「『ドラゴン桜』に出てくる、あの性格が悪いキャラは僕がモデルです」――小説にドラマにとヒットしたあの『ドラゴン桜』をテーマにした 『東大メンタル』 著者で、現役東大生の西岡壱誠さん。『ドラゴン桜2』が生まれた背景を聞いた。今回は3回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

提供した情報が漫画に落とし込まれる

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 『東大メンタル』では「主体性」「メタ認知力」「セルフコントロール」「戦略性」という4つの非認知能力をメインテーマとして、それらに関連する漫画のエピソードも掲載されています。漫画が先にあって、4つの非認知能力を改めて整理されたと思いますが、西岡さんの中に最初からこの4つがあったわけではないんですよね。

西岡壱誠(以下、西岡) 振り返ってみたら、こうだったなという感じです。僕“リアルドラゴン桜”で、僕らのチームが東大生はこんなふうに勉強しているというのを作者の三田紀房先生にお伝えしたらそれが漫画になって、漫画になってから改めて僕らも学びました。

『ドラゴン桜』には、西岡さん自身のエピソードも採用されていた
『ドラゴン桜』には、西岡さん自身のエピソードも採用されていた

尾上 三田先生はもちろん、編集者の佐渡島庸平さんなど他の方との関わりもあったのでしょうか。

西岡 具体的にお話しすると、三田先生、佐渡島さん、講談社の編集者、コルクの編集者と一緒に毎週会議をしていました。僕らが勉強法についてのアイデアを出します。すると、三田先生や佐渡島さんなどを中心に、それをもとに話をいろいろ展開してくれて、最終的には三田先生が漫画という形にするというスタイルでした。

 僕らはあくまでも情報提供がメイン。お伝えする勉強法がどんな漫画になるのかを考えながら資料を出していたのですが、三田先生が落とし込まれた漫画を見て毎週すごいなとビックリして面白かったですね。

性格の悪い藤井くんのモデルになった

尾上 西岡さんが提供された勉強法には、4つの非認知能力に関連するようなメンタルな部分もあったのでしょうか。

西岡 もちろんあります。2に出てくる性格の悪い藤井くんは、僕の話がもとになっています。

 僕は現役時代と一浪時代、さすがに藤井くんほど人をばかにはしていなかったんですけど(笑)、ちょっと意固地になっていたというか、性格が悪かったなと反省している部分があるんですよ。だから、僕が二浪したのは性格が悪かったからという話をよくしています。

 それで、東大に合格する人の特徴、落ちる人の特徴を資料にまとめて三田先生に出したところ、採用されて形になったのが藤井くんなんです。

尾上 藤井くんのモデルはまさに西岡さんなのですね。

西岡 もっといいキャラであってほしかったんですけどね(笑)。やはり身の回りのことをきちんと見るようなメタ認知ができてないと合格できないという話は、漫画に取り入れていただきたいと思っていました。

尾上 単なる学力向上やテクニック的なところで力を付けるだけではなく、人間として成長するというのが大きなポイントになるのですね。

西岡 結局、不可分なんですよ。桜木先生は「行動するやつだけが勝つ」と言っていて、教育学でも証明されています。主体的な勉強、いわゆるアクティブラーニングといわれるような、自分で質問しに行ったり自分から行動を起こしたりする人のほうが合格しやすい。そういうところがないと成績が上がらないというのは当たり前のことなんですよね。

尾上 三田先生がもともと野球漫画を描かれていて、この『ドラゴン桜』もスポ根だと言われていた部分と通じますね。

西岡 はい、そこは絶対につながっていると思います。

「他者に頼る」という思考も戦略の一つ

尾上 東大出身の佐渡島さんをご覧になっていて、非認知能力がすごいと思われることはありますか。

西岡 『ドラゴン桜』では、テクノロジーで自分を変えるところ、そして僕の本での「戦略性」に関わる部分において、佐渡島さんはすごいと感じますね。システムで理解して自己を改革して、経営にもつなげていくという思考が非常に強く、頭がいいなと感じることが多かったです。

 例えば、今回の本の中でも紹介しているFFS理論という、自分と他人の強みや性格などの特性を理解する組織論があるのですが、佐渡島さんはこれをとても重視していると感じます。

 結局、他人のことは分からないからデータに基づいて理解したほうがいいとよく言っていて、実際にそれを実践している。できないことは他者に頼ろうという思考があるのも、佐渡島さんの強さだなと思います。

尾上 できないことは他者に頼るというのは、先ほどの西岡さんがモデルになっている藤井くんに落とし込まれているところですね。逆転劇のような結末があって。

西岡 すごくつながっていると思います。

尾上 最後に、西岡さんは『東大メンタル』をどんな方にどのように読んでほしいですか。

西岡 学生だけでなく、「受験なんて遠い昔のことだな」という人にも読んでいただきたいです。やりたくないことでも結果を出さなければいけないという場面はよくあるし、なかなか結果を出せないというのは、生きていく上で人類共通の悩みではないでしょうか。

 それにどう向き合っていくのかが人生なのかなと若輩者ながら思っているんです。『ドラゴン桜』という作品を通して、向き合い方への答えがいろいろと見えてきたところがあります。やりたくないことで結果を出すというのがどういうことなのか気になった方は、ぜひ読んでいただけるとうれしいです。

構成/佐々木恵美

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