業界の数量単位はいろいろ。コンサルタントの仕事では、異なる業種の顧客企業の案件を同時に進めることもあり、意識せずとも様々な業種の市場規模の金額、数量などを相対的に比べる視点が身に付きやすくなります。コンサルタントがビジネス数字の読み方を分かりやすく解説した書籍『ビジネス数字思考トレーニング コンサルタントが必ず身につける定番スキル』(長谷川正人著/日経BP)より、抜粋、再構成してお届けします。

「数量」の単位は業界によって異なる

 業界統計の単位はその業界によって様々です。単位は大別すると、金額と数量のどちらか、あるいは両方で表されます。

 ある業界・企業が好調かどうかは、金額ベースはもちろんのこと、数量ベースでも判断されます。

 「数量」の単位は業界によって異なります。

 自動車なら生産台数や販売台数、スマホなら出荷台数、飲料ならケース数やキロリットルなど容量、鉄鋼・製紙・造船ならトンなどの重量、携帯電話・カード事業なら契約者数、コンビニ・外食などのチェーンならチェーン店数、マンションなら販売棟数、テーマパークなら入場者数、ゲームなどのアプリならダウンロード数、鉄道や空運なら旅客数、宅配便なら荷物個数など実に様々です。

数量単位は業界ごとに異なる
○自動車、スマホ、PCなら台数
○鉄鋼、造船ならトン
○チェーン店なら店数
○テーマパークなら入場者数
○アプリならダウンロード数 など

 なお、業界統計は年明け1月ごろに前年の数値が発表されることが多いため、この時期のニュースには要注意です。多様な業界のいろいろな数字を頭に入れておくと、他の業界のデータを見たときにそれがどれくらいの大きさか、相対的な比較ができるようになります。

 コンサルの仕事では、まったく異なる業種の顧客企業の案件を同時に進めることもあり、意識せずとも様々な業種の市場規模の金額、数量などを相対的に比べる視点が身に付きやすくなります。

日本最大のチェーン店は?

 さて、日本で最多の店舗数を持つ小売チェーン店はどこでしょうか?

 答えは、セブン-イレブン(2.1万店)です。

 いわゆるチェーン店とは異なりますが、同様に日本中に2万のネットワークを持つのが郵便局と小学校です。要はセブン-イレブンも郵便局も小学校も、日本のどこに行ってもほぼ必ずある、そう認識されるためには2万程度の拠点が必要ということです。交番と駐在所もどこにでもある気がしますが、調べるとあわせて1.2万です。

 全国にマクドナルドは3000店弱、牛丼チェーンで最多のすき家とスターバックスはおのおの2000店弱です。

 これらの数字を頭に入れておくと、あるチェーンの店舗数を聞いたときに、そのチェーンがどれくらいの大きさなのか、イメージがつかみやすくなります。もっとも、人口減少が続く日本市場における業界の数量ばかり見ていると「井の中の蛙」になりかねません。

 ここでグローバルベースでの自動車市場、スマホ市場について、数量ベースでどのようなことがいえるか見てみます。

世界の自動車市場:中国と米国でほぼ半分

 日本自動車工業会の発表資料によると、2022年の世界の四輪車販売台数は前年比1.4%減の8163万台でした。国別には、1位が中国で2686万台、2位が米国1423万台、3位がインド473万台、4位が日本420万台、5位がドイツ296万台でした。

 中国が圧倒的に世界最大の自動車市場であること、中国と米国で世界市場のほぼ半分を占めていることが分かります。2022年の統計でニュースになったのはインドが日本を抜いて初めて世界3位に浮上したことです。

世界のスマホ市場:3位から5位は中国メーカー

 『日経業界地図2024年版』によると、2022年のスマホの世界出荷台数は12億台あまりです(米IDC調べ)。

 主要メーカー別シェアは、1位が韓国サムスン電子21.6%、2位が米アップル18.8%、3位は小米集団(Xiaomi)12.7%、4位はOPPO8.6%、5位はvivoで8.2%と続きます。3位から5位まではいずれも中国のメーカーです。

 自動車とスマホの世界市場を概観しただけでも、中国の存在の大きさを再認識させられます。『日経業界地図』は巻頭に世界市場でのシェアがまとまって掲載されているので、業界ごとの大枠をつかむのに便利です。

業界ごとの営業利益率の相場を知る

 ある企業の収益力が高いか低いかを測定する指標には様々なものがありますが、代表的なのが売上高に対する営業利益率です。

 利益率の高低は会社によって異なり、業界単位でも利益率の水準が高い業界と低い業界があります。業界ごとの利益率の「相場」を知っておくと、ある会社の利益率を見たときに、平均より高いのか低いのかの判断ができるので便利です。

 日本企業の営業利益率の水準はおよそ何%くらいでしょうか。

 多くの企業は1ケタ、つまり数%というのが標準です。日本では2ケタ、すなわち10%以上の営業利益率があれば、比較的収益力があると判断されるのが一般的です。

 東京証券取引所では毎年、上場企業全体について、業種ごとの売り上げ、営業利益(率)を公表しています。2023年3月期の数値を使って業種ごとの営業利益率を見ていきます。なお、2023年3月期はコロナ禍の影響を引きずっているものの、一時期よりはだいぶやわらいだ時期にあたります。

 製造業、非製造業の二大区分では、製造業平均が7.1%、非製造業平均が5.4%でした。

業界ごとの営業利益率の水準を知っておくと、各社の利益率の高低が判断しやすくなる(写真:N F/peopleimages.com/stock.adobe.com)
業界ごとの営業利益率の水準を知っておくと、各社の利益率の高低が判断しやすくなる(写真:N F/peopleimages.com/stock.adobe.com)
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利益率の高い業種と低い業種は?

 製造業16業種、非製造業13業種に区分した計29業種ごとに見たのが次の図です。同表には製造業、非製造業ごとに営業利益率の高い業種順に並べています。

 業種平均でも2ケタの営業利益率があるのは、全29業種のうち医薬品、精密機器、その他製品(以上、製造業)、鉱業、不動産業、情報・通信業(以上、非製造業)の6業種のみです。

図表 業種別の営業利益率(2023年3月期、連結ベース)
図表 業種別の営業利益率(2023年3月期、連結ベース)
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 製造業でトップは医薬品の13.0%です。製造業は1ケタが普通、2ケタあれば上出来と見られますが、医薬品では営業利益率2ケタが当たり前です。これくらいの高い営業利益率をコンスタントに稼がないと、新薬開発などの研究開発への投資もできず競争力を維持できない業界です。

 トヨタ自動車やソニーグループなど製造業で有力企業の多い輸送用機器(自動車)や電気機器(電機)はいずれも5〜10%程度の営業利益率になっています。

 非製造業の13業種は、全体的に製造業よりばらつきが見られます。非製造業でも全業種の中でも最も平均利益率が高いのは鉱業の44.9%ですが、これはこの業界でウエートが最大のINPEX(旧国際石油開発帝石)が原油高と円安のダブル要因で潤ったという特殊事情のためです。

 鉱業を除くと12%前後の営業利益率をマークするのが不動産業と情報・通信業です。不動産業でウエートの大きい三菱地所、三井不動産が高い営業利益率をマークしている背景には、両社が地盤とする東京の丸の内・大手町エリア(三菱地所)、日本橋エリア(三井不動産)のオフィスビルが高い収益性を保っていることがあります。

 同様に、情報・通信業でウエートが大きいのは、携帯キャリア3社です(注:NTTドコモはNTTの持ち株会社の子会社)。3社いずれも10数%の営業利益率をコンスタントにあげています。これについてはもうけすぎ批判もあり、菅義偉政権のときには政策として携帯電話料金の引き下げが進められたほどです。

 不動産業や情報・通信業が2ケタをマークする一方で、卸売業(総合商社はここに含まれる)、小売業は1ケタ前半が相場です。卸売業、小売業(あわせて流通業と呼ばれる)は資産に対して売り上げが大きい、すなわち総資産回転率は高いものの利益率が低く、いわば薄利多売型のビジネスを行う業種といえます。

 陸運業(鉄道やトラック)、空運業はコロナ禍真っただ中の2021年3月期には業界平均の営業利益率がマイナスでしたが、2023年3月期には黒字に浮上しました。

戦略もロジックも「数字」を読むところから始まります。長年、若手に教えてきたコンサルタントが、つまずきやすいポイントや誤解されやすい数字の読み方を具体的な業界・企業のデータや決算情報に基づき、分かりやすく解説します。

長谷川正人著/日経BP/1760円(税込み)