ニュースをきちんと理解できていると職場や学校、就活や転職でも武器になります。今さら聞けないニュースの疑問にQ&A形式で日経新聞の記者が答える書籍『いまを読み解く45の分析 Q&A日本経済のニュースがわかる! 2024年版』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋します。2回目は、「各国の新たな経済圏になる月」について。

月は水資源の存在が示唆され、将来火星などに進出する足場として注目されています。まず探査機を月面に輸送するビジネスなどが立ち上がると期待されます。

月面でのプレーヤーが変わった

 米航空宇宙局(NASA)は2022年11月、月面を探査する「アルテミス計画」の1号機となる無人宇宙船を打ち上げました。米国が月に宇宙船を送り込むのは「アポロ計画」以来、約50年ぶりです。今後の計画では24年に有人宇宙船で月の周回軌道を飛行し、25年以降に月面着陸を目指しています。

 米国が月に注目するのは、水資源がある可能性が近年の観測・研究でわかってきたためです。水を有効活用できれば現地で生活用水を確保できるだけではなく、酸素と水素に電気分解して酸素を居住空間に、水素を探査機の燃料などに使えます。将来的に人類が、地球と似た環境を持つ火星に進出する際の経由地として、月が有望視されているのです。

 月に注目しているのは米国だけではありません。中国は13年に初の月面着陸に成功後、19年にはより難しい「裏側」への着陸に世界で初めて成功しました。今後も独自に月面開発を進めていく計画です。

 月の探査はかつて、東西冷戦下で米国と旧ソ連がしのぎをけずる場でした。1966年に旧ソ連が月面の軟着陸に初めて成功した後、69年に米国が「アポロ11号」で初の有人着陸を達成しました。「米ソ」の開発競争は「米中」へとプレーヤーが代わり、再び激しい主導権争いへ発展していくと予想されます。ほかにもインドやロシアが月開発に意欲的です。

 近年の宇宙開発は国の宇宙機関だけでなく、民間企業が活躍しているのも大きな特徴といえます。NASAは月面着陸機の開発企業として、米起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースX、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げたブルーオリジンを選定しています。民間企業の活力を利用して迅速な月面開発につなげたい狙いです。

 コンサルティング大手のPwCの試算では、月面ビジネス市場は2040年までに累計1700億ドル(約24兆円)にのぼるとされます。月面に人や資源を輸送する事業などが立ち上がり、人が現地に長期滞在できるようになると、モノやサービスの需要が急増すると考えられます。

(出所)『いまを読み解く45の分析 Q&A日本経済のニュースがわかる! 2024年版』(日本経済新聞出版)
(出所)『いまを読み解く45の分析 Q&A日本経済のニュースがわかる! 2024年版』(日本経済新聞出版)
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日本の月面進出はどうなのか

 日本でも月を巡る動きが活発化しそうです。月面着陸船を開発するispace(アイスペース)は23年4月12日、国内宇宙系スタートアップとして初めて上場企業となりました。探査車などの貨物を月面に輸送するサービスの確立を急いでいます。

 アイスペースは、実現すれば民間企業初となる月面着陸に挑みました。着陸船は22年末にスペースXのロケットで宇宙空間に打ち上げられ、23年3月に月周回軌道に到達、翌月に着陸態勢に入りました。ただセンサーで月面との距離を測定する際、着陸地点を実際より高く見積もったため減速に必要な燃料を使い切ってしまい、月面に落下して大破したと見られます。原因を分析すると高度を見積もるソフトウエアに問題があったことや、月面の形状のシミュレーションが不十分だったことがわかりました。アイスペースはこうした知見をもとに、24年に再び月面着陸に挑む予定です。

月面ビジネス市場は2040年までに約24兆円にのぼるとされる(写真:Romolo Tavani/stock.adobe.com)
月面ビジネス市場は2040年までに約24兆円にのぼるとされる(写真:Romolo Tavani/stock.adobe.com)
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 国内大手企業も100社超が月面進出に意欲を示しているとされます。例えばトヨタ自動車は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や三菱重工業と、月面探査車の開発を手掛けています。重力が地球の6分の1、温度はマイナス120~170度、真空で強い放射線にさらされるなど、月の過酷な条件を挙げればキリがありませんが、そんな環境下でも動くクルマづくりを目指します。

 自動車のほかにも大手ゼネコンが月面基地を建設したり、保険会社が月探査機の着陸失敗を補償する保険を開発したりするなど、産業の裾野の広がりが期待されそうです。

 日本が世界のなかで存在感を示すには、JAXAの活躍ももちろん重要になります。JAXAは月面探査機「SLIM(スリム)」で月面着陸を目指します。スリムでは着陸の精度を誤差100メートル以内に抑える「ピンポイント着陸」に強みを持ちます。従来は難しかった斜面などへの着陸もでき、より詳しい月面探査の実現に貢献しそうです。

(出所)『いまを読み解く45の分析 Q&A日本経済のニュースがわかる! 2024年版』(日本経済新聞出版)
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日経記者がやさしく解説。

「生成AI」「中台関係」「新NISA」……1項目5ページの読み切りスタイルで、これだけは知っておきたい重要ニュースをまとめました。45個のQ&Aでトレンドや出来事のおさらいはもちろん、教養も身に付く1冊です。

日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1760円(税込み)