自分らしいリーダーシップとは、最終的には関わるすべての人の幸せを考えること。「そんな大きな目標なんかないよ」という人でも、やりたいこと、できることを整理しておくと、自分が楽しいと感じるものにより集中できます。『16歳からのリーダーシップ』(一條和生・細田高広著)の抜粋・再構成から、リーダーとして実践するための具体的なステップを紹介します。

すべての人の幸せを考えるリーダーシップ

 自分らしいリーダーシップとは、自分の内側から始まり、権力に頼らず様々な影響力を総動員し、最終的には関わるすべての人の幸せを考えることです。では具体的に、どのように行動すればいいのでしょう。リーダーシップを実践するための参考になる枠組みを、組織論やリーダーシップ論の知見をもとに提示しておきます。もちろん、唯一絶対の方法論はありません。ここで伝えるステップを、自分らしさを発揮しながら周囲を導くための「補助線」として活用してください。

ステップ1 達成したくてたまらない目標を決める

 最初に問うべきは、あなたが目指したいと思える目標です。成し遂げたいことをノートに書き出してみましょう。ひとつに決め込まず、最初は10個、20個と数を書いてみるといいでしょう。たくさん書いているうちに、自分が本当にやりたいことが見えてくるものです。ひとつ「これだ!」とあなたが思える目標が見つかったら、それをより良い目標に磨き上げていきます。

 良い目標設定のガイドとしてSMARTという考え方があります。具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-Bound)の5つからなり、それぞれの頭文字をとってSMARTと呼ばれています。順番に見ていきましょう。

<具体的(Specific)>
目標は具体的で明確である必要があります。曖昧な目標は成果を測りにくく、行動計画を立てるのが難しくなるからです。例えば、「体を鍛える」よりも、「週3回、1時間ずつ筋力トレーニングをする」とした方が行動につながりますね。

<測定可能(Measurable)>
目標の達成状況を客観的に測ることができるように、数値や具体的な成果を設定することも大切です。例えば野球部なら「勝利を増やす」よりも、「出塁率を20%増加させる」の方が、計測しやすいのが分かります。

「勝利を増やす」よりも、「出塁率を20%増加させる」の方がよい目標(写真:s_fukumura/stock.adobe.com)
「勝利を増やす」よりも、「出塁率を20%増加させる」の方がよい目標(写真:s_fukumura/stock.adobe.com)
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<達成可能(Achievable)>
目標というからには、すぐに達成できる簡単なものではいけません。背伸びして手が届くくらいの、ほどよい難易度を設定するといいでしょう。どんなに頑張っても、達成不可能な目標は、むしろモチベーションを低下させてしまいます。 例えば「1ヶ月で英語をマスターする」という目標は、英語を母国語としないノンネーティブには非現実的ですが、「半年で日常英会話をマスターする」という目標は、野心的とはいえ不可能ではありません。

<関連性(Relevant)>
目標は、あなたの目的や、あなたらしい価値観に一致している必要があります。例えばあなたが、文化祭の実行委員長だとします。そしてあなたはできる限り効率よく物事を進めるということを大切にしているとします。その場合、「生徒全員の努力を結集して、なんとしても文化祭の来場者数1位を目指す」といった目標は、あなたの価値観と矛盾するかもしれません。
しかし、「勉強や部活と両立しながら、来場者数1位を目指す」とするならば、あなたらしい目標になるのではないでしょうか。前者は数という結果を追求する一方、後者は効率性を目指しているからです。

<期限(Time-bound)>
目標を達成するための明確な期限を設定します。期限があることで、行動を計画的に進めることができます。「いつか本を書く」という目標は永遠に果たされませんが、「来年の12月までに第1稿を完成させる」という目標は、締め切りが明確な分、拘束力を持つことになります。

自分らしい目標を、みんなと見たい景色へ。

 最初はごく個人的な目標でも構いません。けれど人を巻き込む時には、仲間と一緒に見られる未来の景色が必要になります。それを「ビジョン」と呼ぶことがあります。要は、関わる人が目指したいと思える目的地の映像です。自分が行きたい場所を、みんなと目指したい場所にする。これができたらリーダーとしての第一歩は十分です。

「自分らしさアクションマップ」をヒントに

ステップ2 リーダーとしての軸を決める

 目標が決まったら、次に進め方を考えることになります。この時に大切にすべきは「自分らしい判断軸」です。何をすることで達成感や高揚感を得られるのか。どのような課題の解決に使命感を感じるのか。

 もっと平たく言うならば、何をすることでいちばん自分が楽しめるのか、を特定しましょう。同時に、その反対を考えることもお勧めします。何をしたくないのか、何をすることが使命感に反すると考えられるのか。「しない」ことを決めておくのも自分らしさに素直になるコツなのです。

(図)自分らしさアクションマップ
(図)自分らしさアクションマップ
(出所)『16歳からのリーダーシップ』(一條和生・細田高広著)
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 まだ難しく感じられる場合は、上の図の「自分らしさアクションアップ」をヒントに考えることから始めて下さい。リーダーにはたくさんのやるべきことがあります。それらにすべて同じ重要度で向き合っていては時間が足りませんし、体力も持ちません。そこで「やりたい」と「やりたくない」を横軸に、「できる」と「できない」を縦軸にとり、優先順位をつけていくのです。

①できる×やりたい
自らができることで、かつ、やりたいこと。この領域はあなたがお手本を見せるべき領域です。背中を見せ、お手本を示すことでチームをリードできるでしょう。ただし、あまりにひとりでやりすぎることや、自分だけ楽しい側面を独占するように見えることには気をつけましょう。

②できない×やりたい
できないけれど、やりたい。この領域はあなたが素直に弱みを認めて、得意な仲間に助けてもらうべき領域です。弱点をきちんと見せて仲間と助け合う。その行動をリーダーは率先して行う必要があります。 例えば、英語は話せないけれど海外の学生との国際交流イベントを開催したいと考えたとしましょう。あなたの意思をかなえるためには、まず、英語が上手な誰かを味方につけ、リーダーに並走してもらうのが自然です。大切なのは「できない」からとリーダーに向いてないと考えないことです。やりたいという意思を持つ人が前に出る。できないことができる人は、探せば必ず見つかります。そして、時間をかけて「できない」ことを「できる」ようにしていけばいいのです。

仕組みをつくったり、手放したりすることもリーダーの役割

③できる×やりたくない
できるけどやりたくない。この領域はあなたが仕組みをつくって解決するべき領域です。例えばあなたがバスケットボール部のキャプテンで、1年生への指導を考えるとしましょう。教えるのは得意で「できる」ことだけど、今は勝利のために自らの練習がいちばんやりたいことで、教育は「やりたくない」ことだとします。 その場合、例えばまずあなたがポジションごとに練習メニューを考案し、それを上級生と下級生が一緒に取り組むといった仕組みをつくります。すると、あなたの練習時間も確保しながら、下級生への有効な指導も可能になります。

④できない×やりたくない
あなたが手も足も出ず、かつ、自分がやるべきだとも思えないとき。そのときは自らが完璧ではないことを認め前向きに「手放す」ことを検討しましょう。具体的には前の2つの解決策を組み合わせ、「得意な人に任せて、仕組みをつくってもらう」のです。

 先ほどの事例で、英語が得意でない人が、やりたいとも思っていないのに国際交流イベントのリーダーを任された場合を想定しましょう。どうしても断れない場合は、例えば、英語が得意な人を見つけ、イベントの実質的な責任者を依頼します。そしてあなたは徹底的に支援に回るのです。その中でやりたいことや、できることが見つかるでしょう。

 ホテルの支配人が料理を料理長に任せるように。プロスポーツ球団の経営者が、チームの運営を監督に任せるように、自分がやりたい範囲、できる範囲を定めて役割分担するのは決して悪いことではありません。

苦手なことは、「それが得意な仲間に頼る」という判断も大切(写真:wheeljack/stock.adobe.com)
苦手なことは、「それが得意な仲間に頼る」という判断も大切(写真:wheeljack/stock.adobe.com)
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社会を見渡して変えたいと思うことはありますか? 現代のリーダーは、上に立つより前に立つ人。それぞれが、自分のやりたい目標を見つけ、仲間を巻き込み、実現に向けて行動し、かなえていく。誰もが持てるそんなリーダーシップにこそ、世界を変える力があります。

一條和生・細田高広著/日本経済新聞出版/1760円(税込)