左門至峰氏の新著『 ぼく、SEやめて転職したほうがいいですか? 』はトラブル対応、昇進と転職、自分の成長などに悩む若手SE(システムエンジニア)の物語です。SEのあり方を長年考え、報じてきた谷島宣之氏が読みどころを示します。

 SE(システムエンジニア)はビジネスを支えるシステムを設計、開発し、動かすプロフェッショナルである。こう定義し、システムを広範囲に捉えれば、IT(情報技術)に限らず、何らかの技術で価値を生むプロをすべてSEと見なしてもおかしくはない。

 『ぼく、SEやめて転職したほうがいいですか?』は題名の通り、SEの仕事に悩む34歳が登場する物語である。上司に退職願を出そうとした当日、顧客の情報システムにトラブルが発生、彼は徹夜で復旧に当たることになる。一緒にトラブル対応に取り組む49歳の先輩と語り合う中で、34歳の彼は技術のプロが身に付けるべき鉄則を学んでいく。

 紹介されている37の鉄則は、トラブルなどで仕事が厳しい時期の心の持ちよう、自分を成長させるキャリアのつくり方、顧客に貢献できる力の付け方、そして技術のプロの条件、に大別できる。

 「直らなくても仕方がない、と思った上で直すように最善を尽くす」「『知らねーよ』と思いながらも『全力で直したい』という気持ちは忘れていない」。きついトラブルに巻き込まれたとき、こう思って乗り切れ、と先輩は助言する。技術者は真面目な人が多く「全力を投入し何としても直す」となりがちで、それは見上げたものだが、ただ前のめりに注力するだけでは行き詰まってしまいかねない。

 作者が用意した37の鉄則をそのまま受け取る必要はない。同書の中で「物事は考え方次第」「答えは人によって違う」「自分で考えることが大事」と明記されているからだ。登場人物の対話を読み、顧客志向、コミュニケーション、仲間づくり、楽をする工夫、といったことについて自問自答し、自分なりの鉄則を持てばよい。

 一晩徹夜をして議論した、という設定なので何か劇的なことが起きるわけではない。ただ、「ああそうなのか」とすぐ分かってしまう伏線が冒頭で張られるので、それがいつ明らかにされるかを知りたくなり一気に読める。この手の物語はハッピーエンドで終わるのが常だが、予想以上にめでたい終わり方で、とても良かった。

<評者> 谷島 宣之(やじま・のぶゆき) 元日経コンピュータ編集長/『SEを極める50の鉄則』編集者
1985年から通算20年以上、日経コンピュータ誌の記者や編集委員を務め、情報システム構築プロジェクトの成功・失敗事例を取材。プロジェクトを成功させるSE像についても記事を執筆。2009年日経コンピュータ編集長。累計10万部超の『SEを極める50の鉄則』(馬場史郎著)の元になった連載を企画、書籍の編集も担当。