【給料】は組織への依存状態を作り出す人類最大の発明で、【残業代】は仕事の効率や質が悪い人ほど多くもらえるもの!? ふつうのビジネス書が絶対に教えない「日本企業」の現実を皮肉たっぷりに解説します。今回は組織で働く人にとって生活の糧である、給料にまつわる用語を5つ。多くの企業・職場を観察してきた岡本努氏が『 禁断の会社用語辞典 組織・人事コンサルタントが教える企業の現実 』(日経BP)から抜粋・再構成して解説します。

【給料】

本来の意味
  • 従業員が提供した労働の対価として、会社が定期的(通常は毎月)に支払うお金のこと
現実
  • 会社への忠誠心の強さを数字で表したもの
  • 会社が意図するように振る舞うともらえる
  • 組織への依存状態を作り出す、人類最大の発明
  • 増えると嬉しいが、依存度は増す
  • 圧倒的に高い給料は、すべての不満を見事に消し去る

【賃上げ】

本来の意味
  • 社員に支給する賃金(主には月給)を引き上げること
  • 一時的・臨時的ではなく、仕組みとして引き上げる
現実
  • やってもやっても終わりがない
  • 社員の不満を逆に高めてしまうことも
  • 1年も経てば、もはや誰も喜んでいない
  • 退職者を増やす恐れのある施策であることを誰も知らない
(イラスト=川崎タカオ)
(イラスト=川崎タカオ)

《解説》

 日本企業の賃上げの動きは当面続いていくだろう。賃上げは、一般的には従業員に喜ばれる施策に違いない。しかし、賃上げを実施した企業で、不平・不満を募らせる社員が続出している。会社は賃上げに何億円も投じて実施する。その結果、上がってきた従業員の声は……

「うちの会社の賃上げ率は、なぜこんなに低いんだ? 物価のほうが上がってる!」
「競合の〇〇社はもっと上がっている、転職しようかなあ」
「なぜ自分はこれしか上がらないんだ? ほかの人はもっと上がっている」
「自分は苦労して、今の水準。若いやつが、何の努力もせずに給料が上がるのは許せない」

 など、文句が止まらない。

 賃上げを成功させるには、自社の給与水準を全体としてどう引き上げるべきかをきちんと考えることが強く求められる。デフレ下にあった日本企業では、過去30年ほど、この意思決定から遠ざかっていた。これからはそうはいかない。

 現在の100万円は、5年後には、確実に実質価値が目減りする。そこを見誤ると、自社には人が集まらなくなるし、優秀な人から抜けていくことになるだろう。

 さらに企業は、従業員の金融資産を守るための金融教育までも施す必要がある。たいした賃上げもせず、多くの社員が銀行預金だけをしているような企業は、早晩、滅びかねない。

【賞与】

本来の意味
  • 一定の期間の会社業績や個人業績(人事評価など)に基づいて、月給とは別に特定のタイミング(夏と冬の年2回が多い)で支払われる報酬
現実
  • 金額をまとめることで、多額の支給をしている感を出すための演出
  • 会社側の最後のコストコントロール手段でもあり、結局は会社が自由にできてしまう
  • たまにカットして、会社のほうが偉いことをわからせるしつけの道具
  • 人事評価調整に異常な工数、時間がかかる最大の原因

【能力給】

本来の意味
  • 従業員の能力水準に応じて決定される給与項目
現実
  • 単なる年齢給の読み替え
  • 上司の感情や印象の言い換え
(イラスト=川崎タカオ)
(イラスト=川崎タカオ)

《解説》

 能力給の決定根拠とされるものに、能力レベルというものがある。ただし能力の定義内容は抽象的で、ほとんどの人に正しく理解されていない。そのため当然、管理職間でも共通理解はない。

 それでも年度末には、次年度の月給(能力給)の増減額を決めないといけないので、そのときだけ、おもむろに保有能力が根拠として使われる(各人が持つ能力レベルの差に基づいているという説明をする)。
 しかし根拠となっている保有能力については説明できる人はいないので、

「〇〇さんは、がんばっているねー」
「今期は本当によくやったよね。月給(この会社での能力給)を上げてやろう」

 と、能力とは関係ない説明・会話がなされる。

 一部、気の利いた会社は、「保有能力ではなく、発揮能力に基づいて評価を決めている」との説明を試みるが、そもそも能力の定義内容が抽象的で説明不能なので、結果の説明もまったくロジカルではない。

 このように、とても設定や運用が難しいのが能力給である。今後、給与を決定する項目を検討する機会があるなら、役割やスキル、成果や成果行動など、せめてもう少し説明しやすい項目を検討してもよいかもしれない。

【役職手当】

本来の意味
  • 部長や課長などの、組織におけるポジションに就く人に対して、仕事の重要度や責任の重さ、負荷などを根拠として、基本給とは別に毎月支給する手当
現実
  • 役職者に少しの自尊心を与える気休め
  • ただし、(特にストレスやプレッシャーなどの)苦労には見合わない金額
  • 一般社員に、役職者にならないほうがマシと思わせるための仕掛け
  • 部長一律、課長一律なので、仕事が楽な部署はお得
  • 残業代のほうが高かった……
基本知識から最新ワードまで、「日本企業」で働く人が知っておきたい約200語を本来の意味と現実の両面から、豊富なイラストとともに解説。学べて、笑えて、そして怖くなる。ふつうのビジネス書が絶対に教えてくれない会社の「本当の仕組み」がわかる本です。

岡本努 著/日経BP/1980円(税込み)