働き方改革で「長時間労働はよくない」という意識が浸透し、生成AIなど仕事に便利な道具が普及したものの、思うように残業時間が減らせないことが問題となっている。トヨタの現場で培われた「極限までムダを削る」思考法で仕事の「時短」を実現する『 トヨタの時短術(日経ビジネス人文庫) 』から一部を抜粋してお届けする。その第2回。
「探し物」に膨大な時間を費やしている
まず、興味深いデータをお伝えしましょう。
私たちは年間平均で「150時間」をあることに使っています。この数字がなんだかわかりますか?
じつはこれ、ビジネスパーソンが1年間のうち、モノを探すのに使っている時間の平均です。
一般的なビジネスパーソンの1カ月の勤務時間は、1日8時間、月に20日働くと仮定すると、160時間になります。ですから、1年のうち、およそ1カ月分の労働時間を「探し物」に使っているということになるのです。
ちなみに、ここでいう「モノ」とは、文房具などの物理的な「モノ」の場合もあれば、パソコン上のファイルやメールなど、カタチのない「モノ」も含まれます。
いずれにしても、この「探し物にかかる時間」は、「成果を出すための時間」とはいえません。また、あなたの人生においても、「充実した意味のある時間」でもないですよね。
トヨタの時短に対する考え方を踏まえれば、このムダな時間は限りなくゼロに近づけるべきです。
仕事のムダを極限まで省き、時短につなげるためには、まずは身のまわりの整理の方法から考えてみましょう。
トヨタには昔から「モノを探すな、モノを取れ」という言葉があります。これは、探し物にかかる時間を「減らす」のではなく、完全にゼロにして「モノが必要になったら一瞬で取り出せるようにせよ」ということです。
身のまわりを整理し、このような状態を実現するためにまずすべきことは、ご自身が仕事をしている半径1メートルを見回してみることです。
いかがでしょうか? デスクに書類が山積みになっていませんか? 机の引き出しのなかは、何がどこにあるのかすぐに答えられるようになっていますか?
デスクに書類が山積みになっている人、何がどこにあるのかわからなくなっている人は、まず「捨てる」ことからはじめましょう。

書類の「一時保管場所」を用意する
とくに、不要な書類を捨てることは重要です。一般的に、ビジネスパーソンのデスクの上に置かれている書類の半分以上は、捨てても問題ないといわれているからです。それだけムダなものが積まれているということですね。
「そうはいってもなかなか捨てられなくて……」という人も多いと思います。そんな人は、まず自分なりにルールを決めてしまうのがいいでしょう。
「モノを捨てられない」人は、多くの場合、捨てる・捨てないを判断するための基準を持っていません。だから、「いつか使うかもしれないから」と不安になり、捨てることができないのです。
では、どのように基準を決めればいいのでしょうか。基準の決め方は、職種や職位など、仕事の内容でそれぞれ変わってくると思いますが、ここでは一つのヒントとして、トヨタはもちろん、製造業の現場でよく使われている、「ステータス別に場所を決め、独自ルールを設定する」という方法を紹介しましょう。
まず、机の脇や足元に小さなダンボールを置くなどしてモノの「一時保管場所」を決めます。
捨てるかどうか判断が難しい書類は、この一時保管場所に置いておくようにするのです。そして、自分で決めた時間・曜日・日にちに一時保管場所を見直して、一度も使わなかった書類を捨てていく。
たとえば「毎週月曜日の朝に一時保管場所をチェックして、一度も使っていないモノは捨てる」といったルールを作るのです。
最初は「本当に捨てても大丈夫かな……」と不安になるでしょうが、思いきって捨ててみましょう。やってみればわかりますが「捨てなければよかった」ということはほとんどありません。仮に、そのようなことがあったとしても、必ずなんらかの方法で解決できます。
「どうしても捨てる判断が難しい」という書類は、デジタルデータ化して、紙の書類を捨ててしまえばいいでしょう。
もちろん、この一時保管場所には、書類以外のモノも入れてしまってかまいません。「黒のインクだけがなくなった三色ボールペン」や「引き出しのなかにいくつもある消しゴム」「缶コーヒーのおまけでついてきたフィギュア」など……。
この方法は、パソコン内のファイルを捨てる際にも応用できます。紙の書類と同じでパソコン内に「一時保管フォルダ」を作り、そのなかに捨てるのが不安なファイルを一定期間保存し、期日がきたら一度も開かなかったファイルを削除する習慣をつけましょう。
[日経ビジネス電子版 2026年4月9日付の記事を転載]
原マサヒコ(著)/日経BP/1100円(税込み)
