今、東京のあちこちで進む大規模な再開発。現場をぐるりと覆う仮囲いの向こうでどんな工事が進んでいるのか。あるいは、姿を現した新たなランドマークはどのように街を変えていくのか。新刊『東京大改造2030 都心の景色を変える100の巨大プロジェクト』から紹介します。第7回は「自由が丘」編です。(記事は同書のベースとなった日経クロステック連載「東京大改造」より転載・一部変更)

 建物の老朽化があちこちで顕在化している東京都目黒区自由が丘が「しゃれた街並み」を取り戻そうと、駅前の再開発に乗り出している。そのリーディングプロジェクトとして新築工事が進むのが、「自由が丘1丁目29番地区第1種市街地再開発事業」である。

 自由が丘駅前に中規模の複合施設を建設し、2026年7月の竣工を計画している。開業も26年中になると見られる。24年2月初旬時点で、対象街区にあった既存建物の解体工事はほぼ完了した。地下の解体を経て、新築の基礎工事が始まっている。

 東京都が03年に制定した「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」に基づく「街区再編まちづくり制度」を活用。既成市街地の再生を目指す。

自由が丘駅の駅前広場(手前)に面する「自由が丘1丁目29番地区第1種市街地再開発事業」の複合施設イメージ(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
自由が丘駅の駅前広場(手前)に面する「自由が丘1丁目29番地区第1種市街地再開発事業」の複合施設イメージ(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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自由が丘駅から見た駅前広場と今回の複合施設(右)。施設の大きさが際立っている(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
自由が丘駅から見た駅前広場と今回の複合施設(右)。施設の大きさが際立っている(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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 東急電鉄自由が丘駅の駅前広場に面する北側の街区で、立地は抜群だ。事業者は自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合で、ヒューリックや鹿島が参加組合員に名を連ねる。総事業費は約344億円を見込む。

 施設の設計は久米設計、施工は鹿島が手掛ける。構造は鉄筋コンクリート造。鹿島は「施設開業後も事業者の1社として地権者と共に関わり続ける」(鹿島開発事業本部事業部の丸茂嶺介課長)。

施設の位置図。東急東横線と東急大井町線が交わるターミナルである自由が丘駅の目の前という好立地(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
施設の位置図。東急東横線と東急大井町線が交わるターミナルである自由が丘駅の目の前という好立地(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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 施設は地下3階・地上15階建てで、高さが約60m。都内のあちこちで進む大規模な再開発事業に比べると、小ぶりだ。それでも小規模の建物が所狭しと並ぶ自由が丘の街にあっては、駅前広場に面する約3900m2の敷地に15階建ての新築ビルが立つインパクトは大きい。駅前の風景が一変する。延べ面積は約4万6000m2で、店舗やオフィス、住宅、駐車場などで構成する。

施設の断面イメージ。低層部に店舗、中層部に1フロアだけオフィスを挟み、上層部が賃貸住宅になる(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
施設の断面イメージ。低層部に店舗、中層部に1フロアだけオフィスを挟み、上層部が賃貸住宅になる(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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施設の地上1階平面図(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合)
施設の地上1階平面図(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合)
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 自由が丘といえば、ファッションや雑貨、スイーツ、カフェなどの店舗が立ち並ぶ、女性やカップルに人気の街である。街の知名度は非常に高い。だが昨今は近隣で大規模な再開発が幾つも進み、特に子育て世代は同じ東急沿線では二子玉川や武蔵小杉などに流れる傾向が強まっていた。

 再開発では施設の低層部に店舗を誘致し、ショッピング街や飲食街として再生を図る。さらに高層部には約170戸の賃貸住宅を配置する。階下に数多くの店舗が集まり、自由が丘駅が目の前というロケーションで暮らすこともできる。

 鹿島開発事業本部再開発コーディネート部の小島将担当部長は、「最近の再開発プロジェクトでは、大きな広場を設けるのが主流になっている。しかし、この事業は駅前広場に面するので、自前の広場は最小限に抑える。代わりに店舗を充実させて、買い物客で駅前が商業的なにぎわいを維持できる方向性を模索した」と明かす。駅前広場では以前から、地元のお祭りやイベントが開催されている。

施設の北側外観イメージ(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
施設の北側外観イメージ(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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道の狭さを再開発で解消

 自由が丘の街は建物の老朽化だけでなく、道幅の狭さという長年の課題を抱えてきた。バスは狭い道路を通って、バスターミナルにもなっている駅前広場に乗り入れている。バスが来ると道幅の大部分が塞がれてしまい、歩行者にとっては危険な場所がある。ベビーカーを使う家族連れなどが自由が丘を離れていく一因にもなっている。一方通行の道路も多い。街を南北に分断する踏切もある。

 事業者は地元自治体の目黒区と連携し、今回の再開発を皮切りに道路の拡幅や車歩分離を進める。完成までの道のりは長いが、自由が丘駅周辺の再開発は今後、隣接する街区に広がっていきそうだ。

 自由が丘1丁目29番地区第1種市街地再開発事業の特徴は、施設内の1階に南北と東西に抜ける「貫通通路」を設けることだ。また、1階を周辺道路からセットバックし、敷地の周囲に歩行者通路や店舗軒先のにぎわい環境空間を整備する。

施設1階に南北の「貫通通路」を設ける(緑の矢印)。図にはないが東西の貫通通路も整備する予定だ。敷地の周囲には歩行者通路や店舗軒先のにぎわい環境空間を整える(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
施設1階に南北の「貫通通路」を設ける(緑の矢印)。図にはないが東西の貫通通路も整備する予定だ。敷地の周囲には歩行者通路や店舗軒先のにぎわい環境空間を整える(出所:自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合、ヒューリック、鹿島)
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 敷地の北側と西側にある道路は将来的に、拡幅される計画になっている。この事業では北側道路の拡幅に備えた開発をする。周辺道路の無電柱化も先行して実施し、少しでも歩きやすくすることで歩行者の利便性や安全性を高める。

周辺道路の拡幅や歩行者通路の整備を同時に進める(出所:目黒区)
周辺道路の拡幅や歩行者通路の整備を同時に進める(出所:目黒区)
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 駅前はトラックの乗り入れも不便で、路上駐車すると道幅を一層狭めることになっていた。そこで施設北側の地下に、地域共同の「荷さばき場」を設けて地元に貢献する。

 道幅が狭く、駐車場も限られるため、自由が丘は車でのアクセスには不向きだった。そこで、施設の地下には賃貸住宅の入居者だけでなく、一般の人も利用できる約150台分の駐車場を設けることにしている。

 自由が丘は入り組んだ細い路地に小さな店舗が隠れ家のように立つ街というイメージが強かった。駅沿いの北側には老舗の「自由が丘デパート」が入る細長い建物がある。デパートには小さな店舗がひしめき合うように並ぶ。今回の街区とは東側の道路を挟んで隣り合わせであり、新旧の対比が鮮明になるだろう。

 23年10月には今回の街区の西方向、自由が丘2丁目にイオンモールが運営する商業施設「JIYUGAOKA de aone」が開業した。大手資本が入り、街に変化の兆しが見え始めている。

24年2月1日に目黒区が公開した24年度の予算案資料。踏切による街の分断を解消するため、道路と線路の立体化の調査・検討を始める(出所:目黒区)
24年2月1日に目黒区が公開した24年度の予算案資料。踏切による街の分断を解消するため、道路と線路の立体化の調査・検討を始める(出所:目黒区)
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日経クロステック 2024年2月7日付の記事を転載・一部変更]

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2030年までに東京の景色が大きく変わります。都内の主要な街に次々と大型施設が誕生、新しい街まで生まれようとしています。日経BPの専門記者が総力をあげて取材した東京の未来を大公開します。

日経クロステック、日経アーキテクチュア、日経コンストラクション(編)、日経BP、3520円(税込み)