その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は萩原学(著)、木村博之(監修)の『 ネットワーク図の描き方入門 分かりやすさ・見やすさのルールを学ぶ 』です。
【はじめに】
あなたも「良いネットワーク構成図」を描けます!
本書は「ネットワーク構成図」や「ネットワーク図」などと呼ばれる、IT現場でよく使われる図の描き方を基本から解説する本です。ネットワークの構造を図で分かりやすく描き出す手順や様々なコツを紹介します。「図を描くのが苦手」と感じているあなたも、業務に生かせるネットワーク構成図を描けるようになります。
ご存じの通り、ネットワークには情報システムを構成する様々な要素(ノード)がつながっています。こうしたネットワークの構造を伝えたいとき、図以外の別の方法、例えば文章では表現しにくいです。地図なしで都市の全容を説明するようなものだからです。
仮に全ての構造を文章だけで書き表せたとしても、その内容を読み手が正しく理解するのが困難です。構造を正しく理解できなければ、ネットワークを使って実現したい要件が可能なのかどうかも分かりません。
ネットワークに障害が発生したときも、原因がどこにあるのか突き止められないでしょう。ネットワークの姿を正確に捉えるには、ネットワーク構成図が必要なのです。
▶「良い」図は業務を動かすのに役立つ
ただし、ネットワーク構成図さえ描けば、ネットワークの姿を常に正しく捉えられるとは限りません。「自社のネットワーク構成図を見てもいまひとつ分かりにくい」「自分でネットワーク構成図を描いてみたけれど、何かごちゃごちゃしている」といった経験はありませんか。そう、ネットワーク構成図にも良しあしがあるのです。
では「良いネットワーク構成図」とは何でしょうか。そもそも何をもって「良い」図だといえるのでしょうか。先ほど、ネットワークの姿を正確に捉えるにはネットワーク構成図が必要と記しました。これがヒントです。
情報システムの構造・構成を表す図は、業務や作業に関わる人たちの間で実現したいことや作りたいものを共有し、意思疎通を図るために使います。情報を伝達し、情報システムの設計・構築・運用といった業務を円滑に動かすための道具の1つです。業務を円滑に動かしている図であれば、多少見にくかったとしても「良い」図です。
逆に、見た目がどれだけ洗練されていても業務の役に立たなければ「悪い」図です。つまり美術のような「美しさ」ではなく、あくまで「伝えたいことが伝わるかどうか」が本質です。
そうすると次の問いが出てきます。「良いネットワーク構成図」はどのように描けばよいのでしょうか。
▶先輩たちも良い構成図の描き方を説明できない
本書を手に取ってくださったあなたは、「良いネットワーク構成図」の描き方を体系的に教わったことがありますか。部署の先輩などに描き方を聞いてみても、こんな回答が返ってきたのではないのでしょうか。
「先輩が持っていた図を参考に、見よう見まねでつくった」
「ネットに出回っている図などをまねしながら、少しずつコツを覚えていった」
「感覚的に図をつくってきた。根拠や理由は説明できない」
実は、業務に使いやすい「良いネットワーク構成図」を描く上では、「どのような手順で図を描き起こせばよいのか」「図にどんな情報を含めればよいのか」といった様々な観点があります。しかし、それらを明確に説明できる人はあまりいません。「ネットワーク構成図の○○についてはこう描く」などとルールを明文化しているのは、大手IT企業でもごくわずかです。
IT現場の多くで使われる重要な図であるにもかかわらず、描き方があまり伝わっていない状況です。本書の狙いはこの「良いネットワーク構成図」はどのように描けばよいのかという問いに答えることです。
▶優れた美的感覚や絵心はいらない
「良いネットワーク構成図」を描くために、優れた美的感覚は必要ありません。
もしかしたらあなたは、「絵心がないから…」と図を描くことに苦手意識をお持ちかもしれません。でもご安心ください。ネットワーク構成図は、芸術作品のように感性を表現するものではありません。情報システムについて説明すべきことを伝達する手段の1つです。ネットワーク構成図を描くために必要な観点や表現手法は基本的に、美的感覚を問われるものではありません。
情報システムのネットワーク構造を表すネットワーク構成図を描く上で大切な観点は2つあります。1つ目は、対象となるネットワークや情報システムを利用する上で必要な情報を、図に正しく表現できているのかという観点です。
2つ目は、ネットワーク構成図によって伝えたいことをどのように表現するのかという観点です。重要なのは、まず「使える」構成図が最初にあり、次にそれをより分かりやすく伝えるための表現の工夫があることです。
以上の2つの観点において、優れた美的感覚は不要です。必要なのは、図解という視覚表現で何かを伝えるための基礎知識です。言葉・文章で何かを説明するときに語彙(ごい)や文章表現の技術が必要なように、視覚表現で説明する上でも基礎となる知識や技術があります。
▶役割から描き方の基本、実践するためのコツまで幅広く紹介
本書はこの2つの観点に基づいて、「良いネットワーク構成図」の描き方を解説していきます。第1章では、そもそもネットワーク構成図とはどんなものかを解説します。ネットワーク構成図の役割を理解することで、図にどんな情報を盛り込めばよいのかなどを理解しやすくなります。
第2章では必要なネットワーク技術の基礎知識を取り上げます。ネットワーク構成図を描いたり、描かれた図を読み解いたりするには、ネットワーク技術の基礎知識が必要です。例えば、ネットワーク機器が備える冗長化のような機能もネットワークの構造を左右する要素としてネットワーク構成図に盛り込みます。こうしたネットワーク構成図によく出てくるネットワーク技術に絞って解説します。
第3章からいよいよ、ネットワーク構成図の描き方を本格的に解説します。第3章は基本編の位置づけです。描き方の手順である「基本の6ステップ」や、分かりやすい図を描くために取り入れたい様々なコツを紹介します。続く第4章は実践編です。架空の企業のネットワークを設計するシーンを想定し、ここまでに紹介したコツを取り入れながらネットワーク構成図を描き上げる流れを説明します。
第5章は活用編です。作成したネットワーク構成図を活用するときに意識しておきたい観点などを取り上げます。最後の第6章は、良いネットワーク構成図を描くために必要な観点やコツの裏付けとなる、図解全般の知識や表現手法などを紹介します。
あなたが良いネットワーク構成図を作成し、そのおかげで現場の業務が円滑に運ぶことを願ってやみません。
2025年11月
萩原 学
【目次】


