする際に企業が陥りやすい典型的な失敗パターンを紹介します。これまでの学びを成果に結び付けるため、押さえるべき注意点を明確にします。

 「つくるな、乗れ。」

 この言葉を胸に、新しいコミュニティマーケティングの世界へ踏み出しましょう。コミュニティもSNSも活用する目的は、「売り上げを伸ばすこと」です。巨人の肩に乗る発想で、成果への最短ルートを歩みましょう。新たなマーケティングの扉が、今まさに開かれようとしています。

【目次】

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