偏差値36の高校生を東京大学に合格させるストーリーや勉強法が話題となった『ドラゴン桜』。大ヒット作を引き合いにした 『東大メンタル』 の著者は、現役東大生の西岡壱誠さん。読みどころを聞くと、多くの人に役立つヒントが見えてきた。今回2回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

そこに目的はあるのか

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 『東大メンタル』のテーマは、やりたくないことでも結果を出す力を身に付けることですが、その前に4つの壁があると書かれています。一つずつご説明いただけますか。

西岡壱誠(以下、西岡) はい、まずは「目的の壁」です。『ドラゴン桜』で分かるように、目的を持たずに過ごしている人が多いんです。そんな中で強烈に達成したい目標や目的が生まれたら、きっと、やってみようと前に一歩進むことができるはずです。

 勉強にしても、何の目的もなく勉強するなんてできないんですよ。テストのためや将来のためなど、何らかの目的があって人は初めて行動します。しかし、多くの人は「やる意味が分からない」と壁の前で立ちすくんでしまうんですよね。

 結局、人は、納得していないことはできない。人間が一番つらいと感じる拷問は、「穴を掘れ」と言われて穴を掘った後、「その穴を埋めろ」と言われて穴を埋める、これを繰り返すことだそうです。

『ドラゴン桜』に学ぶ、受験を乗り越えるための、4つの非認知能力
『ドラゴン桜』に学ぶ、受験を乗り越えるための、4つの非認知能力

尾上 それを乗り越えるためには、具体的な目標を設定して、「主体性」を持つことが必要と説かれています。

西岡 目的は何でもいいから、初めの一歩を踏み出してみようということです。

「やるべきことが分からない」を越えるには

尾上 そして2つ目は「やるべきことが分からないという壁」ですね。

西岡 目的が見つかっても、次にやるべきことが分からないケースは多い。そのときに一番重要なのは「メタ認知力」です。目的ができれば、ゴールができますよね。すると、どう努力するかはゴールから逆算して考えることができる。シンプルですよね。でも、それをするためには、自分の現在地を知る必要がある。

『ドラゴン桜2』では、まずは試験を受けて己を知ることが大事だと説いてます。例えば、目標800点のテストがあったら、今、自分が何点なのか把握して、目標とのギャップを埋めるために勉強すればいいのです。

尾上 例えば、富士山に登ることをゴールにした場合、自分が静岡にいるのか東京にいるのか、大阪にいるのか分からなければ、どっちに向かえばいいかも分からないということですね。

西岡 そうです、現在地が分からないのに目的地を入力してもルートが分からないから、多くの人は「できない」と言っちゃうんですよね。まずは俯瞰して、目的地と現在地を見るという思考法が大事だと思います。

マイナスの動機もモチベーションを上げる

尾上 そして、次に出てくるのが「モチベーションの壁」です。

西岡 僕自身、「よく諦めずに勉強しましたね」と言われることが多いですね。モチベーションが壁になっているケースはたくさんあるようです。決めたことを続ける活力はどこから出てくるのか、僕自身も知りたくて、東大生に聞いて回りました。

 主な回答は2つでした。一つはプラスのモチベーションで、東大に合格したいとか、こんな将来を描いているみたいなこと。一方で、マイナスなことがモチベーションにつながっていたと語る人もいた。例えば、家が貧しかったからとか、この生活から抜け出したかったからとか。

 つまり、東大に行ってかっこいい自分になりたいという自分もいれば、自分の今の状況が許せないから抜け出したいという自分もいる。そしてその両方とも必要で、両面あることでモチベーションを持ち続けられるということが分かりました。

あと一歩は、どう戦略を立てるか

尾上 最後に、4つ目の「戦略の壁」については、いかがでしょうか。

西岡 これまでの3つがそろえば、大抵のところまではいけるのですが、あともう一歩という場面、ありますよね。営業成績が目標達成まであと少しなのに、最後になかなか伸びずに苦しむとか。でも、それは「才能が足りなかった」「努力したけど報われなかった」のではなく、「戦略性」が抜けていたのかもしれません。

 東大生の多くは、できないことを何とかクリアするためにトリッキーなことをします。例えば、東大の入試問題に自由英作文があって、英語で作文するのは大変だと思われがちですが、実は点数が取れるパターンがあるんです。分かりやすい例としては、「これは私の視野を広げてくれます」という表現を覚えておけば、留学について意見を聞かれたり、好きな科目とその理由を尋ねられたりしたときなど広く応用できます。

 あと一歩のところでもがいて、諦めずにやり方を考えてみれば見えてくるものがあって、わりと攻略できるものです。

尾上 自分の立ち位置を認識して、その上で何にでも通用するような武器を持っていると乗り越えられると。

西岡 この科目は難しいので、別の科目に変えてしまおうというように、ただ真面目に目の前の課題に取り組むのではなく、戦略を立てて大胆に考え行動するというのはアリだと思います。

尾上 最後の最後に来たとき、自分のやり方を貫き通すことにこだわらず、勝つためであれば少しやり方を変えてもいいんじゃないかということですね。

西岡 そうです、そして結果に結び付けるということです。

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