その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は永田ゆかりさんの『 AI活用のためのデータマネジメント超入門 』です。

【はじめに】

 データマネジメントは、データ活用の土台づくりです。データを「使う人」こそがデータマネジメントをやるべきです。それはなぜでしょうか?

 データマネジメントは、「データを扱うテクノロジー」の側面より、「データに関わる通常業務」の側面の方が大きいからです。

 データマネジメントは、高度なテクノロジーがあれば解決できる話ではなく、データに関わる通常業務をどう調整し、部門間での齟齬をなくし、全社的なデータの利用効率と価値を高めて、業務効率を上げ、成果につなげていくかという話です。

専門家だけの仕事ではなくなったデータマネジメント

 「データマネジメント」と聞くと、こんなふうに思う方も多いでしょう。

  • 「それはシステム部門の仕事」
  • 「分析は得意だけど、整備や管理は専門外」
  • 「うちはベンダーに任せているから関係ない」

 それはこれまでの常識ですが、今はもう通用しません。
 売上分析、顧客理解、業務改善、経営判断、リスク管理、AI活用……あらゆるテーマで「データをどう扱うか」が成果を左右する時代です。それにもかかわらず、データが整っていないことで現場が止まり、商機を逃す例は後を絶ちません。

現場で直面する「整っていない」現実

 高度な分析技術の話ではなく、「整えるべきことが整っていない」ことによる損失が発生しています。

「整えるべきことが整っていない」ことによる損失
  • 同一顧客への二重配信
    部署ごとに顧客名の表記が異なり、DMなどマーケティング施策の配信が重複。クレームが発生し、信頼が失墜。
  • 会議で数字が食い違う
    営業部と経営企画部で集計した売上額が一致せず、「どの数字が正しいのか?」と役員会で詰められる。
  • 必要なデータが出せない
    外部パートナーへのデータ提供が数日遅れ、プロジェクト開始が後ろ倒しに。

 これらの整備には、必ずしもプログラミングスキルは必要ありません。

 あなたが料理人だとして、「今日から一流レストランを開店してください」と言われたとします。
 でも、そのキッチンが、このような状態だとしたら……

整っていないキッチン
  • 調理器具の場所がバラバラ
  • 食材に名前のラベルが貼られていない
  • 冷蔵庫に何があるのか分からない
  • 賞味期限が書かれていない
  • 前任者が置いていったメモが手書きで判読不能

 こんな状態では、いくら腕があっても満足な料理など作れるはずがありません。
 データの現場も、これと全く同じです。

この本が目指すこと

 データマネジメントを始めるにあたって、多くの人が最初に手に取るであろうDMBOKは、理想的な全体像を示してくれる一方で、現場では「難しすぎる」「結局何をすればいいのか分からない」となりがちです。

 本書は、すべてを網羅する辞書ではありません。
 「何を社内で決め、何を外部に任せ、どう前に進めるか」を判断できる人を増やすことが目的です。

この本でわかること
  • データマネジメントの本当の役割と重要性
  • よくある失敗パターンとその根本原因
  • 「整える」とは何をすることか、その具体像
  • 社内を動かす説得の言葉
  • 技術者でなくてもできる判断のポイント
わからなくていいこと
  • SQLやPythonなどのプログラミング技術
  • データベースやクラウドの詳細設計理論
  • DMBOK全項目の暗記

著者について

 大手製造業・金融・官公庁・スタートアップなど100 件以上のプロジェクトでデータマネジメント導入・活用を支援。

 これまで 部門横断のKPI統一、数百万件の顧客データ整備、分析文化の定着などを実現してきました。本書は、その現場経験から得た「ノンエンジニアでも実行できる方法論」を凝縮しています。
 この本が、みなさまのデータマネジメントの推進に役立てば幸いです。

 2025年11月

永田ゆかり

【目次】

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