今の子どもたちが社会人になった時にはAIが今より普及し、多くの仕事をAIが代替するようになっているはずです。それを見据え、大人たちは子どもに何を教えるべきでしょうか。書籍『 わが子に教える AI時代に必要な7つの能力 』(日経BP)では、学校では教わらないけれども、親が子どもに教えるべき未来の能力を7つ挙げました。本特集では、7つの能力のうち1つ目に挙げた「ファクト眼」について解説します。今回は「ファクト眼」を養う前提となる「クリティカル・シンキング」について考えてみます。

3つの疑問を持たせる

 それでは家庭教育でクリティカル・シンキングをどうやって教えればいいのでしょうか?

 実は、とってもシンプルです。

 それは、「情報」に対して常に次の3つの疑問を持つ習慣を身に付けさせるんです。その疑問とは、「誰が作った?(who)」「何のために?(why)」そして「なぜこんな伝え方をしている?(how)」というものです。

 この3つの疑問を持たせることこそが、クリティカル・シンキングを身に付けさせる秘訣なんです。その理由は次の通りです。

 まずは「誰が作った?(who)」と疑問を持つことで、フェイクニュースの狙いである、誰が作った(発信した)のかを考えさせないようにして、主要メディアや権威ある機関が作った(発信した)と錯覚させようとする、ことを見破れる可能性が高まります。

 「何のために?(why)」と疑問を持つことで、フェイクニュースの狙いである、①政治的・宗教的な思想を広めたい、②拡散させて有名になりたい(アクセスを集めて稼ぎたい)、③詐欺でだまして稼ぎたい、などを見破れる可能性が高まります。

 「なぜこんな言い方(伝え方)をしている?(how)」と疑問を持つことで、フェイクニュースの狙いである、「今すぐ!」「絶対に知らないと!」「あなただけに教える!」「世間では常識!」などの言い方で人の思考を停止させて、偽の情報を信じ込ませたり焦燥感をあおったりしたい、という思惑を見破れる可能性が高まります。

 ですから、まずは親御さん自らが、ニュースを見聞きしたりネット上の情報に触れたりするときには、常にこの3つの疑問を持つようにしてください。

 特に、近年流行している切り抜き動画などを、子どもが前後の文脈をチェックせずにうのみにしているような場合は、この3つの疑問を持たせてみてください。もちろん親御さん自身も。

(写真:melita/stock.adobe.com)
(写真:melita/stock.adobe.com)

 それではちょっと練習のためにフェイクニュースを作ってみましたので、さっきの3つの質問を自問自答しながら、以下のニュースがフェイクであることをどうやって見破るか考えてみてください。

 日本では労働力不足が深刻化しているため、このたび国会は2027年4月から、16歳以上の高校生および大学生・短大生は最低でも週に5時間以上のアルバイトをすることを義務化する法案を成立させました。ただし家庭内の特別な理由がある場合はこの義務が免除される場合があります。免除を申請する場合は今すぐ内閣府が用意したこちらの申請フォーム(ここに申請先のリンク)から免除理由を送信してください。ただし申請期間は2026年4月30日までとなっており、各都道府県で先着5000世帯のみとなりますので、できるだけお早めに申請してください。

 さて、クリティカル・シンキングをしてみましょう。

 誰が作った?(who)→こんな重要な法案なんだから、政府や総理、与党の公式ホームページやSNSで言及されているはずだ。

 何のために?(why)→個人情報や年収、生活の悩みの情報を抜き取って、その悩みにつけこみ詐欺をしようとしているのではないか。

 なんでこんな言い方(伝え方)をしている?(how)→今すぐ、となんでせかすのか。先着順で数を絞る必要があるのか。各都道府県で5000世帯といっても、東京都は、一番人口が少ない鳥取県の25倍だよ。ひとくくりにするのはおかしくないか。

 どうですか? 疑問がいっぱい浮かぶはずです。

 普段からこのようにクリティカル(批判的)に情報を読み解くのが当たり前になる訓練をしましょう。

 それから日常会話の中でも、それが事実なのか意見なのか区別する習慣を身に付けさせましょう。

 例えば「今日の給食はどうだった?」とお子さんに質問してみてください。「今日はカレーライスだったよ。学校給食の中で一番おいしいんだよね」と答えたら、「カレーライスだったのは事実かな、意見かな?」「一番おいしいというのは事実かな、意見かな?」と問いかけます。そして、事実は誰が言っても同じになるよね、意見は人によって違うよね、と教えてあげてください。

 このように、日常の会話からもクリティカル・シンキングを身に付けさせることはできますから、メディアの報道に接したときにも、ニュースキャスターやコメンテーターが話しているのは事実なのか意見なのか、切り分けて考える習慣を持てるようになるでしょう。あるいはユーチューブやSNSの切り抜き動画を見ても、「切り抜かれたせいで、本来の意図が変わっていないだろうか?」と疑問を持っているか確認してあげましょう。

批判するなら対案や解決策までセットで

 クリティカル・シンキングを実践するに当たって大事なポイントがあるんです。それは、クリティカルな思考(批判)だけで終わってはいけない、ということですね。

 例えば、僕のユーチューブで、「カリフォルニアと上海で自動運転タクシーやテスラの自動運転に乗って感じたけど、あまりにスムーズなので自動運転社会はいずれ到来すると思う。日本の自動車メーカーは自動運転で出遅れているけど頑張らないといけないと感じた」としゃべったら、ひたすら批判だけするコメントが散見されます。

 「日本車をバカにするな!」

 「一生アメリカに住んでろ! 日本に帰ってくるな!」

 「事故が起きたらお前が責任を取るのか!」

 などですね。

 じゃあどうすればいいのか?という対案がなくひたすら批判だけするパターンがほとんどです。

 しかし中には、「一番左を自動運転レーンにしていいから、人間の手動運転も残してほしい! オートマではなくマニュアル車を使うぐらい運転が楽しみな自分にとっては絶対自動運転なんか使いたくない」というように「対案」を織り交ぜてコメントする人もいます。

 ちなみに、対案を入れる人ほど言葉遣いも丁寧で、逆に、批判だけで終わる人ほど「ため口」の乱暴な言葉遣いの人の割合が多いことも付け加えておきます(笑)。

 皆さんも心当たりありませんか?

 ママ友のランチ会で、

 「●●先生って、■■がダメなのよね……」

 仕事のあとの飲み会で、

 「上司の●●さんは、■■でムカつくよね……」

 じゃあその先生や上司は、どうであればいいのか? またそうなるために今自分たちは前向きに何をすべきなのか?

 こうやって批判するなら対案や解決策までセットで話す癖をつけましょう。ですから、親御さんもお子さんの前で何かを批判したときには、それならどうすべきなのか?も含めて、必ずセットで語れるようにしてほしいんです。

(書籍『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』を基に再構成)

日経クロステック 2026年5月19日付の記事を転載]

AI時代でも価値が劣化しない「人間の力」とは? AIの浸透で、フェイクが増え、技術が答えを教えてくれ、情報も人も個性を失い、分断が進み、先人の知恵が役に立たず、お金を稼ぎにくく、変化が激しい時代がやって来ます。本書はこの現実を直視し、親が家庭で教えるべき7つの能力「ファクト眼」「クエスチョン・デザイン」「スピークアップ」「ソーシャルスキル」「レジリエンス」「マネーユース」「ライフハンドリング」を提示します。

友村晋(著)/日経BP/1980円(税込み)