「親の介護」に直面したとき、具体的にどうすればよいのか。自らの経験を基に実践的なノウハウをまとめた和田亜希子氏の新刊『 親が心配な人の見守りテック スマホでできるスマートホーム化の極意 』を、NPO法人タダカヨ理事長の佐藤拡史氏が読み解きます。

 「こんな介護の本は見たことがない。素晴らしい本が出た!」

 それが、本書を初めて手に取ったときの私の第一印象です。世の中には家族介護者向けの書籍が山ほどあります。しかし、その多くは介護保険、介護費用、認知症などの疾患、食事・入浴・排せつ介助などの介護技術をテーマにしています。本書のように、スマホと身近なIT機器を活用した「リモート見守り介護」のノウハウをまとめた書籍は、私が知る限りでは「国内初」です。

 世の中には、介護をきっかけに離職する「介護離職者」が年間10万人以上いるといわれています。その要因の一つとして、認知機能が低下した親のために、自宅から実家への頻繁な通いが必要となり、その結果として退職や同居を選ぶケースが挙げられます。60歳を過ぎても仕事を続けるのが一般的となった今日、仕事と介護の両立は一層大きな課題となっています。

 この本は、そんな家族介護者や介護予備軍の家族の方々にお薦めです。本書に紹介されている「見守りテック」を活用すれば、仕事を辞めることなく介護を続けられる可能性が高まります。

 特にお薦めしたい理由は次の2点です。

 一つ目は、実例に基づいた「実践的なノウハウ集」である点です。著者の和田亜希子さんは、見守りテックを活用しながら千葉県に住むお母様を遠距離で介護していました。本書には、和田さんがアレクサやスマートリモコン、ネットワークカメラなどのIoT機器を実際に試して、試行錯誤の中で築き上げたノウハウが詰まっています。様々な機器が設置されている様子はマンガや写真を通じて分かりやすく紹介されており、即座に取り入れることができるものばかりです。

 二つ目の理由は、紹介されている機器が「低価格な市販品」である点です。見守り用のIoT機器の中には高額なものも少なくない中、本書では、オンラインストアでわずか数千円から購入できるものを中心に紹介しています。そのため、お金のことをあまり気にせず気軽にトライすることが可能です。

 この本は家族介護者向けに書かれてはいますが、ケアマネジャーをはじめとした在宅介護従事者や、地域包括支援センターの職員、自治体の高齢福祉担当者も参考にできる内容です。本書のノウハウを取り入れることで、在宅での生活をより長く続けるサポートが期待できます。企業の人事部門の方々も、従業員の生活や仕事のバランスをサポートする視点として参考にしていただければと思います。

 日本社会の未来のために、この本のノウハウが必要とされる方々に広まることを心より願っています。

<評者> 佐藤拡史(さとう・ひろし) NPO法人タダカヨ理事長
1980年宮城県生まれ。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。介護従事者のIT活用を支援するNPO法人タダカヨ理事長。善光総合研究所 介護DX部長。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム「高齢者と遠隔家族をつなぐデジタル同居サービス研究開発事業」研究員。デジタル庁認定デジタル推進委員。スマート介護士。