その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は島田明さん、川添雄彦さんの『 IOWNの正体 NTT 限界打破のイノベーション 』です。
【はじめに】
今、世界の電力消費が急激に増えています。これまで様々な省電力化の取り組みがなされてきたものの、その一方で近年のデジタル化の進行で処理すべきデータ量が急増し、さらに大量の情報処理を必要とする生成AI(人工知能)の登場が電力消費の増加に拍車を掛けて対応が追いついていません。例えば大規模な生成AIの学習には、原発1基1時間分の発電能力に相当する電力が必要といわれます。こうした分野でいかに省電力化を進めるかは、いまや大きな社会課題です。
これまでも急速に産業を発達させてきた代償として、人類は地球に大きな負荷をかけてきました。中でも気候変動は世界中に深刻な影響を与え始めており、電力消費削減や再生可能エネルギーの活用などを通じたカーボンニュートラルの達成は急務です。大きく視野を広げると、これからの最大の課題は「地球のサステナビリティ(持続可能性)」の実現です。
一方で、デジタル化などを通じて人類の生活を一変させてきたインターネットも、実は大きな課題を抱えています。
インターネットは、私たちに多大な恩恵をもたらしました。もはや私たちの社会はインターネットなしでは成り立たないほどですが、インターネットはその仕組み上、通信品質を保証しないベストエフォート型です。こちらの情報が相手にいつ届くか、相手からの情報もこちらにいつ届くのか確定ができず、遅延もネットワークの状況によって変動します。このため、例えば瞬時の発注タイミングで売買成立が左右されるような金融取引などの基幹部分には、通信環境が安定しないベストエフォート型のインターネットを使うことはとてもできません。
こうしたインターネットの課題と、地球のサステナビリティ確保に向けた省電力化。これら2つの課題を、より豊かな社会を実現するために、同時に解決する方法があります。それが本書のテーマである「IOWN(アイオン)」構想です。
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、光ファイバーを使った高速大容量通信を実現するために、私たちNTTが世界に先駆けて長年研究を続けてきた、「光」をベースとした技術基盤です。ネットワークからコンピューター内部まで、従来は「電気」を用いていた信号のやり取りを「光」に置き換えることで、高速大容量かつ低遅延による安定したデータ伝送を実現しながら、電力消費も劇的に削減できるのです。
私たちがIOWN構想を発表したのは2019年5月。そして20年にはNTT、米インテル、ソニー(現ソニーグループ)と共同で推進団体の「IOWN Global Forum」(IOWNグローバルフォーラム)を立ち上げました。24年9月時点で世界中から150を超える企業や団体が参加し、技術開発や仕様の策定から実証実験まで、活発に活動しています。さらに23年3月には、IOWN構想の最初のサービスとなる「APN IOWN1.0」の提供も開始し、いよいよ商用化の段階に入ったのです。
世界中に急速に広まりつつあるIOWNとは一体何なのか。本書では、それを明かしていきます。IOWNは、その推進がIOWNグローバルフォーラムを中心になされていることからも分かる通り、NTTだけではなくみなさんと「一緒につくり上げていくもの」です。今後、新たなビジネスも続々と誕生する見通しです。
そして地球のサステナビリティ確保では、自分がやらなくても放っておいても誰かがやってくれる、良くしてくれるだろうということではなく、自らが行動していくことが非常に重要になるはずです。読者の皆様に、本書を通じてIOWN構想へのご理解とご賛同をいただき、私たちとともにサステナブルな地球をめざすIOWN構想の実現に向けて行動していただければ幸いです。
NTT社長 島田 明
【目次】







