家計簿アプリやクラウド会計ソフトを中心に事業を展開し、急成長を続けているマネーフォワード。創業者の辻庸介さんは読書家で、同社のリーダー研修で自ら選んだ本をすすめています。同社の人材育成・研修の責任者を務める竹内富貴・Talent Growth部部長に、本を活用した人材育成の取り組みを3回にわたって聞く連載、第2回。

第1回 「マネーフォワード 本からの学びを最大限に生かす人材育成法」

リーダーが押さえたいポイントを網羅

 研修に本をフル活用している当社の施策の中でも、特に力を入れているのが「Leadership Forward Program(LFP)」という5カ月間におよぶリーダー研修です。

 マネジメント初心者やマネジャー候補者を対象とした「Basics」と、ある程度マネジメント経験を積んだメンバーが対象の「Advanced」の2段階で実施していますが、いずれにおいてもCEO(最高経営責任者)の辻庸介自らが選書したタイトルを全部で8冊程度、「期間中にできるだけ読んでくださいね」という呼びかけでおすすめしています。

 選書のラインアップは毎年入れ替わりがありますが、毎回必ず入ってくる2冊があり、うち1冊は『 HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント 』(アンドリュー・S・グローブ著/小林薫訳/日経BP)です。

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント』(アンドリュー・S・グローブ著)
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント』(アンドリュー・S・グローブ著)
画像のクリックで拡大表示

 元インテルCEOがマネジメントの要諦をまとめた本で、当社のリーダーとして押さえてほしいポイントが網羅されています。辻も大のお気に入りの本で、LFPのみならず、経営合宿や連載第3回で説明する本部長向けの「読書セッション」のプログラムでも推薦されている“必読本”になっています。

 組織の成長スピードを上げるために不可欠なマネジャーの役割について、「自分の組織のアウトプット、そして自組織と隣接する組織のアウトプットを高めることである」と位置づけて、アウトプットを高めるための思考と行動を具体的に解き明かしています。

 「マネジャーはテコ作用の大きい活動を特定し、自身の時間を使うべきだ」「アウトプットの向上を測るのに最適な指標を定義せよ」といった、ハッとする指摘や提言に満ちていて、一読するだけで視界が開けるようなビジネス書です。

 また、本のタイトルを目にするだけで、マネジャーとして目指すべき方向性がつかめるという点で、“社内の共通言語”としてスローガン的な効果もあるなと感じます。

「当社のリーダーとして押さえてほしいポイントが網羅されています」と話す竹内さん
「当社のリーダーとして押さえてほしいポイントが網羅されています」と話す竹内さん
画像のクリックで拡大表示
竹内富貴(たけうち・ふき)
マネーフォワード People Forward本部 副本部長、Talent Growth部部長
新卒で人材紹介会社へ入社し、キャリアコンサルタントとしてキャリア支援に携わる。その後、IT企業や食品メーカーで人事として採用や人事制度改定、組織開発などを経験し、2021年マネーフォワードに入社。組織と人の成長を支援するために、人材育成施策の企画・運営や人事制度改定、組織開発など多岐にわたるプロジェクトに携わる。2023年6月より現職。

本から学び続ける習慣を身に付ける

 LFPで定番となっているもう1冊の参考図書が、ユニクロを創業した柳井正さんによるロングセラー、『 経営者になるためのノート 』(PHP研究所)。

『経営者になるためのノート』(柳井正著)
『経営者になるためのノート』(柳井正著)
画像のクリックで拡大表示

 経営者に必要な4つの力として、「変革する力」「儲(もう)ける力」「チームを作る力」「理想を追求する力」を挙げ、それぞれの解説がされている本ですが、最大のポイントは「書き込み式」の仕様によってセルフワークができる点です。

 読んで終わりではなく、実際に自分の仕事にどう生かしていくかという動線まで用意されているので、非常に実践的な行動に結び付く本だと思います。

 ほかにも、以下のような本が選ばれています。

 このように、LFPで紹介される参考図書は、新旧のビジネス書の名著ばかりです。

 このすべてを短期間に読み切ることは難しいかもしれませんが、要は本を手に取り、学ぶ習慣を身に付けることがポイントなのです。辻もことあるごとに、「リーダーは本から学び続ける習慣を持ってほしい」と強調して伝えています。

 社会人になると、「勉強しなさい」「本を読みなさい」と強制される機会がほとんどなくなるので、自ら学び続けるクセをつけることがリーダーとしては必須の素養であり、それが組織の成長にも不可欠だと考えているようです。

 トップに立つ辻が自身の言葉で考えを伝える機会もありますが、それだけでは伝えきれない思いや日々の実践法について、組織の隅々まで行きわたらせるメッセンジャー。そんな力が、「本」にはあると確信しています。

取材・文/宮本恵理子 写真/品田裕美

シリコンバレーのトップ経営者、マネジャーに読み継がれる不朽の名著、待望の復刊!

インテル元CEOのアンディ・グローブが、後進の起業家、経営者、マネジャーに向けて、一字一句書き下ろした傑作。『HARD THINGS』著者のベン・ホロウィッツ、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグなど、シリコンバレーの経営者や幹部たちに読み継がれ、大きな影響を与えてきた1冊。

アンドリュー・S・グローブ著/小林薫訳/ベン・ホロウィッツ序文/日経BP/1980円(税込み)