母親は入院中、父親は熊本の実家で一人暮らし。東京を拠点とする如月サラさんはある日、父親が実家で亡くなっていたという知らせを受けます。悲しむ暇もなく、やるべきことが次々と押し寄せる日々。多くの人に起こりうるそんな状況をつづった『父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること』の著者・如月さんに、その舞台裏を伺います。今回は3回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)
猫6匹に1年間で89万円
尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 今回も、『 父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること 』の著者、如月サラさんにお越しいただいています。お父様が亡くなってから、いろいろなことにお金がかかって大変だったそうですね。
如月サラ(以下、如月) 父が亡くなって1年たち、何にいくらかかったか計算してみました。実は、私の父は生命保険の類いに一切入っていなかったんです。保険金は1円もなく、生前はバイク、社交ダンス…と趣味にたくさんのお金を使って、通帳の残高は100万円もありませんでした。お葬式をしたらすっからかんになって、以後のお金はすべて私が出しています。一番お金がかかったのはやはり猫ですね。飛行機で連れて帰る、年寄りの猫たちにワクチンを打つ、健康診断をするなどで、6匹で89万円かかりました。
尾上 1年間で89万円! これからも同じくらいかかるのでしょうか。
如月 一般的には、猫1匹飼うのに年間10万円ちょっとだそうです。6匹だと、通常でも60万~70万円はかかるかなと。それから、猫のこと以外では実家に帰る飛行機代ですね。これは早割が出た瞬間に予約をするようにして、年間20万円くらいで収めました。
如月 また、実家の固定資産税や車、ガス、水道、電気が年間で計50万円くらい。田舎ではないと不便な車についても、任意保険、税金などがかかります。誰もいない実家の保守に大変なお金をかけています。
それから、父の遺品整理は諦めました。無理でした。
尾上 無理?
如月 はい。実家に帰って少しずつ整理をしても、一生かかるなと。将来家を壊すとか、誰かに貸すとかするときに、業者に頼んで一気にやったほうが効率的です。
尾上 やはり家には余計な物を置かないほうがいいのでしょうね。
如月 そうですね。もう、うちはすごいですよ。私が子どもの頃のステレオとかナショナルの家具調テレビとか、そういうものが全部ありますから。父にとっては宝物だったと分かるだけに切ないです。
尾上 まだまだ時間とお金をかけて、ご実家を残していくのですね。
如月 そうですね。母に聞いたら、「私が生きている間は、家はそのままにしておいて」と言っていましたので。
尾上 お母様は施設に入られているそうですが、どんなお話をされていますか。
如月 母が施設に入るときにスマートスピーカーをセッティングして、Wi-Fiと一緒に置いてきました。私が「お母さん、起きてる? 元気?」と聞くと「起きているよ」と答えたりとか、今日食べたものとか、そういう話をしています。これは、父が亡くなる前にほとんどコミュニケーションを取らなかったことの反省でもあるんです。母もいずれ亡くなるときがきますし、自分が後悔しないためにも、しっかりコミュニケーションを取りたいです。
本書が親子で話し合うきっかけに
尾上 お父様が亡くなられて、お母様は施設にいて、如月さんご自身はお一人で大変なこともありますよね。
如月 でも、いずれ皆さんにも訪れることです。お子さんがいる方は、自分が子どもを残して、いつ旅立つか分からないという時期もきます。
尾上 この本を読んだ方からさまざまなメッセージやコメントがあるそうですね。
如月 本書が発売されたのが2021年12月で、この時期はコロナ禍を経て久しぶりに帰省した方が多かったんですね。この本を冬休み中に読もうと置いておいたら、「母親が読みました」「父親が読みました」という話をたくさん聞きました。なかにはお父様が勝手に読み、「お前に話すことがある」と言って、家の権利書や土地のこと、すべて休みの間に話してくれたというケースもありました。
尾上 親御さんが亡くなられた方はもちろん、元気なうちにご両親と読んでもらうといいですね。
如月 親も大事なことを子どもに伝えなきゃと思いながら、きっかけがつかめないこともあるのではないでしょうか。先ほどの、本作を読んでくれたお父様からは「この本を読んだことで、子どもたちにすべてを話すことができました。いずれ自分たちはいなくなるのに、子どもたちは遠くにいて、いつ、何をどう話そうかと思っていたけど、いいきっかけを頂きました」という手紙をもらいました。
尾上 私もこの本を最後まで一気に読んで、自分の親や子どもとのコミュニケーション、関係性を考える必要があると思いました。では最後に、如月さんからメッセージをお願いします。
如月 『父がひとりで死んでいた』というタイトルは衝撃的かもしれませんね。この本はいわゆるノウハウ本ではなく、個人的な体験を基にしたエッセーです。私という人間が体験した1年間を何も隠すことなく表現しました。どんなにつらいことがあっても希望があります。そして、困難にどう対処すればいいか分かる本になっていますので、ヒントにしてもらえればと思います。ぜひ、手に取ってみてください。
構成/三浦香代子
