母親は入院中、父親は熊本の実家で一人暮らし。東京を拠点とする如月サラさんはある日、父親が実家で亡くなっていたという知らせを受けます。悲しむ暇もなく、やるべきことが次々と押し寄せる日々。多くの人に起こりうるそんな状況をつづった『父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること』の著者・如月さんに、その舞台裏を伺います。今回は2回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

誰もいなくなった実家をどうする?

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 2回目となる今回も、『 父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること 』の著者、如月サラさんをお迎えしています。1回目では、お父様が亡くなった直後のお話を伺いました。その後、あるじがいないご実家はどうなったのでしょう。

如月サラ(以下、如月) 実家は土地が100坪、部屋数が8つ、家族3人で住むには大きい家です。その家の相続はどうするのかということがまず頭に浮かび、書類を探しました。そうしたら、母名義の土地に、父名義の建物が乗っかっていたことが分かったんです。母は存命ですし、売る、人に貸す、建て直すといったことが非常に困難。私が勝手に売ることはできないんですね。

尾上 そうなんですか。

実家の片付けに着手するも、なかなか進まない…。父親の生活の跡を眺め、途方に暮れる
実家の片付けに着手するも、なかなか進まない…。父親の生活の跡を眺め、途方に暮れる
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如月 そうなると、維持していかなければならない。そして遺品整理の前に、まずは生ものや父が作り置きしていたご飯の処分です。そこで初めて父の飲み残しのコーヒーを見つけたりして…気が動転していて、1週間くらい気づかなかったんですね。こういった片付けを一人でできるのだろうかと困っていたら、地元の友達が手伝ってくれました。

尾上 最初の1週間が、怒濤(どとう)の1週間だったのですね。

如月 そうですね。お葬式が終わって、火葬が済んで、本当に抜け殻のようになってしまいました。私にとっての実家の記憶は、夕暮れになると父が仕事から帰ってきて、母が台所でご飯を準備して、家の中が温かくて、おいしそうな匂いがしてきて──でも、今は夕方になってもコトリとも音がしない、誰も帰ってこない。家の中が寒く、暗くなっていく。ああ、私、この家で本当に一人になっちゃったんだと、初めてそこで涙が出ました。

 私にはきょうだいも子どももおらず、いわゆるお一人様。そんなとき、地元の友達が「ご飯でも食べに行こうか」と声をかけてくれて。「それだったらうちに来て、1日だけでいいから一緒にいてくれ」と頼んだんです。そうしたら「せっかく行くんだったら片付けようよ」と言ってくれて、ありがたかったです。

 私は、同じ状況にいる友達に「ご飯でも食べに行こうか」「片付けを手伝おうか」と言えるだろうかと考えました。声をかけられた私としてはすごくうれしかったので、今後、自分と同じような状況の友人がいたら「何か手伝うことはないか」と話しかけてみようと思いましたね。

尾上 確かに、言葉をかけてもらえるだけでも違いますよね。

如月 本当にありがたかったです。それから1年間は、毎月1回、1週間ずつ実家に帰りました。これがまた時間のやりくりと飛行機代の捻出が大変で。それでもなぜ月1で必ず帰っていたかというと、無人になった実家の変化を見たかったからです。この時期はすごく下水の臭いがするとか、庭木の葉っぱがたくさん落ちるとか、どの時期にどういう事態が起きるのかを見て、対処方法を考えたかったんですね。そうしたら、無人の家がみるみるすさんでいくのにびっくりしました。

尾上 人がいない家というのは、すさんでいくと聞きますね。

如月 人の住まない家は荒れる、朽ちるのが早い、と私もよく聞いていたのですが、本当かなと思っていたんですよ。でも実際は、1カ月たつだけでも家の中がどんより、すえたような臭いもするし、どんどん傷んでいく。たまらなかったですね。私にとって温かい帰省先だった家が、冷たくて、暗い、腐ったような臭いのする空間になってしまった。そして、不具合も出てきました。お風呂の換気扇が2カ月後には回らなくなり、真冬の時期にはどんなにスイッチを入れてもお湯が出ない日もありました。

残された猫4匹の行く先は

尾上 それから、ご実家には猫もいたんですよね。

如月 実家には猫が4匹残されていましたが、当初は私が東京に連れて帰ることは考えていませんでした。地元の保護団体に問い合わせたら、高齢で亡くなった方のペット問題は年々深刻になっていると聞きました。また、熊本地震や大きな水害もあり、迷いペットも増えているそうです。それで、保護団体から「とても引き取る余裕がない、里親を探すのも難しい」と言われて、途方に暮れてしまいました。迷いに迷った末、最終的には私が東京に連れて帰ろうと決心しました。

尾上 もともと如月さんも猫を飼っていたんですよね。

如月 東京の自宅に2匹いたので、実家の猫を連れて帰ると6匹です。東京の猫は2歳と3歳で、父親が残した猫たちは10歳を超えています。はたしてうまくいくのかとか、どうやって東京に連れて帰るんだとか、持病はないかとか、ここでも問題が押し寄せてきましたが、もう腹をくくったらやるしかないですね。

尾上 今は6匹の猫と暮らしているんですね。

如月 はい。4匹を東京に連れてきてからも大変で、やはり違う場所で育った猫同士は相性がいいとはいえないです。2匹と4匹でスペースを区切っていたのですが、私の生活がすごく不便になってしまい、「いつかは慣れる」とある日開き直って仕切りを取り払い、「もうみんな一緒になれ」と。そうしたら意外とすんなり慣れましたね。でも、なんとなく2匹と4匹で分かれます。トラブルはないけど、距離はちょっと置いているという感じですね。

 父母は70歳を超えてからは新たに犬や猫を迎えていませんでしたが、それでも4匹の猫のほうが長生きしてしまった。これから、高齢の方がペットを残して亡くなるという状況は増えていくと思います。

構成/三浦香代子

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