プログラミング言語Pythonに関する日本最大規模のイベント「PyCon JP2025」(主催:一般社団法人PyCon JP Association)が2025年9月下旬に広島国際会議場で開催された。その基調講演として書籍『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』著者の大塚あみ氏が登壇、生成AIを活用したプログラミング活動について、直近の取り組みを交えて語った。その概要をお届けする。

「PyCon JP2025」基調講演に登壇した大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)
「PyCon JP2025」基調講演に登壇した大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)

生成AIで宿題をサボることから始まった

 大塚氏の講演タイトルは「プログラミングの未来を駆ける!」。冒頭で大塚氏は、プログラミングに本格的に取り組み始めてから2年間の軌跡を次のように振り返った。

 「2023年4月、生成AIのChatGPTを知り、大学の宿題をサボるために毎日10時間ぐらい使い込んでいたら、ChatGPTで作成したプログラムを毎日1本ずつ連続100日制作する『100日チャレンジ』に取り組むことになりました。その成果を踏まえて学会で発表したら、受賞して招待講演をすることになりました注1

注1:2023年電子情報通信学会ネットワークソフトウェア研究会の「ネットワークソフトウェア若手研究奨励賞」

 「大学の先生に頼まれて卒業後にIT企業に就職したものの、個人的に依頼された受注システム開発案件に惹(ひ)かれてしまい、そのための会社を24年11月に設立。2025年1月に発売した書籍『#100日チャレンジ』が売れたこともあり、ソフトウエアエンジニアと作家という2つの立場を得ることができました」

 こうした過程で大塚氏が大事だと実感したのは、好奇心を持って前向きに取り組む姿勢だ。「100日チャレンジを始めたのも『面白そうかも』といういわば思い付き。会社を設立したのも興味を抱いた受注システム開発に必要だったから」。大塚氏によれば、この2年間を振り返ってみると、「約10カ月周期で新しい挑戦に取り組んできた。言い換えれば、人生が変わっていった」

 加えて大塚氏は、成果をきちんと形にすることの大切さも強調した。「一生懸命に学んだとしても、成果を示さなければ誰も評価してくれないんです。私の場合は、ソフトウエアエンジニアとしてキャリアを築いていく上で、誰にでも分かりやすい成果が必要でした。それが、毎日10時間以上をかけてアプリを開発して公開し続ける『100日チャレンジ』だったのです」

 この「100日チャレンジ」を完遂して得られた教訓を、大塚氏は次のようにまとめた。

  • 日々の知識の記録が、成果を上げるのに役立つ
  • 習慣を支える仕組みが、継続するために重要である
  • 未来へつながる(対外的に評価される)プロジェクトに賭ける
  • 100日がんばれば、何でもできる

悔しさもバネにして、スマホアプリを新規開発

 こうして人生を変えてきたという大塚氏は、「今回の基調講演でも人生を変えようと思って準備してきました。このために100日を捧(ささ)げてきたんです」と切り出した。基調講演で発表するために新たにメモ帳アプリ「メモるん」を開発、iPhoneアプリとしてAppleが運営するアップストアに公開したことを明らかにした。

この日のために開発・公開したiPhone用メモ帳アプリ「メモるん」を発表する大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)
この日のために開発・公開したiPhone用メモ帳アプリ「メモるん」を発表する大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)

 「受注開発を通じてさまざまなアプリケーションを作ってきたこともあり、スマホアプリもできるんじゃないかと考え、基調講演の登壇決定をきっかけに開発を始めました。制作過程では、『いろんなアプリを作っては壊し、作っては壊し』の繰り返し。試行錯誤の中で気づいた最大の問題は、私自身の欲しいアプリが分かっていないということでした」

 「結局、自分が一番欲しかったのは、日々得た知識を記録できるメモ帳アプリ。既存アプリを探してみたけれど良いものが見つからなかったこともあり、自分が最も欲しかった『音声データの文字起こし機能』と『画像データのOCR(光学文字認識)機能』を備えたメモ帳アプリ『メモるん』を新規開発して公開できました」

 メモ帳アプリの開発では、「100日チャレンジ」後に受けた批判も大きな動機になったという。「この人はソフトウエアエンジニアなの? とか、大学生だからうまくいったんじゃないの?、結局この人は何を作った人なの?という批判を受けたんです。悔しかったのでスマホアプリを作りました。今日をもって私は、駆け出しエンジニアからアプリ開発者になったことを宣言いたします」

 高らかに宣言した大塚氏は、この2年間の挑戦を踏まえ、次のように締めくくった。「2年前、私は何の取りえもない大学生でした。生成AIに出会い、さまざまな挑戦を重ねることで、スマホアプリをリリースすることができました。生成AIは私の人生を変えました。私たちは、そうした短期間で人生を変えられる素晴らしい時代に生きています」

基調講演に先駆けて開かれた即売サイン会で書籍にサインする大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)
基調講演に先駆けて開かれた即売サイン会で書籍にサインする大塚あみ氏(写真:PyCon JP Association)

構成:田島篤=日経BOOKSユニット

怠け者の大学4年生がChatGPTに出会い、ノリでプログラミングに取り組んだら、教授に褒められ、海外論文が認められ、ソフトウェアエンジニアとして就職できた──。Z世代の著者によるAI駆動型プログラミング学習探究記。

大塚あみ(著)/日経BP/1980円(税込み)