就活で企業研究を行う際、初任給の額ばかりに注目している人はいませんか? もちろん初任給は重要ですが、中長期的な「年収の伸び率」に目を向けると意外な発見があります。この記事では、『 日経業界地図 2026年版 』(日本経済新聞社 編/日本経済新聞出版)内の巻頭特集「業界別・年収伸び率ランキング」を基に、学生向けキャリア支援・就活支援などを手掛けるStrobolights社長の羽田啓一郎さんに「就活で年収伸び率を見る大切さ」を伺いました。

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羽田啓一郎(はた・けいいちろう)さん
Strobolights 代表取締役社長 立命館大学産業社会学部 客員教授
マイナビで大手企業の新卒採用営業を担当し、全社年間MVPを受賞。その後、キャリア甲子園など学生向けキャリア支援事業新規立ち上げを行う。政策有識者会議なども経験後、2020年に独立。企業のアドバイザー業務や大学の講師業の傍ら、自身でも学生や社会人向けキャリア支援サービスを展開。

年収伸び率が高いとはどういうことか

 年収は年齢とともに上昇していくのが一般的ですが、新卒時の年収と平均年収を比較すると、その伸び幅は業界によって大きく異なります。

 『日経業界地図 2026年版』内の巻頭特集で紹介されている「業界別・年収伸び率ランキング」は、日経テレコンで注目度の高い上位10業界・39社を抽出し、年収伸び率を算出したもの。年収伸び率のトップは商社の4.10倍。そして医薬品(2.63倍)、医療機器(2.62倍)と続きますが、業界ごとの伸び率の違いがわかっていただけることと思います。

業界別・年収伸び率ランキング
業界別・年収伸び率ランキング
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 学生向けに就活アドバイスを行う羽田さんは、「就活の際に年収伸び率を見る重要性」について次のように説明します。

 「就活時に初任給の額を重視する学生は多いですが、たとえ初任給が高くてもその後あまり上がらないというケースはよくあります。このランキングでもわかるように、入社後の伸び率は業界、そして企業によっても異なります。給与を重視するならば、初任給の額だけでなく、中長期的な給与の伸びにも注目すべきでしょう」

 『日経業界地図 2026年版』には業界別だけでなく、「企業別」の年収伸び率ランキングも掲載されています。

 トップ5を独占したのは業界別トップの商社で、その中で1位となったのは三菱商事。同社の新卒入社時の年収(賞与を含む)は476万円ですが、平均年収は2033万円と、新卒時の4.27倍となっています。

企業別・年収伸び率ランキング
企業別・年収伸び率ランキング
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 「年収伸び率が高い会社は、そもそも収益性が高く、社員に利益を還元する姿勢のある会社であるとも言えます。年収伸び率が高い業界・企業を就職先に選べば、仕事で努力し成果を上げた分、給与に反映される可能性が高く、安定的な年収アップが期待できるでしょう。給与で報いる体制の会社で働くことで、働くモチベーションが上がり、早期にビジネスパーソンとしての『稼ぐ力』が磨かれるとも考えられます」(羽田さん)

やりたいことがない人ほど、BtoB業界がおすすめ

 業界別・企業別、双方のランキングの上位を見ると、BtoBメインの業界や企業が目立ちます。

 BtoBとは「Business to Business」の略で、企業が、別の企業を相手に商品やサービスを販売する取引のことを指します。ランキング上位である商社、医薬品、医療機器や建設、コンサルティングも、いずれもBtoBをメインとする業界です。

 一方、我々のような一般消費者を対象とした取引をBtoC(Business to Consumer)と呼びます。たとえばスーパーやコンビニなどの小売店、外食、ネット通販、家電、日用品メーカーなどがそれにあたります。

 「就活では、知名度が高く普段からなじみのあるBtoC業界・企業ばかりに注目してしまいがちです。就業経験のない学生は、世の中にどのような業界・企業があるのか知らないという人が大半だと思うので、『知っている業界・企業』に目が行くのは仕方ないことだとは思うのですが、ぜひBtoB業界・企業にも目を向けてほしいですね。

 BtoBは企業相手の商売ですから、一般消費者向けと比べると売り上げの規模が大きく、経営が安定していることも多いです。利益幅が大きいと年収の伸び率も高い傾向にあり、入社後安定的に給与が上がると期待できるでしょう」(羽田さん)

「やりたいことがわからない人ほど、BtoBがオススメ」という羽田さん
「やりたいことがわからない人ほど、BtoBがオススメ」という羽田さん
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 就活生の中には、「就活を始めなければならないのに、自分が何をやりたいのかわからない」と悩む人が少なくありませんが、羽田さんは「そんな人こそBtoBに注目してみては?」と勧めます。

 「BtoB業界・企業は企業相手の商売なので、さまざまな業界・企業に関わる機会があります。仕事を通じて業界・企業に関する知見が増えることで、『こんな魅力的な業界があったのか』『こんな企業で働いてみたい』などの発見があり、やりたいことが見えてくる可能性も考えられます。その思いを軸に転職活動すれば、希望のキャリアがかなえられるかもしれません」(羽田さん)

 もちろん、BtoB業界・企業で働く中で「ここでの仕事が自分に向いている、天職だ」と思える可能性も大いに考えられます。

 「前述の理由で、BtoB業界・企業は年収アップも期待できるため、やりたいことがわからず就活の方向性を決めかねているならば、BtoBに注目するのは賢い考え方だと思いますよ」(羽田さん)

 より自分に適した会社を見つけるために、年収伸び率ランキングをぜひ活用してみてください。

取材・文/伊藤理子 構成/黒田琴音(第1編集部) 写真/鈴木愛子

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業界の基本が1分でわかる! 『日経業界地図 2026年版』では、過去最多の201業界、4900企業・団体を収録。日経記者が総力をあげて取材し、業界ごとに企業の提携・勢力関係を図解で示します。企画や提案に役立つ巻頭特集を拡充し、業界規模グラフなどでより見やすく、より使いやすくなりました。

日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)