富士通グループが社内で行っていた読書会は、他の企業を巻き込んだ「あすよみDX」という活動に発展しています。「リードフォーアクション」という、本を読んでいなくても参加できる手法を使ったあすよみDXの読書会の内容やメリットについて、富士通 デザインセンターの加藤正義さんと同社デジタルシステムプラットフォーム本部の久我聡子さんに聞きました。

6社の社員が参加する読書会

加藤正義さん(以下、加藤) 私はこれまでに社内外でさまざまな読書会を開催してきました。富士通では経営コンサルタントで作家の神田昌典さんが提唱した「リードフォーアクション」という手法(前回「 富士通 『読まずに参加OK』の読書会で企業変革に挑む 」)を使った読書会をしていました。リードフォーアクションは、本を読んでいなくても参加できるので、忙しいビジネスパーソンが参加しやすいやり方です。

 コロナ禍でオンライン会議が当たり前になり、「今ならオンラインで企業をつなげるのでは」と思い、これまで自社社員だけで開催していた読書会を発展させ、他社も参加可能な「あすよみDX」という活動をスタートしました。コロナ禍で休止していた「あすよみ」の進化版です。あすよみDXには、本を通じて、普段は出会わない企業のビジネスパーソンが一緒に学んだり交流したりすることで、各社のDX(デジタルトランスフォーメーション)などの変革に貢献するという目的もあります。

 2022年3月に行われたあすよみDXのトライアルには、富士通グループをはじめ、エプソン販売、村田製作所、リコーなど6社から約30人が参加しました。このときに取り上げたのは『 模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書 』(佐宗邦威著/PHP研究所)です。

あすよみDXを立ち上げた加藤さん
あすよみDXを立ち上げた加藤さん
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 選書については、あすよみDXの運営メンバーが、それぞれの企業でニーズがありそうなテーマを出し合ったり、お勧めの本を提案し合ったりして決めています。『模倣と創造』は「アイデアを考えるときは、面白いを企(たくら)む。探すのではなく、『企む』という視点が印象に残った」といった感想を聞くことができ、よかったですね。

 参加人数は約30人ほどでしたが、もっと増やすことは可能です。ただ、会社が違うと「就業時間内の参加は難しい」「そのオンラインツールは制限があり使えない」といった問題が発生して難しい部分もあります。また、対面ならば読書会の後に名刺交換したり、そのまま飲みに行ったりということができますが、オンラインで2時間の読書会+交流会はかなりの長丁場。忙しい、ずっと座っているのがつらい、と交流会まで残ってくれる人が少なくなりがちです。せっかく集まってくれた人同士をどうつなげるかが今後の課題ですね。

本を通じてお互いの違いを知る

加藤 あすよみDXでは、リードフォーアクションの提唱者である神田昌典さんを招いての読書会も2022年7月に開催しました。神田さんの新刊『 未来実現マーケティング 人生と社会の変革を加速する35の技術 』(PHPビジネス新書)をみんなで読み、最後は神田さんへのQ&A。普段のあすよみDXは2時間ですが、この日は1時間だったので、参加者からは「時間がもっと欲しかった」と残念がる声が上がる一方、「いつもより集中できた」「みなさんの考え方や価値観の違いが分かって面白かった」という感想がありました。

リードフォーアクションを提唱した神田昌典さんが執筆した『未来実現マーケティング』
リードフォーアクションを提唱した神田昌典さんが執筆した『未来実現マーケティング』
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久我聡子さん 他社の価値観、考え方の違いが分かるのは面白いですね。あすよみDXの違う回で「パーパス経営」について取り上げたとき、「実はパーパス経営について、今初めて理解しました」と打ち明けてくれた人もいました。

 神田さんがいらしてくれた回は、ある章について自分が感じたことと、神田さんご本人が話されていることが違っていたので「あれっ?」と思って。その週末に「神田さんがおっしゃっていたのは、どういうことなんだろう」と知りたくなり、一気に『未来実現マーケティング』を読み切りました。

「他社の価値観、考え方の違いが分かるのは面白い」と言う久我さん
「他社の価値観、考え方の違いが分かるのは面白い」と言う久我さん
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 あすよみDXの読書会では、課題本が1冊のときも、参加者が気になった本を選んで持ち寄るときもあります。Zoomのブレイクアウトルームでグループに分かれると、みなさんの持っている本が違うので、例えば4人なら4冊分の本を読んだ体感が得られます。その本から相手が組織内で抱えている悩みを知ることができるし、その悩みを通じてお互いに分かり合えます。読書会には人と人をつなげる働きもあるんですよね。

 今まで本の読み方というと、「最初から最後まで通して読む」という読み方しか知らなかったので、リードフォーアクションの「本を読む前に問いを立てる」「問いの答えとなる部分を本から探す」「実際の行動につなげる」という方法に出合えてよかったと思います。

本はイノベーションへの投資

加藤 そういう意味では、「新しい本の読み方を知りました」という感想を書いてくれる方も一定数いますね。

 本は、書籍代という経費と考えると「もったいない」と感じるかもしれませんが、DXやイノベーションへの投資だと考えたら、めちゃくちゃ安いと思います。企業の中であすよみDXのような読書会を開き、例えば100人いる組織の20人でも30人でもいいから新しい知識を学び、それを組織の共通言語にしながら行動することを繰り返せば、必ず会社は変わっていくと思います。

書籍代は「DXやイノベーションへの投資費用だと考えたら、めちゃくちゃ安い」と話す加藤さん(左)と久我さん
書籍代は「DXやイノベーションへの投資費用だと考えたら、めちゃくちゃ安い」と話す加藤さん(左)と久我さん
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取材・文/三浦香代子 撮影/小野さやか