2025年2月13日、グロービス経営大学院とフライヤーが共催する「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」の受賞作が発表されました。10回目となる今回は過去最多となる152冊がエントリー。一般読者からのウェブ投票により、総合グランプリと6つの部門賞、特別賞2点が選ばれました。各受賞作についてフライヤー代表取締役CEOの大賀康史さんに聞きました。前編では、総合グランプリと特別賞・10年を彩るビジネス書、特別賞・グロービス経営大学院賞を受賞した3冊を紹介します。

2025年2月13日、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」の授賞式が開催された
2025年2月13日、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」の授賞式が開催された
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2024年は難しい1年だった

 ビジネス書グランプリは今年で10回目を迎えました。過去最多の作品がノミネートし、投票数も過去最多で、ここ3年で約2倍に増えました。規模は大きくなりましたが、「ビジネス書における有益性を評価できるのは読者である」というコンセプトは変えることなく、大事にしています。考えてみればビジネス書のジャンルは広く、企業経営や仕事のスキルから教養、健康、リベラルアーツまで含みます。幅広い分野から読者が実際に読んだ本を選び、投票する。それによって受賞作が決まるというのが、ビジネス書グランプリの最大の特長です。

フライヤー代表取締役CEOの大賀康史さん
フライヤー代表取締役CEOの大賀康史さん
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 振り返ってみると、2024年は総括するのが難しい1年でした。能登半島地震などの災害が起き、ロシアとウクライナ、イスラエルとガザ地区などの紛争、アメリカのトランプ大統領再選、日本の衆議院議員総選挙など国内外で大きな選挙もありました。そうした中でポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)重視に対する揺り戻しが起き、世界全体が揺らいでいます。

 一方で華やかなパリオリンピック・パラリンピックがあり、新NISA(少額投資非課税制度)の開始によって株式市場は好調でした。ChatGPTをはじめとしたAI(人工知能)の進化が急速に進み、2025年はAIエージェント元年になると言われています。

 こうした時代のなか、この先どんな生き方をすればいいのか、どうやって長いキャリアを歩んでいけばいいのか、不安になります。そうした中でビジネスパーソンが抱える「自分らしく選び、自分らしく生きる」というテーマが見えてきました。複雑さが増した現代だからこそ、今回のビジネス書グランプリは、自分の心の支えになるような個人の仕事や生き方に寄り添うタイプの本が受賞したと思います。

総合グランプリ/マネジメント部門賞『 部下をもったらいちばん最初に読む本 』(橋本拓也著/アチーブメント出版)

総合グランプリ/マネジメント部門賞『部下をもったらいちばん最初に読む本』の著者、橋本拓也さん。画像クリックでAmazonページへ
総合グランプリ/マネジメント部門賞『部下をもったらいちばん最初に読む本』の著者、橋本拓也さん。画像クリックでAmazonページへ

 総合グランプリ、マネジメント部門賞のW受賞となった『部下をもったらいちばん最初に読む本』は、そうした世の中の流れを反映しています。これまでマネジメントの本というと、MBA(経営学修士号)で学ぶような専門的なものや、大企業がどうやって個人をマネジメントするかといったものが多かったと思います。一方、こちらの本は、本当に初めてマネジメントをする立場になったときに手に取る本で、基礎的な指針が分かります。ほとんどの新任マネージャーやリーダーが悩むポイントについて書かれています。

 本書で解決策として示されるのが「リードマネジメント」。著者で人材教育コンサルタントの橋本さんもかつては「マネジメントの無免許運転」をしておりうまくいきませんでしたが、「マネジメントは技術」だと気づきます。「すべての行動は自らの選択であり、人は自ら内発的に行動を選択する」という選択理論心理学に基づいたリードマネジメントを取り入れることで、状況が好転したのだとか。一人一人に寄り添い、一人一人の潜在的な能力を信頼して導くマネジメントの教科書です。

特別賞・10年を彩るビジネス書『 学びを結果に変えるアウトプット大全 』(樺沢紫苑著/サンクチュアリ出版)

特別賞・10年を彩るビジネス書『学びを結果に変えるアウトプット大全』の著者、樺沢紫苑さん。画像クリックでAmazonページへ
特別賞・10年を彩るビジネス書『学びを結果に変えるアウトプット大全』の著者、樺沢紫苑さん。画像クリックでAmazonページへ

 今回は10回目のビジネス書グランプリということで、特別賞「10年を彩るビジネス書」を選定し、『学びを結果に変えるアウトプット大全』が選ばれました。アウトプットの重要性を説いた本として話題になり、2018年の刊行以来、読まれ続けています。

 ビジネスパーソンは「アウトプットを出せ」と言われる場面が多々あります。自分が学んだり、考えたりする時間は相手にとっては意味がない。だからこそ「成果物」として提案、改善といったアウトプットを出せ、と言われ続けてきました。

 しかし、樺沢さんはインプット3割、アウトプット7割というバランスが最も効果的だという研究結果を示しています。アウトプットするにはインプットとして学びが必要で、漫然と学ぶよりも「どうやってアウトプットしようか」と考えながら知識を吸収することで理解が深まります。

 また、何もプレゼンすることだけがアウトプットなのではなく、メモを取る、日記を書く、挨拶をする、雑談をするのも立派なアウトプット。樺沢さん自身はメールマガジンを毎日発行13年、YouTubeを毎日更新5年、毎日3時間以上の執筆11年…と驚異的なアウトプットを続けていますが、この本を読むと精神科医である樺沢さんがどうやってアウトプットを続けているかが脳科学の観点から分かります。ビジネスパーソンは読んでおきたい、特別賞にふさわしい1冊です。

特別賞・グロービス経営大学院賞『 チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方 』(池田めぐみ、安斎勇樹著/日本能率協会マネジメントセンター)

特別賞・グロービス経営大学院賞『チームレジリエンス』の共著者、池田めぐみさん。画像クリックでAmazonページへ
特別賞・グロービス経営大学院賞『チームレジリエンス』の共著者、池田めぐみさん。画像クリックでAmazonページへ

 もう1冊の特別賞「グロービス経営大学院賞」には『チームレジリエンス』が選ばれました。こちらはグロービス経営大学院経営研究科研究科長(日本語MBA)の君島朋子さんがコメントを発表していますので、紹介します。

 ビジネス環境の変化がかつてないスピードで進むなか、リーダーたちは常に新たな課題に直面しています。そんな激動の時代において、的確な課題認識と実践的な解決策を提示するのが本書です。特に「課題の特定と対処」「困難から学ぶ」「被害を最小化する」という3つのステップを通じ、理論と実践を融合させたアプローチは私たちの教育理念とも深く共鳴します。

 本書が提案する「役割分担の見直し」「教訓を日々の習慣に落とし込む」といったプロセスはリーダーとしての実行力を高める上で非常に有益です。


 次回はイノベーション部門、経済・マネー部門、自己啓発部門、リベラルアーツ部門、ビジネス実務部門の各賞の受賞作について紹介します。

(後編に続く)

取材・文/三浦香代子